システム農学
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27 巻, 1 号
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研究論文
  • ABDULLAH Hasan Muhammad, 秋山 侃, 芝山 道郎, 粟屋 善雄
    2011 年 27 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    農耕地の葉面積指数(LAI)は生産力を評価するうえで重要である。本研究では耕作地と耕作放棄地を含む農地での地上のスペクトル測定から得られた正規化植生指数(NDVI)と、サンプリングによって計測したLAIを利用して、簡単なLAI推定モデルを構築した。LAIとNDVIの地上計測値には有意な相関が認められた(R2=0.70,p<0.001)。2007年4月12日、同5月23日のクイックバード(QB)データを用いて農地を分類し、2007年7月8日のQBデータを用いてLAI推定モデルを検証しつつ、LAIの分布を図化した。教師無し分類(ISODATA法)を用いて分類し、水田、トウモロコシ畑、耕作放棄地とビニールハウスの4クラスに意味づけた。オーバーオールの分類精度は94%で、カッパ係数は0.92だった。この分類画像をLAI分布図作成に利用した。7月のQBデータから算出したNDVIにLAI推定モデルを適用して精度を評価したところ、地上調査のLAIとQBデータで推定したLAIの間に一対一の関係が成り立つことを検証できた(R2=0.70)。これを受けて、地上測定に基づくLAI推定モデルをQBのNDVIデータの水田、トウモロコシ畑と耕作放棄地に適用した。LAI分布図では農業生態系のLAIは概ね1~4であることがわかった。LAI分布図からは耕作放棄地は農耕地よりもLAIが高めであることが分かった。得られたLAI分布図は十分な精度で各クラスのLAIの状況を示していた。このように地上スペクトルと地上観測のLAIから得られたLAIの推定モデルがQBデータに適用可能で、農地でのLAIの実態を遠隔測定により図化できることが分かった。
  • 井村 治, 佐々木 寛幸, 時 坤, 森本 信生
    2011 年 27 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    草地が持つ生物多様性保全機能を発揮させ、その生態系サービスを利用する持続的家畜生産の方策を探るため、放牧草地において糞虫(家畜糞を食べ、糞の分解を促進するコガネムシ上科の昆虫)を調査し、周辺の景観を分析することにより、草地の糞虫の多様性をもたらす放牧草地の立地条件を明らかにする研究を実施した。糞虫の調査は栃木県北東部の18 の放牧草地で早川式牛糞トラップを用い、1999 年から2001 年の放牧期間にあたる5 月から10 月まで毎月1 回実施した。第5 回環境省自然環境保全基礎調査の植生データから糞虫の生息に影響を与えると考えられる主要な10 の景観要素(落葉広葉樹、針葉樹、人工林、低木、草本、水田、畑、牧草地、市街地、水域)を抽出した。調査地点ごとに調査地点を中心にした4 km 四方の区域について、各要素のフラクタル次元を粗視化法で算出した。センチコガネ亜科(Geotrupinae)、ダイコクコガネ亜科(Scarabaeinae)およびマグソコガネ亜科(Aphodiinae)に属する25 種49,577 個体の糞虫が捕獲された。森林性のPhelotrupes laevistriatus、Copris acutidens およびOnthophagus nitidus を除くと、草地または草地と森林を生息場所とする種であった。調査地点ごとに見ると記録された種数は7 種から17 種まで異なっており、放牧草地の糞虫の多様性に大きな違いが見られた。糞虫種数を目的変数、また各景観要素のフラクタル次元を説明変数とした変数選択型重回帰分析を行い、係数がプラスの落葉広葉樹と牧草地および係数がマイナスの人工林のフラクタル次元を変数とする予測モデルを得た。予測モデルに基づいて調査地域内の糞虫の多様性地図を作成し、用いた手法と予測結果について議論した。
  • 淺野 悟史, 水野 啓, 小林 愼太郎
    2011 年 27 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、焼畑抑制のための森林政策が、ラオス南部の焼畑農業に与えた影響を明らかにする目的で行われた。筆者らはラオス南部、チャンパサーク県内に対象村を設け、県森林局や村の代表者への聞き取り調査によって対象地域に効力をもつ森林政策を把握した。その結果、政府は土地利用規制という方法で焼畑抑制を行ったのに対し、県行政は換金作物としてチーク林業を推奨し、焼畑跡地への造林と現金収入機会の拡大を目標としていたことが明らかになった。さらに、対象村において世帯ごとの悉皆質問紙調査を実施した。その結果、政府の行った土地利用規制に対する村人の理解度はかなり低く、規制を無視した焼畑農業も継続されていた。一方でチーク林業は受け入れられており、チーク林業の拡大のために焼畑跡地が転用されていた。その結果、焼畑休閑地が消失し、次の焼畑地獲得のためには森林伐採が必要になるなど、森林政策の影響により焼畑農業のシステムが変化していることが明らかになった。
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