システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
34 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
研究論文
  • 増田 隆晴, 築城 幹典
    2018 年 34 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    岩手県内の牧草地において、地表面空間放射線量率を測定し、得られたデータから、95%の信頼区間で平均値±10%の値を得るために必要なデータ数について検討した。7カ所の牧草地において、2011年に地表面空間放射線量率の測定を行った結果、岩手県中部に位置する牧草地1~5は平均値が0.070~0.103 µSv/hと低かったが、県南部に位置する牧草地6および7は、平均値が0.318~0.793 µSv/hと比較的高い値を示した。ブートストラップ法で検討した結果、信頼できる平均値を得るのに必要なデータ数は1.2~4.6個/haとなり、1 ha当たり5地点程度の空間放射線量率の測定を偏りなく行うことで、信頼できる平均値を得られることが示唆された。また、2011~16年の調査結果から、この必要なデータ数は時間の経過とともに減らせることが示唆された。

  • 樽見 恵梨奈, 築城 幹典, 森 昭憲
    2018 年 34 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    わが国の主要な牧草として広く栽培されている寒地型牧草は、比較的冷涼な気候を好み、暑熱環境に弱い。そのため、北海道を除く広範囲で夏枯れが発生している。夏枯れ地帯は温暖化に伴い北上することが予想され、わが国の牧草地の生産性に大きく影響すると考えられる。そこで本研究では、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)について、温暖化により平均気温が上昇した際の生産性および草地更新の効果をモデルを用いて評価した。既往の成果をもとに、オーチャードグラスの窒素施肥量、生育期間平均気温および草地更新後年数と乾物収量との関係をそれぞれ定式化し、牧草乾物収量推定モデルを作成した。モデルを用いて、岩手県における平均気温と気温が3℃上昇した場合の草地更新後の乾物収量を3次メッシュごとに求めた結果、気温が高くなると収量の高い地帯の分布が北上した。また、本モデルを用いて、岩手県における温暖化への適応策を検討した結果、生育期間平均気温が1、2および3℃上昇した場合の現在の収量維持のための草地更新サイクルは、それぞれ9、8および7年になった。また、窒素施肥では、気温が1℃上昇時のみ窒素施肥量を150 kgN/haから180 kgN/haに増加させることで収量を維持できた。

  • 安中 勇大, 大石 風人, 安在 弘樹, 三輪 雅史, 熊谷 元, 家入 誠二, 広岡 博之
    2018 年 34 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    日本国内の肉用牛肥育生産は、畜舎内において輸入濃厚飼料を大量に投入する飼養形態が一般的となっている。しかし、この慣行の肥育生産では、排泄される糞尿の集積が環境汚染を引き起こすことや、極度の輸入濃厚飼料依存により経済変動を受けやすいことなどの問題が指摘されており、代替手段として放牧適正の高い褐毛和種を用いた放牧肥育生産が注目されている。しかしながら、褐毛和種放牧肥育牛に対しては、放牧生産を実施するにあたり重要な情報となる放牧時の行動量やエネルギー消費量(EE)に関する知見は見られない。そこで本研究では、放牧肥育条件下における褐毛和種の行動量およびEEをウシに装着した全地球測位システム(GPS)により定量評価し、さらにそれらに対する肥育期と季節の影響を検討することを目的とした。2015年の夏と秋の2期間、熊本県農業研究センター草地畜産研究所の放牧地において、褐毛和種去勢肥育牛9頭を用いた放牧試験を行った。9頭のウシを各放牧地に3頭ずつ3つの放牧地に分けて放牧し、GPS首輪を用いて位置情報を1分間隔で取得した。取得した位置データと試験地の数値標高モデル(DEM)画像より、各個体の1日あたりの歩行距離、水平移動距離、垂直移動距離、各利用強度における行動圏面積および平均斜度を算出し、佇立時のEEを1とした場合の歩行時のEE(EE比)を算出した。各期間の各個体の試験開始前体重に対し、500 kgを基準として肥育期を前期および後期の2期に区分し、各算出項目に対して肥育期および季節が及ぼす影響を調べるため、最小二乗平均値を推定した。その結果、肥育後期のウシの行動量やEE比が、前期のウシに対して有意に増加したことが認められた(P<0.05)。また、夏に比べ秋ではウシの行動量やEE比が有意に減少したことが認められた(P<0.05)。

feedback
Top