システム農学
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36 巻, 4 号
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技術論文
  • ― グラウンドトゥルースデータの拡張による機械学習の適用 ―
    森下 瑞貴, 石塚 直樹
    2020 年 36 巻 4 号 p. 55-61
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    安定したダイズ栽培のためには、圃場内の土壌物理性や水分状況を空間的にとらえる技術が求められている。圃場内の土壌特性分布を評価するツールとしては、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による低層リモートセンシングが注目されており、近年ではUAV観測画像を基にしたAI(人工知能)技術の活用も期待されている。一方で、未だUAVによる土壌の物理性や水分含量の観測例は少なく、その推定精度も高くないのが現状である。その要因としては、圃場内で取得できる土壌データ数が限られることが挙げられる。そこで本研究では、少ないグラウンドトゥルースデータから高精度でダイズ圃場における水分環境を空間的に予測できる手法の考案を目的として、以下の解析を実施した。①土壌突き刺し型センサによる圃場内64地点の含水率を測定した。また、UAV観測により対象圃場のマルチスペクトル画像、熱赤外画像、DSM(Digital Surface Model)画像を取得した。②土壌含水率センサによる測定データが一定範囲内で均一と仮定して、範囲内に含まれる各画像のピクセル値を含水率測定値に対応させることで、グラウンドトゥルースデータの拡張を行った。③データ拡張により構築したビッグデータを学習用データとして、ランダムフォレスト回帰によりダイズ圃場内の含水率分布を高精度で推定するAI学習モデルの構築を試みた。本研究の結果、一定範囲内の土壌特性が均一と仮定し、UAV画像に対応した情報のデータ拡張を行うことで、機械学習にとって十分なサンプル数を確保し、高い精度(実測値と推定値の決定係数0.955)で含水率の分布を推定することに成功した。特に、 今回のケースでは直径1.0 m~1.5 m範囲(1バッファあたりの標本数にして15~40程度)のバッファを設定することがモデルの精度を得るために効果的だった。また、構築したモデルは熱赤外画像のピクセル値とDSMの標高値を、圃場内の含水率を推定する上で特に重要な特徴量として学習した。

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