The Journal of JASTRO
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1 巻, 4 号
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  • 照射療法の影響を探る
    佐竹 文介, 松浦 鎮, 境野 宏治, 前原 康延
    1989 年 1 巻 4 号 p. 213-217
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    頭頚部がんの終末期臨床において, 時に経験される頚部血管破綻による出血を, 剖検材料より臨床病理組織学的に観察し, 放射線治療が血管破綻に及ぼす影響を検討した.1972年から1985年までの頭頚部がん剖検例は255体であったが, そのうち血管破綻例は25例 (9.8%) であった.原発巣別の血管破綻症例は, 下咽頭がん8/32 (25.0%) と最も高く, 次いで口腔がん8/55 (14%), その他9/165 (5.4%) の順であった.破綻部位は殆ど全例が頚動脈分岐部付近であった.25体の血管破綻出血例から見て, 破綻出血の機序は血管周辺に腫瘍の浸潤が認められ, これが皮膚面に潰瘍を形成し, しかもこの部位に70Gy以上の線量が投与されていて, 動脈壁が放射線血管炎を起こしていることの, 二つの条件が噛み合わさって血管破綻が引き起こされると推測された.終末期における疼痛や姑息的な治療としては, 放射線治療は止むを得ない治療法と思われるが, ペインクリニックや化学療法で済むものならなるべく避けた方が良いと思われた.
  • 放射線治療における三次元画像の有用性
    永田 靖, 西台 武弘, 岡嶋 馨, 野原 弘基, 高橋 正治, 岡田 孝, 中田 学, 矢野 慎輔, 阿部 光幸
    1989 年 1 巻 4 号 p. 219-229
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    新しい三次元放射線治療計画装置 “CTシミュレータ” とは, CTスキャナーと, マルチイメージモニタ, 三次元線量分布計算装置, レーザービーム照射野投光器を統合したシステムである.このシステムを利用すれば, 患者をCT台上にのせたまま, CT撮影から, ターゲット設定, 線量分布確認, 照射野の皮膚面へのマーキングまでが30分以内という短時間で可能となった.また多数のCT断面上での同時治療計画が可能で, スキャノグラム上再構成像, シミュレーション像等の種々の三次元再構成画像が利用可能となった.レーザービーム投光器によって任意の照射野形状も患者体表面上に投光可能となった.CTシミュレータは, CTを利用した最も有用な治療計画装置である.
  • 渡会 二郎, 板垣 孝知, 叶内 哲, 山口 昂一
    1989 年 1 巻 4 号 p. 231-237
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    舌癌は組織内照射によりよく治癒するが, 大きく浸潤性に発育する症例の制御は今日でも困難である.我々はラジウム針による組織内照射にブレオマイシン (ないしペプロマイシン) の併用と進行した16症例には外部照射も併用し, 局所制御率の向上を計った.対象としたのは2年以上経過した42例が中心で, T1が9例, T2が19例, T3が13例, T4が1例であった.全例生検にて扁平上皮癌と診断された.局所再発は10例23.8%に認め, 内8例は初回治療の原発巣中心部に起きた.再発はT1の11%, T2の21%, T3の30.7%に起きた.再発時期は2年以内が60%, 5年以降が20%だった.5例は救済治療で局所は制御され, 最終局所制御率は88%であった.合併症として軟部組織壊死を14例, 骨壊死を4例に認めた.
  • 富田 雅義, 西尾 正道, 加賀美 芳和, 成松 直人
    1989 年 1 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    1974年1月から1987年12月までの14年間に国立札幌病院放射線科に登録された食道癌患者606例中, 72例 (11.9%) に重複癌を認めた.72例中, 三重複5例, 四重複2例を含んでいたため重複部位は81で, 重複の間隔が1年未満の同時性例が41部位 (51%), それ以外の異時性例が40部位 (49%) であったが, 73部位 (90%) は5年以内に出現していた.重複部位としては頭頚部, 胃が多く, 特に舌・口腔, 咽頭は発生期待値と比べて特に高い発生率を示し, 食道癌の経過観察に当たっては充分な検査を行う事が必要であり, また頭頚部癌や胃癌の症例においても食道癌の発生に留意すべきであると考える.
  • 田中 良明, 竹下 祥敬, 丹羽 幸吉, 松田 忠義
    1989 年 1 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    1976年8月より1987年12月までに, 胆道癌症例31例に対して術中照射を行った.術中照射は8-20MeV電子線で18-35Gy (平均24.3Gy) 照射した.このうち15例に対して20-54Gy (平均37.8Gy) の術後外部照射を併用した.手術内容では, 根治的ないし準根治的に腫瘍切除が行われたのは16例であった.全症例の生存期間中央値は6カ月であり, 生存率では1年32%, 2年22%, 3年13%であった.胆管癌と胆嚢癌の1年生存率を比較すると, それぞれ40%と18%であった.術中照射に術後外部照射を組み合わせた群と非施行群の生存期間中央値は, それぞれ10カ月, 2カ月であり, 両者の間には有意差 (p<0.01) がみられた.腫瘍切除後に20~25Gyの術中照射と, 外部照射を40-50Gy追加する方法は, 特に重篤な副作用もなく施行できた.
  • 中西部合同放射線腫瘍学研究会調査
    中島 俊文, 津村 昌, 小野山 靖人, 西岡 雅行
    1989 年 1 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    第3回中西部合同放射線腫瘍学研究会のテーマの1つとして, 肺癌放射線治療の10年間の変化を知る事を目的としたアンケート調査を行った.1977年, 1987年の肺癌放射線治療患者を対象とし, 調査項目は各施設の放射線治療の現状, 放射線治療を行った肺癌患者の病理組織, 治療方式の内訳であった.アンケートは関西, 中部, 北陸地区の共同研究会参加施設に行い36施設から回答を得た.34施設のデータを解析に使用し, その内26施設は1977, 1987年両年のデータを, 8施設は治療開始が1977年より後のため1987年のデータのみを用いた.治療患者数は10年間で631例から1004例に増加し, 1987年の扁平上皮癌, 腺癌, 小細胞癌, 大細胞癌の比率は46%, 26%, 18%, 6%で, 10年間で腺癌の比率がやや増加した.以上の症例の内, 手術併用症例は85例が200例に増加し, 1987年には扁平上皮癌, 腺癌, 小細胞癌, 大細胞癌の頻度は53%, 30%, 7%, 6%であり, その比率には10年間著変を認めなかった.手術との併用方式は1977年では術前, 術後照射がほぼ50%ずつであったのが, 1987年には75%が術後照射と, 術後照射の比重が高くなった.手術非併用症例数は10年間で546例が804例に増加し, 1987年の病理組織別内訳は扁平上皮癌, 腺癌, 小細胞癌, 大細胞癌が44%, 26%, 21%, 7%で, 10年間で腺癌の比率が増加した.手術非併用症例の非小細胞癌に対する治療方式は, 1987年には放射線単独が31%, 化学療法後放射線治療が29%と両者が多く, 後者の比率が10年間で高くなった.一方化学療法と放射線療法の同時併用療法の比率は29%から10%へ減少した.小細胞癌に対する治療方式は, 1987年には化学療法後に放射線療法を施行した症例が65%を占め, 10年前の33%から急増した.又1977年には同時併用療法が30%を占めていたが, 1987年には9%に減少した.
  • 正常脳の加齢現象との比較及び組織変化の定量的検討
    吉井 与志彦, 高野 晋吾, 谷中 清之, 鶴嶋 英夫, 小松 洋治, 能勢 忠男, 相田 真介, 小形 岳三郎, 奥村 敏之, 大原 潔
    1989 年 1 巻 4 号 p. 261-271
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    脳腫瘍の放射線治療 (放治) 後に起きる脳放射線傷害の病態を脳腫瘍24例 (65歳以上の高齢者7例, 65歳未満の非高齢者17例) について検討した.放治は全脳30~45Gy, 局所脳15~30Gyが多く, 脳転移例にはほとんどが全脳30Gy以上照射されていた.対照として非脳腫瘍非脳照射9例 (65歳以上4, 65歳未満5例) を用いた.剖検脳大切片はCTに対応して作成し, 脳白質の各部位を無作為に大脳切片を肉眼的に1~2cm間隔毎に目印をつけ左右大脳半球で計50ヶ所選び, 細小動脈の硝子様変化, 及び血管壊死, 毛細血管の硝子様肥厚, 脱髄の程度をscore化し, 照射線量, 照射時年齢による高齢者, 非高齢者群, 照射後期間との関係について検討した.脳腫瘍脳に対する放射線効果において,(1) 硝子様変化は高齢者, 非高齢者共に800neuret未満の照射部位で, 照射後1年以内に出現した.又, 毛細血管硝子様変化は両者共に800neuret未満の照射部位でも共に非照射群よりも著明に増加していた.(2) 脱髄変化は高齢者では800neuret以上, 非高齢者では800neuret未満の照射部位で, 照射後1年以内に出現した.(3) 血管壊死は高齢者では800neuret未満の照射部位で, 非高齢者では800neuret以上の照射部位で, 照射後1年以上たって出現した.従って, 非高齢者の脳腫瘍脳に対する放射線効果は著しく強く, また低い照射線量の部位でも起こりうることに注目すべきであり, 高齢者の場合には, 低い照射線量の部位でも不可逆的な血管壊死変化を起こしうることに注目すべきである.
  • 早川 和重, 新部 英男
    1989 年 1 巻 4 号 p. 273-283
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    過去10年間に放射線治療の施行された肺癌の脳転移症例73例に対する放射線治療成績を検討し, 放射線治療の有用性について考察した.1) 脳転移に対する放射線単独療法によって, 74%に治療効果がみとめられたが, 臨床症状の改善には40Gy以上の総線量を要した.2) 生存率に影響を及ぼす予後因子は, PS, 年齢, 他部位病巣の制御状態, 総線量, 組織型であった.とくに, 原発巣あるいは他の転移部位の制御された群では, 1年, 2年生存率はそれぞれ, 38%, 9%であった.1年以上生存例の組織型は, 腺癌, 類表皮癌であった.以上から, 脳転移のみの症例では, 年齢, 全身状態などの他の因子を考慮しながら, 積極的に放射線治療を行うべき対象と考えられた.3) 一回3Gy連日照射法は, 照射による障害発生率が高く, 症例に応じて慎重に検討すべき照射法と考えられた.4) 治療効果ならびに結果のスコア化を試みた結果, スコア値は予後とよく相関し, 放射線治療の総合的評価の指標として, 有用性が高いと考えられた.
  • 斎藤 泰雄, 西嶋 博司, 高仲 強
    1989 年 1 巻 4 号 p. 285-293
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/07/11
    ジャーナル フリー
    1979年1月~1987年8月まで, 未治療の肺小細胞癌 (Limited stage) 51例を治療した.男46例, 女5例で, median ageは62歳 (44~81歳) である.この期間, 46例は多剤併用化学療法と胸部照射の併用を行い, 他は放射線治療単独 (4例), 化学療法単独 (1例) でそれぞれ治療した.経過観察期間はmedian 56ヶ月で, 全例効果判定可能であった.27例 (53%) はCRと判定され, 16例 (31%) はPRと評価した.生存期間中央値は15ヶ月, 5年生存率は26%であった.奏効例のうち30例 (73%) が再発し, 奏効期間中央値9ヶ月, 5年非再発生存率は21%であった.局所再発は15例 (37.5%) にみられ, そのうち6例は照射野辺縁の再発であった.照射野内再発は, 40Gy未満の照射例で60%にみられ, 40Gy以上照射例の25%に比し頻度は高かった.化学療法前に存在した腫瘍の範囲を含めて照射すべきであり, 照射野辺縁からの再発を防止するため, 化学療法前にあらかじめ照射野を設定しておく方が良いと考えている.
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