【目的】口腔内衛生管理の急性放射線粘膜炎に対する緩和効果を評価すること.
【症例と方法】本学医学部放射線科にて術後放射線治療を行った舌及び口底癌患者のうち舌および口腔底が照射野に含まれた18人. 放射線治療は1回2Gyの通常分割で50Gy以上照射された. 放射線治療中に歯科放射線科医により衛生管理をされた8人を衛生管理群, 衛生管理をされなかった10人を標準管理群とした. 急性放射線粘膜炎をJCOG gradeとEORTC/RTOG scoreにて10Gyごとに評価した. 休止や中断した患者は以後の評価から除外した. 衛生管理の内容は粘膜炎予防のための口腔清掃の大切さの意識付けと清掃法についての患者教育および口腔内細菌の機械的な除去 (歯磨き) と化学的な除去 (洗口) である.口腔内細菌の除去は1日4回行われた. 洗口剤はポビドンヨード又はアズレンを使用した.衛生管理されている患者の口腔内の衛生状態は週1回, 歯科放射線科医により確認された.
【結果】衛生管理群はすべての時期においてgrade3以上, score4を認めなかった. 衛生管理群は標準管理群よりも各時期でgrade, scoreともに重度の急性放射線粘膜炎が少なかった. 休止は標準管理群の4患者に認め, 理由の大半は口内痛であった.
【考察】衛生管理群の方が急性放射線粘膜炎のgrade, soreともに標準管理群よりも良好な結果となった. そして, 他の緩和法と比べても良い結果となった. それ故に, 口腔清掃が放射線治療中の急性障害である急性放射線粘膜炎の緩和に効果的であることが示唆された. 最後に, 我々の行った緩和法は放射線治療後の晩発障害である唾液分泌障害による多発性カリエスや重度の歯周病予防にも利用できると推測される事を加えたい.
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