経時的に4波長の蛍光顕微鏡像と明視野像を同時撮影し画像を自動取得できる新しい蛍光顕微鏡システムを作成した. 培養装置付き倒立型顕微鏡にHoffman Modulation Contrast装置, 培養システム, 蛍光4波長自動切り替え装置, 明視野/蛍難照明自動切り替えユニット, 3CCDビデオカメラおよびコジピユータ自動画像取得ユニットを組み合わせてシステムを構築した. このシステムを用いた経時的観察による蛍光減衰量の基礎的検討では, 観察開始24時間目で, annexin V-enhanced green fluorescent protein (AV-EGFP) では初期値の3%, AV-fluorescein isothiocyanateでは77%, propidium iodide (PI) では28%の蛍光量が減衰した. 放射線生物学研究への応用: として, apoptosisとnecrosisの鑑別に対するAVおよびPIの二重染色法における経時的変化について例示した. ヒトT細胞由来の腫瘍網胞株であるJufkat細胞を抗Fas抗体処理後12時問で, 95%の総胞がapoptosisに, 3%の細胞がnecrosisとなった. また, apoptosisとなった細胞の56%がsecondary necrosisとなった. Apoptosisでは, 明視野では典型的なbuddingがおこるとともに, AV-EGFPとPIの二重染色では初めにAV-EGFPのみで染色され, その後時間をおいて, 細胞膜の破壊, 細胞の扁平化とともにPIでも染色されるsecondary necrosisとなることを個々の細胞単位で観察できた. 一方, 明視野でapopt0tic buddingを形成することなく, 細胞の膨化をおこすneclosisでは, AV-EGFPとPIの二重染色では両者がほぼ同時に染色された.
新しい蛍光顕微鏡システムは, 細胞の形態と機能を同時に経時的に観察するごとができ, 放射線生物学研究において新しい有用な手法になると思われる.
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