【背景, 目的】 より良い線量分布を作成するためにさまざまな最適化の手法が用いられている. Geometric Optimization (GO) 法, Dose Point Optimization (DP) 法, Simulated Annealing (SA) 法などが代表的なものである. 我々は, 新しい最適化法として電磁気学におけるガウスの法則を用いた引力斥力モデル (Attraction-Repulsion Model ; ARM) を考案した. ARMの概念, 最適化についての基礎的考察を行った.
【方法】 ARMでは, 計算グリッドが属性を持ち, その属性, 線量に応じた引力あるいは斥力を持つ. ここで引力とは, 放射線量を増やす方向に働く力, 斥力とはこれを減らす方向に働く力と定義する. これらの力が線源側の1つのパラメータに対してフィードバックを行い, 繰り返し演算を行うことで線量分布の最適化を行う. 今回の検討では, 停留時間を変更可能な高線量率小線源治療への応用を想定した.
(1) 線源停留可能位置を2.5mm間隔で直線上に25個配置, 線量評価点をこれから1cm離した平行な直線上に同じく25個設定した. (2) 線源停留可能位置は (1) の場合と同様に設定し, 線量評価点をここから最近部で0.8cm, 最遠部で1.2cm離した位置に線源停留可能位置に対して斜めに直線状に配置した.
両者について各線量評価点が同じ線量になるようにARMを用いて最適化計算を行った. 比較対照として, 最適化を行わない場合, GO, DPを用いて最適化を行った場合を用いた.
【結果】 (1) の場合, 25個の線量評価点の最大線量1.015, 最小線量0.988, 標準偏差0.006とほぼ均一な線量を照射する解を得た. DPで線源停留時間に負の値を許可した場合, 線量評価点25点ですべて1.000と計算精度上での完全な解を得ることができた. しかし, 線源停留時間のうち負の値をとったものを0と設定し再計算を行うと解の悪化を認めた.
(2) ARMでは25個の線量評価点の最大線量は1.017, 最小線量は0.977, 標準偏差は0.007と25個の線量評価点においてほぼ均一な線量を照射する解を得た. (1) と同様にDPでは線源停留時間に負の値を許可しない場合, 解の悪化を認めた. GOでは線量評価点の情報を最適化に組み込めないため (1) と同じ線源停留時間しか設定できず, (1) の場合よりも解の悪化を認めた.
【結論】 放射線治療における線量分布最適化のために, 引力斥力モデルを考案した. 2次元の単純なモデルによる検討では良好な解を得ることができた.
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