The Journal of JASTRO
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17 巻, 3 号
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REVIEW ARTICLE
  • ―第17回学術大会シンポジウム5のまとめ―
    池田 恢, 早渕 尚文, 遠藤 真広, 広川 裕, 白土 博樹, 保科 正夫, 渡辺 良晴, 熊谷 孝三, 泉 孝吉
    2005 年 17 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    この論文は2004年11月日本放射線腫瘍学会第17回学術大会でのシンポジウム5「放射線治療事故を今後にどう生かすか」の総括である. 2001年から2004年に亘って11件の放射線治療関連の事故が報道され, うち8件では患者への直接の影響が懸念された. 2001年には最初の事故報道と同時に医学放射線物理連絡協議会が結成され, 原因の究明と同種事故の再発防止を目的として調査を行った. 調査の結果, 患者への影響の懸念された8件のうちでは7件までが放射線治療計画コンピュータ (RTPシステム) が関与し, またそのうち4件はその導入時の受け入れ, コミッショニング時の過誤に由来するものであった. また1件では線量評価に関する当事者 (医師と技師) 間の誤解と, それがコミュニケーション不足によって長年月に亘って看過されたことによる. 後半では放射線治療の品質管理・品質保証の維持・向上を目指した最近の活動についても言及した.
  • ―ヒト個人差とマウス系統差―
    岩川 真由美, 野田 秀平, 太田 敏江, Yang MINFU, 岩田 賢, 今井 高志
    2005 年 17 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    マウス実験モデルは, 前世紀より放射線生物学において重要な実験手段であり, 放射線効果メカニズムの研究, 放射線影響研究などで大いに活用されてきた. 21世紀となり, ゲノム研究の進歩に伴い, ヒトに続いてマウス全ゲノムが明らかとなったことにより, マウス実験モデルは, ヒト個人個人の様々な感受性研究にも応用可能となった. この総説では, これまでの報告を振り返り, マウス実験モデルを用いた正常組織放射線反応研究における現在までの知見をまとめた. 各臓器において, ヒトの放射線感受性における多様性と同様に, その放射線障害の程度にマウスの系統差が認められた. 多系統のマウスを用いることで明らかとなった分子は, TGF-beta, MnSOD, CD44などであった. 臨床ではすでに, 既知の遺伝子上の多型マーカーを用いて, ヒトの放射線感受性を予測しようという試みが始まっている. マウスとヒトのゲノム相同性を応用した放射線生物研究は, 今後の放射線感受性研究に大いに貢献すると考えられる.
ORIGINAL CONTRIBUTIONS
  • 村上 祐司, 赤木 由紀夫, 田中 信治, 木村 智樹, 権丈 雅浩, 兼安 祐子, 和田崎 晃一, 広川 裕, 伊藤 勝陽
    2005 年 17 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    【目的】 期食道癌に対する放射線治療成績を検討し報告した.
    【対象と方法】 化学療法を併用せず放射線治療を施行したI期食道癌91例 (m1-2 : 28例, m3-sm1 : 30例, sm2-3 : 30例, 不明 : 3例) を対象とした. 照射前EMR施行率は65%で, m1-sm1症例では約90%を占めた. 放射線治療は, m1-2症例は腔内照射単独, m3以深では外部照射+腔内照射にて加療した. 経過観察期間は生存例で中央値58ヶ月であった.
    【結果】 5年全生存率, 原病生存率は61%, 83%であった. 深達度別では, m1-2, m3-sm1, sm2-3症例の5年全生存率は81%, 67%, 35%, 5年原病生存率は, 100%, 81%, 63%であった. 91例中29例 (32%) に再発を認め, 深達度別再発率は, m1-2 ; 29%, m3-sm1 ; 23%, sm2-3 ; 47%であった. 初再発部位は食道22例, 領域リンパ節4例, 食道・領域リンパ節同時2例, 部位不明1例で, 食道再発はm1-2では異時性多発癌が63%を, m3以深では局所再発が69%を占めた. 救済可能であった症例は, 表在癌の状態で発見し得た食道再発症例が主体であった. 再発は5年程度まで比較的長期にわたり認めた. G3以上の有害事象は食道潰瘍を5%に認めた.
    【結語】 m1-2では, 異時性多発癌を考慮した照射野設定が必要であり, m3以深では治療成績向上のため化学放射線治療を考慮すべきである. 再発の早期発見・救済のため治療後5年間は厳密な経過観察が必要である.
  • ―九州地区センターとカナダ (NRCC) の相互比較―
    荒木 不次男, 熊谷 孝三
    2005 年 17 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    2002年に日本医学物理学会 (測定委員会) から外部放射線治療における吸収線量の標準測定法 (標準測定法01) が出版された. この標準測定法01はコバルト水吸収線量校正定数N 60CoD,W に基づいている. しかしながら, N 60CoD,W は直接的に校正された値ではなく, コバルト照射線量校正定数Ncから計算して得られる. 米国医学物理学会 (AAPM) と国際原子力機関 (IAEA) から出版された外部放射線治療における新しい吸収線量測定プロトコルは, 水カロリメータあるいはグラファイトカロリメータで校正された吸収線量校正定数に基づいている. 本研究の目的は, 我が国のNcNcから計算されたN 60CoD,W の精度を検証することである. そのため, 国際的に線量トレーサビリティを持ったカナダの一次線量標準機関であるNRCC (National Research Council Canada) と, 我が国の三次線量標準機関である医療用線量標準九州地区センターとのNcN 60CoD,W の国際的な相互比較を行った. NRCCのN 60CoD,W は水カロリメータに基づいて決定されている. NRCCに対する九州地区センターのNcN 60CoD,W の比は, それぞれ0.9965±0.0023と0.9991±0.0013であり, 両機関の校正精度の不確定度 (1σ) 以内で一致した.
  • 古山 浩子, 遠藤 真広, 伊藤 彬, 溝江 純悦, 辻井 博彦
    2005 年 17 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    【目的】 放射線医学総合研究所で行われてきた炭素イオン治療臨床施行のデータ分析用に, ユーザーが放射線治療データにオンラインアクセス出来るデータベースシステムの設計・開発を行ったので報告する.
    【方法と材料】 本システムは患者の治療計画および治療実施データを蓄積する. そのデータには文字型や数値型データの非ボリュームデータ (1), およびCT画像, 標的や臓器の輪郭, 患者コリメータや飛程補償フィルター, 線量分布, 位置決め画像などの2次元および3次元のボリュームデータ (2) が含まれる. データのタイプに応じて2つのサブシステムを設けた. ひとつは非ボリュームデータ (1) を蓄積する治療情報データベースでパーソナルコンピュータ上のクライアントソフトウェアからアクセスできるものである. 他はDICOM RTアーカイブでボリュームデータ (2) をDICOMオブジェクトとして蓄積するもので, データは開発したPC上で稼動するDICOM RTビューアーでアクセスされる. 検索したデータを表示しDICOMファイル, あるいはAAPM/RTOGデータ交換フォーマットのファイルとして保存できる. すべてのデータは毎日指定した時刻に自動登録される.
    【結果】 本システムは2年来稼動し, この間ソフトウェアの修理や改良を実施した. 現在では安定に稼動し1994年以来の患者2千人以上のデータが蓄積されている. 本文中にユーザー用アプリケーションを使用例により記述した.
    【まとめ】 本システムにより利用者は治療結果評価のためのデータ分析が可能となった. また, 画像ベースの分析用にはボリュームデータを可搬性の形式で提供できる.
  • 玉村 裕保, 大口 学, 市岡 和浩, 太田 清隆, 東 光太郎, 利波 久雄
    2005 年 17 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    【目的】 頭頸部及び胸部悪性腫瘍の治療において放射線療法は重要な位置を占めている. しかしこの領域では早期有害事象として急性放射線粘膜炎があり, 現在これらに対する治療法は確立されていない. われわれはこれらの放射線粘膜炎に対しステロイド混合薬を作成し, 放射線治療単独群に投与し良好な治療効果を得ている. そこで今回化学放射線療法に伴う放射線粘膜炎に対する本剤の有効性につき検討した. またあわせて照射部位による治療効果の差についても遡及的に検討を行ったので報告する.
    【対象と方法】 頭頸部及び胸部へ放射線治療を受け, 急性放射線粘膜炎症状を認めた放射線治療単独群及び化学放射線療法群に対し合剤を投与した. その後, 合剤を投与された放射線粘膜炎患者の食事摂取量・血清総蛋白値・血清アルブミン値・体重の推移につき評価を行った. また口腔を含む治療群と口腔を含まない食道照射群においても同様の検討を行った.
    【結果】 合剤投与者は214例で, 本剤投与に伴う有害事象は認めなかった. 放射線治療単独群と化学放射線療法群の比較では食事摂取量の推移には有意差を認めなかった. しかし口腔を含む照射群と食道照射群間の食事摂取量の推移には差を認めた (p=0.0008). 口腔を含む照射群では原疾患に伴う食物咀嚼能力の低下や嚥下能力の低下に伴う影響の関与が疑われた. 放射線粘膜炎発症にもかかわらず血清総蛋白値, 血清アルブミン値, 患者体重の推移は, 放射線治療前値と比較し, わずかな低下にとどまった. また放射線粘膜炎に伴う放射線治療休止者も認めなかった.
    【結論】 本剤は化学放射線療法に伴うより著しい放射線粘膜炎に対しても, 放射線単独治療に伴う場合と同様に, 安全で良好な治療効果が期待されるものと思われた.
  • ―HDR単純モデルでの基礎的検討―
    塩見 浩也, 隅田 伊織, 呉 隆進, 吉岡 靖生, 礒橋 文明, 鈴木 修, 小西 浩司, 川口 善史, 井上 武宏
    2005 年 17 巻 3 号 p. 177-186
    発行日: 2005年
    公開日: 2008/02/08
    ジャーナル フリー
    【背景, 目的】 より良い線量分布を作成するためにさまざまな最適化の手法が用いられている. Geometric Optimization (GO) 法, Dose Point Optimization (DP) 法, Simulated Annealing (SA) 法などが代表的なものである. 我々は, 新しい最適化法として電磁気学におけるガウスの法則を用いた引力斥力モデル (Attraction-Repulsion Model ; ARM) を考案した. ARMの概念, 最適化についての基礎的考察を行った.
    【方法】 ARMでは, 計算グリッドが属性を持ち, その属性, 線量に応じた引力あるいは斥力を持つ. ここで引力とは, 放射線量を増やす方向に働く力, 斥力とはこれを減らす方向に働く力と定義する. これらの力が線源側の1つのパラメータに対してフィードバックを行い, 繰り返し演算を行うことで線量分布の最適化を行う. 今回の検討では, 停留時間を変更可能な高線量率小線源治療への応用を想定した.
    (1) 線源停留可能位置を2.5mm間隔で直線上に25個配置, 線量評価点をこれから1cm離した平行な直線上に同じく25個設定した. (2) 線源停留可能位置は (1) の場合と同様に設定し, 線量評価点をここから最近部で0.8cm, 最遠部で1.2cm離した位置に線源停留可能位置に対して斜めに直線状に配置した.
    両者について各線量評価点が同じ線量になるようにARMを用いて最適化計算を行った. 比較対照として, 最適化を行わない場合, GO, DPを用いて最適化を行った場合を用いた.
    【結果】 (1) の場合, 25個の線量評価点の最大線量1.015, 最小線量0.988, 標準偏差0.006とほぼ均一な線量を照射する解を得た. DPで線源停留時間に負の値を許可した場合, 線量評価点25点ですべて1.000と計算精度上での完全な解を得ることができた. しかし, 線源停留時間のうち負の値をとったものを0と設定し再計算を行うと解の悪化を認めた.
    (2) ARMでは25個の線量評価点の最大線量は1.017, 最小線量は0.977, 標準偏差は0.007と25個の線量評価点においてほぼ均一な線量を照射する解を得た. (1) と同様にDPでは線源停留時間に負の値を許可しない場合, 解の悪化を認めた. GOでは線量評価点の情報を最適化に組み込めないため (1) と同じ線源停留時間しか設定できず, (1) の場合よりも解の悪化を認めた.
    【結論】 放射線治療における線量分布最適化のために, 引力斥力モデルを考案した. 2次元の単純なモデルによる検討では良好な解を得ることができた.
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