The Journal of JASTRO
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18 巻, 4 号
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ORIGINAL CONTRIBUTION
  • 小幡 史郎, 高月 仁司, 太田 嘉昭, 馬郡 正昌, 菅 恒彦, 高田 一正
    2006 年 18 巻 4 号 p. 185-190
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    早期肺癌の定位放射線治療は現在,治療効果の向上と有害事象の軽減から,症例数の増加が認められているが,1 回の治療線量が高いため線量誤差が生じた場合は逆に,治療効果の低下や正常組織のダメージ増加につながる恐れがある.また,胸部では他の部位と異なり,肺組織を含み不均一補正を必要とするため,手計算での高精度な線量確認は困難とされている.当院では症例数の増加とマンパワーの不足により,手計算の代わりに精度保証のための簡便なオリジナルのファントムを作成した.検証の結果,臨床で使用可能と判断,実測することによって計算値との誤差を確認し,許容範囲内(±3%)であれば治療を施行することとした.
  • 木下 留美子, 土屋 和彦, 大森 桂一, 小日向 謙一, 藤田 勝久, 青山 英史, 笈田 将皇, 西岡 健, 鈴木 恵士郎, 白土 博樹
    2006 年 18 巻 4 号 p. 191-197
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    【背景】強度変調放射線治療(IMRT)は標的体積の三次元形状に合わせて線量集中度を高めることが可能である.頭頸部領域においては耳下腺線量低減を主目的としてIMRTが行われている.一般的にIMRTでは治療時間が長いこと,および線量勾配が照射野内に存在することより,従来の放射線治療と比較し,より精度の高いセットアップが必要とされる.
    【目的】われわれの施設で開発した動体追跡放射線治療装置の 2 方向X線透視を頭頸部癌に対するIMRTのセットアップに用い,その安全性を検証する.
    【対象・方法】2002年 5 月から2004年10月まで当院でIMRTを施行した 9 例.PTV-marginは 3 mmで治療を行った.口腔内乾燥症はVAS(visual analogue scale)を用い自覚症状で評価した.
  • 川守田 龍, 山田 和成, 中島 俊文, 奥野 芳茂, 小倉 昌和
    2006 年 18 巻 4 号 p. 199-207
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    【目的】頭頸部IMRTにおいて,治療期間中に起きる頭頸部の領域体積や腫瘍サイズの縮小により線量分布が変化すると考えられるため,腫瘍や危険臓器に対する線量分布の変化について検討する.
    【方法】経時的な変化を検討するため,当院で頭頸部癌のIMRTを行った10症例について,治療開始時(0 Gy)と40 Gy時期で比較する.比較の方法は,0 Gy時のCTシミュレーション(CT-0 Gy)と同じように40 Gy時(CT-40 Gy)でも撮影を行い,その画像を計画装置に取り込んで,0 Gy時と同一アイソセンタをCT-40 Gy画像に設定して0 Gy時の計画内容をすべて移し込み再計算する.検討項目は,頭頸部の領域体積,腫瘍(GTV)サイズ,深さを表す皮膚面とアイソセンタ間距離,体重の変化,GTVの95%体積の線量であるD95とconformity index(C.I)およびuniformity index(U.I),危険臓器は,両側耳下腺の体積,耳下腺体積50 %の線量(D50),脊髄腔の最高線量および脊髄腔体積 5%線量(D5)の変化を計画装置のDose-Volume Histogram(DVH)で計算して求める.
    【結果および考察】頭頸部の領域体積の縮小率は,すべての症例において 0 Gy時と比較して40 Gy時で3.8%から9.2%,平均5.7%であった.GTVも同様に全症例縮小し最大32%の縮小率であった.体重も全症例同じ傾向で,3.0~11.0%,平均7.6%の減少となった.治療が進むにつれ頭頸部の領域体積および体重の減少がみられたが,両者にスピアマンの順位相関係数による無相関の検定では互いに相関関係はみられなかった.GTVの縮小によりC.Iは上昇したが,U.I,D95に変化は見られなかった.耳下腺体積は放射線の影響から減少傾向にあるが,耳下腺の50%体積の線量であるD50に変化はなかった.脊髄腔最大線量は,0 Gy時と比べて40 Gy時では全症例において有意に(p=0.0013)増加し最大28.0%,平均12.0%の増加があったがD5にほとんど変化はなかった.治療期間中に頭頸部の領域体積や腫瘍の縮小がみられ,線量分布が変化した.頭頸部IMRTにおいて日々変化する可能性がある線量分布によって危険臓器の副作用を引き起こさないように,40 Gy 程度に一度はCT シミュレーションを行い,線量分布の変化を確認しなければならない.
  • 前田 直子, 田原 大世, 小西 康彦, 村尾 信夫, 島本 茂利, 菅  慎治, 田中 憲一, 遠藤  暁, 星  正治, 鬼塚 昌彦, ...
    2006 年 18 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    近年,医療では,外部照射装置として直線加速器が主に使われているが,コバルト装置はガンマ線出力が安定しているため,線量計の校正や基準線量として利用されている.コバルト装置の基本特性を汎用モンテカルロコードMCNPで解析した.エネルギースペクトル,出力係数(OPF)と深部線量百分率(PDD)をモンテカルロ計算し,電離箱線量計との比較を行った.比較の結果は4.8%以内の一致となり,モンテカルロ計算が有用であった.また広島大学原爆放射線医科学研究所ではコバルト照射装置が生物学的試料(細胞や動物)を照射する目的で使われてきた.その際,低線量,低線量率の照射は鉛板で減衰させて行われてきたが,鉛板による散乱線の増加で線質の変化が危惧されてきた.今回,鉛板の厚さが 1~5 cmの範囲で透過したスペクトルのモンテカルロ計算を行った.この結果, 鉛板の厚さによる大きな変化がないことが分かった.モンテカルロ計算は実測が困難な場合や実測の検証に有効であり,治療計画装置のアルゴリズムにも組み込まれてきている.今後,このモンテカルロ計算を使った手法は,他種の治療装置の計算,品質保証(QA),品質管理(QC)に広く利用されることが予想される.
  • 高木 等, 竹中 和幸, 廣瀬 保次郎, 小林 英敏
    2006 年 18 巻 4 号 p. 217-224
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    白血病の治療である骨髄移植の前処置として全身照射が施行されている.患者の体軸の線量を均一にすることは全身照射における前提条件である.体厚の相違が補償される必要がある.我々の施設では,補償方法として数種類の異なった厚さの鉛板で作成した鉛補償フィルターを利用している.この論文の目的は体軸中心での線量を全身照射中に測定することによって線量補償の精度を評価することである.使用した検出器は半導体表面線量計(DPD-510線量計)8 個であった.検出器を体軸上に固定するための検出器専用ホルダーは木製で自作した.専用ホルダーを用いることにより体軸上の 8 ケ所での吸収線量の測定が可能であった.患者の体軸上の 8 ケ所において,鉛補償フィルターの精度が全身照射施行前において可能であった.繰り返し測定することにより補償フィルター精度を上げることが可能であった.全身照射中に測定経過をモニター表示することが可能であった.吸収線量は処方線量と一致させることができた.本法は全身照射の精度の確認と線量分布の均一性の改善において有用である.
  • 堀川 典子, 阪本 伸之, 吉村  均
    2006 年 18 巻 4 号 p. 225-233
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    膀胱全摘除術が施行できない浸潤性膀胱癌23例(T2 5 例,T3a 3 例,T3b 10例,T4 5 例,N0 18例,N1 2例,N2 3 例)に対してTUR-Bt後,内腸骨動脈に置いたリザーバーよりcisplatinを少量ずつ毎日投与し,同時に放射線治療を施行した.放射線治療は全骨盤に40 Gyと,追加照射として膀胱に限局して左右対向 2 門で20 Gyを照射することを基本とし,総線量の平均が58.1 Gyであった.効果判定は,治療後 1~2 週間後に膀胱鏡で行った.治療終了後は外来通院で動注リザーバーより抗癌剤を 2 週に 1 度注入し,およそ 6 カ月に 1 度のTUR-Btによる効果判定を行った.経過観察期間は25~123カ月,中央値72カ月,平均69カ月,生存期間は19~117カ月,中央値66カ月,平均63カ月であった.全症例の 2 年,3 年,5 年生存率は84 %,78 %,63 %であった.他病死が 6 例で,2 年,3 年,5 年原病生存率は94 %,86 %,86 %,無病生存率は,2 年80 %,3 年80 %,5 年66 %であった.有害事象は,下痢がGrade 2 を 3 例に認め,膀胱炎はGrade 3 が 1 例,Grade 4 が1 例(晩期障害として 7 年後に膀胱膣瘻形成)で,血液毒性はGrade 3 を 1 例に認めた.また,化学療法によると思われる有害事象はGrade 2 の末梢神経炎を 2 例に認めた.再発は全23例中 3 例(13 %)に認め,3 例とも遠隔転移例であった.浸潤性膀胱癌に対する経尿道的腫瘍切除後のlow-dose Cisplatin 動注化学療法併用放射線療法は,高齢者にも比較的安全で根治の期待できる有用な治療法であると考えられる.
  • 加藤 貴弘, 小幡 康範, 柳川 繁雄, 石原 俊一, 青山 裕一, 島田 秀樹, 村山 洋
    2006 年 18 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    限局性前立腺癌に対する外部照射では,隣接するリスク臓器(Orgon at risk;OAR)である直腸や膀胱の被曝線量を抑えつつ,臨床標的体積(clinical target volume:CTV)である前立腺,精mに対し,いかに高線量を投与することができるかがポイントとなる.これを実現させる技術的アプローチとして照射方法の工夫,イメージガイド下(image guided radiothrapy)での照射,腹臥位による照射などが提案されている.これらのうちで腹臥位照射の有効性に関しては議論のあるところであり,CTVと直腸の距離が離れる腹臥位が良いとする意見と照射位置精度が良好である仰臥位が良いとする意見の両論が存在しているのが実状である.そこで,本研究ではこの 2 つの観点を考慮に入れたうえで限局性前立腺癌に対する三次元原体照射法において照射体位の違いがOAR線量に及ぼす影響について三次元治療計画装置を用いてシミュレーションを行うことにより,至適照射体位を明らかにできないかと考え検討を試みた.その結果,照射位置精度の不確定要素を考慮して設定される計画標的体積(planning target volume;PTV)マージンを両体位において同一にして評価した場合,直腸線量の低減効果は腹臥位において有意に優れていたが,腹臥位のPTVマージンを 1 mm加算したものと比較するとすでに両者に有意差はなくなり,3 mm加算したものと比較すると逆に仰臥位が有意に優れるという結果が得られた.このことは腹臥位にすることで離れるCTVと直腸との距離は比較的小さく,腹臥位にすることで増す照射位置精度の不確定さを大きく凌駕するほどではないことを意味する.したがって腹臥位を採用する際,そのメリットを生かすためには照射位置精度を少なくとも仰臥位と同程度に保つ必要性があることが明らかとなった.どちらの照射体位が優位であるかを一元的に結論付けることはできないが,腹臥位での照射位置精度を高めることは決して容易ではないことから,マンパワー,マシンタイムに余裕がない本邦における多くの治療施設においては仰臥位を採用する方が現実的と言える.最終的にどちらの体位を選択するかはそれぞれの特徴を把握したうえで施設毎に判断していく必要があり,本研究はそれを判断する際の一助になるものと思われる.
  • 一宮 結加子, 副島 俊典, 辻野 佳世子, 余田 栄作, 藤井 收, 広田 佐栄子
    2006 年 18 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/02/18
    ジャーナル フリー
    【目的】当院における原発不明扁平上皮癌頸部リンパ節転移症例の放射線治療成績(頸部リンパ節制御,原発巣制御など)について検討し,今後の治療戦略について考察を加えた.
    【対象と方法】放射線治療を施行した原発不明扁平上皮癌頸部リンパ節転移20例を対象とした.頸部リンパ節の転移部位は,レベルI 5 例,II 14例,III 5 例,IV 3 例,V 1 例(症例重複)であり,臨床的N病期はN1 4 例,N2a 6 例,N2b 6 例,N2c 2 例,N3 2 例であった.手術は,根治的頸部郭清術 8 例,腫瘍切除術 4 例,部分切除または生検のみ 7 例であり,1 例は術式が不明であった.放射線治療は,全例で両側頸部および咽頭粘膜に照射を行っていた.経過観察期間は 7~108カ月(中央値40カ月)であった.
    【結果】全生存率,無再発生存率,リンパ節制御率,原発巣制御率はそれぞれ 3 年で81.9%,69.1%,84.1%,93.3%であった.頸部リンパ節再発は 5 例で認めた.単変量解析において,転移が複数のレベルにわたっていることとN病期がN2b以上であることが頸部リンパ節および生存に関する予後不良因子であった.また全治療期間が50日以上では頸部リンパ節制御率が低かった.原発腫瘍の後発は 5 例で認めた.照射野内は 4 例で,部位は舌根,扁桃,上咽頭,下咽頭であった.照射野外は硬口蓋に 1 例認めた.3 例で遠隔転移を認め,部位はそれぞれ肺,骨および肝,脳であった.急性期有害反応は,Grade 3 の皮膚炎を15%,粘膜炎を10%に認めた.晩期有害反応は,口腔乾燥45%,皮膚線維化25%,甲状腺機能低下25%,味覚低下20%などであった.
    【結論】原発不明扁平上皮癌頸部リンパ節転移例において,臨床病期がN2b以上または転移が複数のレベルにわたる症例は根治的頸部郭清術に加え術後照射を行っても局所再発のリスクが高く,化学療法の併用などさらに積極的な治療戦略が必要である.
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