放射線治療に関する情報をどのように入力,管理,運用し,さらに有効活用していくかについては,まだまだ問題が多い.当院では,以前から放射線治療部門データベース(部門 DB)が構築運用されていたが,実質上管理が困難な状態となり, FilemakerベースのDBに再構築した.現状に合わなくなったテーブルや項目を割愛したり,放射線治療広域データベース ROGADに含まれる項目を加えたりすることにより, JASTROの構造調査への対応や,将来の全国規模のデータ収集への対応も可能となることを目指した.しかし,実際にはデータの入力もれや,入力方法の誤りなどのために,今回の JASTRO構造調査に対応した正確なデータを抽出することはできなかった.また,当院では,放射線治療に関する RISが更新され,その入力が必須となったが,部門 DBとの連携がなく,情報入力の負担が増えている.がん診療連携拠点病院に指定され,院内がん登録も本格的に開始されたが,やはり部門 DBとの連携がない状況である.このように当院内だけにおいても,情報の共有が行われておらず,現場の負担は増え続けている.この状況で情報入力が義務化されても,その意義を感じられなければ,実際の情報入力者である担当医のモチベーションは下がり,情報の正確性が低下してしまうという悪循環に陥りかねない. IHE-J ROの整備や JASTROデータベース委員会の活動等により,各システム間の連携,情報の共有がうまく行われるようになり,さらには,その情報が臓器別がん登録や JNCDB(Japanese National CancerDatabase)といった形で,全国的に集計,解析され,単なる疫学調査にとどまらず,治療成績の評価にもつながるようなシステムが構築されれば, DB入力の意義を実感できるようになるであろう.臨床家のために役立つ全国的がん診療評価システムの構築実現が望まれる.
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