転移性骨腫瘍の放射線治療による効果をMR画像から検討した. 対象は2群に分かれる. 第1群は治療前後にMRIが施行された肺癌, 乳癌, 腎癌等の骨転移32例であり, 第2群は乳癌骨転移巣に放射線治療を行い, 5年以上経過の現在再発のみられない3例である. 信号強度の評価の基準は照射野内骨髄 (1), 筋肉 (L) より低信号 (LL), 皮下脂肪 (H) より高信号 (HH) の5段階表示とした. 治療前の転移巣は大多数がTl強調画像 (L), T2強調画像 (H) を示し, Gd-DTPAで造影された.放射線治療中あるいは治療後2年以内に撮像された32例のMRIはTl/T2強調画像の変化からみてType ILL/HH (31%), Type II I/I (13%), Type III LL/LL (9%), Type IV混合変化 (16%), NC不変 (31%) に分類された.Gd-DTPA造影能は治療前は23/27例がsolid enhancementを示したが, 治療後は18/23の症例で造影能が低下し, mottledenhancement7例, ring-shaped enhancement4例, no enhancement7例に分類された.造影能の低下は放射線治療効果を反映したものであろうと思われる.腫瘍の縮小は12/35例に認められた. 一方, 骨転移照射後5年以上経過した3例のMRIはType IIIを示し, Gd-DTPAで造影を受けなかった. Type Iは腫瘍の液性変性, Type IIは脂肪化, Type IIIは骨硬化ないし線維化を示す画像であると考えられた.以上の結果からT1, T2強調画像における信号強度の変化, Gd・DTPA造影能の変化, 腫瘍の大きさの変化の3つの指標を用いれば, MRIを用いた腫瘍効果の判定が可能になると思われる. MRIで放射線治療効果のみられた27例のうち20例 (74.1%) は早期に判定がくだされた. 内訳は5例が照射期間中に, 15例が照射終了後2カ月以内であった. 従来X線写真, 骨シンチグラフィー, CTで行われてきた転移性骨腫瘍の診断は, MRIにより放射線治療効果の判定を含め適用されるようになるであろう.画像変化の病理学的うらづけは今後の検討課題であろう.
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