肺非小細胞癌の原発巣に対する有効な照射法について検討した.対象は1985年7月以降の4年6カ月間に原発巣に対し60Gy以上の放射線治療を施行した56例である.照射方法は,(1) 単純分割 (c-f: 1回2Gy, 週5回),(2) Boost therapy併用 (B-t: 単純分割で40~50Gy照射後1回4~5Gy, 週2~3回),(3) 多分割 (H-f1回1.1~1.2Gy, 1日2回, 週5日),(4) 線量漸増 (D-i: 1回1.8Gyで開始し1~2週間隔で1回線量を2.4~3Gy程度まで増加, 週5回) を年次的に試みた.症例数は (1): 11例,(2): 19例,(3): 11例,(4): 15例であった.これら各照射法の有効性について1) 一次効果, 2) 放射線治療後の経過, 3) 剖検所見, 4) 放射線障害, 5) 予後を比較した.その結果, 1) 一次効果 (CR率): 腫瘍径3cm以下ではB-t: 100%, C-60%, D-i: 0%;3.1~6cmではD-i: 29%, B-t: 20%, C-f: 12.5%, H-f0%;6.1cm以上ではD-i: 29%, B-t: 12.5%, C-f・H-f: 0%であった.2) 放射線治療後の経過: 腫瘍径3cm以下ではB-t・D-iで最長54カ月まで腫瘍増大は認められていない.3.1cm以上でもB-t・D-iではC-f・H-fと比較し, 腫瘍増大までの期間において有効性が認められた (P<0.05~0.001).3) 剖検所見: 24例中原発巣の照射効果がEf.3と判定された症例は1例 (腫瘍径6.1cm以上, B-t) であった.一方, Ef.2と判定された5例中3例は腫瘍径3.1cm以上で, B-t・D-iが施行されていた.4) 放射線障害: B-t・D-iでは放射線肺炎の増強が懸念されたが許容範囲であった.5) 予後: 生存率はC-f・B-t・D-i>H-f (P<0.05) であったが, B-t・D-iでは局所非再発状態で1年以上生存中の症例が4例・5例含まれていた.以上より, B-tとD-iは肺非小細胞癌に対する有望な照射法となりうる可能性が示唆された.そこで現在, Boost therapyをとり入れた線量漸増照射法についてTrialを行っている.
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