The Journal of JASTRO
Online ISSN : 1881-9885
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最新号
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REVIEW ARTICLE
  • 阿部 光幸
    2009 年 21 巻 3 号 p. 97-101
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    最近の高精度放射線治療の進歩により,放射線治療患者が急増している.このため,放射線治療医の不足が重大な問題になっている.これを根本的に解決するには,何よりも放射線腫瘍学講座の設置が重要である.何故なら,放射線治療医を生み育てるのは,まずもって大学だからである.放射線腫瘍学の講座があってこそ,教授は教育,研究,診療,また,学生の獲得に専心取り組むことができるのである.現在,放射線腫瘍学講座を有するのは16大学に過ぎない.日本放射線腫瘍学会はあらゆる機会をとらえて,文部科学省,厚生労働省,大学の医学部に放射線腫瘍学の講座の重要性を訴え,問題の解決に努力するよう切望するものである.
  • 播磨 洋子
    2009 年 21 巻 3 号 p. 103-107
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    CT,US,MRIは形態画像であるのに対して,PETは機能画像である.PETがわが国に導入されたのは1976年で,MRIよりも早かったが,CT,US,MRIの急速な技術発展の陰に隠れていた.しかし,FDG-PETが保険診療として収載され,また,FDGが放射線医薬品として販売が開始されて以来,施設が普及したこと,PETとCTの画像を重ねて診断できるPET-CTが登場したこともあいまって,FDG-PETの検査件数は最近飛躍的に増加した.PET-CTは従来の画像診断では検出できない微小な癌病巣の描出が可能となったが,検出感度が不十分な悪性腫瘍も存在する.FDG-PETの利点は,(1)全身病巣探索が容易で,原発不明癌の探索や転移,再発診断に有用,(2)腫瘍の増殖や悪性度,炎症の活動性を評価,(3)治療経過の定量的評価や悪性度の診断に有用,(4)FDGには副作用の報告は皆無なので,腎機能障害や肝機能障害,アレルギー体質のある患者に使用可能,(5)放射線被曝が少ない点である.一方,FDG-PETの悪性腫瘍における特徴は,(1)増殖速度が速い,悪性度の高い,未分化な腫瘍ほど,集積が高い,(2)粘液や繊維成分を多く含み,細胞密度が低い腫瘍は集積が低い,(3)FDGは尿中に排泄されるので,腎細胞癌,前立腺癌を含む尿路系悪性腫瘍の描出には適していない点である.このように,FDG-PETはすべての癌の微細病変を描出し得るわけではないが,適切な目的を持って用いると極めて有用であり,今後の放射線腫瘍学の臨床,研究に大いに活用できる診断法である.
SPECIAL ARTICLE─JASTRO誌を振り返って
ORIGINAL CONTRIBUTION
  • 手島 昭樹, 沼崎 穂高, 渋谷 均, 西尾 正道, 池田 恢, 関口 建次, 上紺屋 憲彦, 小泉 雅彦, 多湖 正夫, 安藤 裕, 塚本 ...
    2009 年 21 巻 3 号 p. 113-125
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    JASTROの2007年全国放射線治療施設構造調査を2008年 3 月から2009年 1 月までに,調査票を送付して行った.回答率は94.2%(721/765)であった.全国の放射線治療を施行した年間新患者数および総患者数(新患+再患)は,それぞれ約18万1,000人,21万8,000人と推定された.装備はlinac,telecobalt,Gamma Knife®,60Co RALS,192Ir RALS(実稼動中のもの)は,807台,15台,46台,45台,123台であった.linacにはdual energy機能が539台(67%),3DCRT機能が555台(69%),IMRT機能が235台(29%)に装備されていた.JASTRO認定医数,放射線腫瘍医数,医学物理士数,放射線治療品質管理士数,放射線治療担当技師数,放射線治療担当看護師数,看護助手+事務員数は,それぞれ477人,826 FTE人,64 FTE人,106 FTE人,1,634 FTE人,494 FTE人,329人であった.2005年に比べて,前立腺癌に対する125Iの治療が52%,IMRTが271%増加していた.地域的に放射線治療適用率は,人口1,000人に対して1.8~0.8人(平均1.3人)までのバリエーションが観察された.
  • 手島 昭樹, 沼崎 穂高, 渋谷 均, 西尾 正道, 池田 恢, 関口 建次, 上紺屋 憲彦, 小泉 雅彦, 多湖 正夫, 安藤 裕, 塚本 ...
    2009 年 21 巻 3 号 p. 127-138
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    JASTROの2007年放射線治療施設構造調査を2008年 3 月から2009年 1 月までに調査票を送付して行った.回答率は94.2%(721/765)であった.1 FTE(full time equivalent)放射線治療担当医当たりが治療する年間実患者数(=患者負荷)は248.2人であった.施設層別の同様の値は≧1 FTE放射線治療担当医を有するA施設層で212.9人,<1 FTEのB施設層で157人であった(B施設層では過大評価を避けるため,本計算ではFTE=1 として算出した.その施設の年間総患数と同一).A施設では全体の25%で,B施設の10%で300人以上(診療の質低下が懸念される改善警告値)を治療していた.1 FTE放射線治療担当技師当たりの年間総患数は125.5人であった.がん診療拠点病院では,全国平均より優れた機能を装備したlinacならびにCT simulatorを使用していた.地域的に 1 FTE放射線治療担当医当たりの年間患者総数は130.7~391.6人まで,また 1 FTE放射線治療担当技師当たりの年間患者数は87.3~258.6人までの顕著なバリエーションが観察された.1 FTE放射線治療担当医が年間300人以上(改善警告値)治療する高負荷施設(A施設層)と年間新規患者数が800人以上の大規模施設(計104施設)では,linac 1 台当たりの患者数が400人(改善警告値)を超過していた.
  • 池田 剛, 勝田 昭一, 大山 正哉, 荻野 尚
    2009 年 21 巻 3 号 p. 139-148
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】一般的にDRRは,物理ファントムで評価される.そのCT画像は,いろいろな誤差因子を含むために,治療計画装置の性能をカモフラージュすることが考えられる.治療計画装置のみの純粋な性能評価を行うためには,マトリクス上に任意のCT値を配置したCT画像(以下,デジタルファントム)が必要である.本論文では,デジタルファントムの開発について述べ,その有用性を議論する.【方法】デジタルファントムを利用して,CTportと治療計画装置を以下の項目で評価する.DRRの幾何学的精度評価:中心位置,照射野サイズ,歪み,X線線錐の広がり,ビーム軸,DRRの画質評価:コントラスト分解能.【結果】CTportと治療計画装置で作成されるDRRは,幾何学的にずれている部分が確認された.画質評価では,顕著な違いが見られた.【結論】デジタルファントムは,ファントムの作製精度や設置精度の影響を受けないため,DRRの幾何学的精度が正確に評価できる.CT撮影条件やファントム因子の影響を受けないので,装置固有のDRR画質評価ができる.最適な画像処理パラメータを評価することにも利用できる.
  • 土井 啓至, 上紺屋 憲彦, 高田 康弘, 冨士原 将之, 井上 裕之, 田ノ岡 征雄, 坪井 慶太, 志方 敏幸, 濱口 常男, 門林 宗 ...
    2009 年 21 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】ラットを用いた放射線性直腸粘膜障害の動物実験モデルを作成し,直腸炎の評価を行う.また,亜鉛化合物を主薬とした坐剤の製剤化と投与方法を確立する.【対象・方法】実験には 6 週齢ラットを用いた.ガストログラフィンを用いたX線透視を行い,放射線照射が非開腹倒立位で直腸に対して選択的に可能であることを確認した.ラットを麻酔下,無麻酔下で,直腸温度を測定し,坐剤の融点との適合性を確認した.陽性造影剤添加軟膏を直腸内に投与して,X線透視下で直腸内での軟膏の付着と拡散を確認した.放射線照射は照射野を長径2.5cmと設定し,10MeVの電子線による22Gy/frの 1 回照射を施行した.亜鉛製剤はポラプレジンクを坐剤として製剤し,照射当日から 7 日目まで投与した.下痢・下血などの臨床症状を経時的に経過観察した.照射後 7 日目に直腸内視鏡を行い,10日目で安楽死させて直腸を摘出した.直腸粘膜を内視鏡および肉眼的に観察することで,直腸粘膜の変化を評価した.【結果】倒立位では直腸以外の腸管は頭側に偏移しており,放射線照射がラット直腸に対して選択的に可能であると確認できた.ラット直腸温は麻酔により,34.9°Cに低下していた.陽性造影剤添加軟膏は注入直後,10分後,ともに直腸内に十分に停留することを確認できた.内視鏡による所見と摘出標本の所見は一致していた.臨床所見,内視鏡所見,標本所見とも,亜鉛製剤を投与されなかった群で重篤な障害の発現率が高く,亜鉛製剤投与群で軽症の傾向を認め,放射線性直腸粘膜障害に対する亜鉛製剤の有効性が示唆されたが,有意差は認めなかった.【考察・結論】本実験系が放射線性直腸粘膜障害の動物実験モデルとして有用であると確認できた.放射線性直腸炎に対する亜鉛製剤の有効性が示唆された.剤形は,薬剤の付着性から,坐剤より軟膏が適切と考えた.今後,投与方法や観察期間の検討を要する.
CASE REPORT
TECHNICAL NOTE
  • 清水 わか子, 内田 伸恵, 岸 和史, 熊野 智康
    2009 年 21 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    2000年に日本緩和医療学会が出版した『Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン』の改訂作業が2005年に呼びかけられ,当時,日本放射線腫瘍学会学会長であった埼玉医科大学放射線腫瘍科・土器屋卓志教授の許可を得て,今回の研究グループの核となるワーキンググループを立ち上げた.今回ガイドライン作成過程と作成された試案を提示したが,ガイドラインの作成は有痛性骨転移に対する放射線治療の有用性を明確にするには有用であると考えられた.しかし,緩和的放射線治療の領域で最もエビデンスの多い有痛性骨転移に対象を限定しても,ガイドラインの作成に関する作業量は多く,関連領域から参照可能なガイドラインの作成と改訂にはワーキンググループの常設が望ましいと考えられた.
  • 江上 和宏, 齊藤 泰紀, 伊藤 文隆, 服部 秀計, 小林 英敏
    2009 年 21 巻 3 号 p. 165-168
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】早期前立腺がんに対するI-125を用いた永久挿入治療においては脱落線源の紛失による環境汚染が問題となっている.本研究では,挿入後から一時管理区域病室退院までの間の脱落線源を確実に捕捉しうる方策を検討する.【方法】2006年 7 月から2007年12月までの期間で,密封小線源挿入療法を施行した121例(7718個)を対象とした.挿入直後から退院までの脱落線源の発見事例における発見場所ならびに発見時期を検討し,脱落の場所,時期を推定した.【結果】退院までに総計43個発見され,頻度は43/7718(0.56%)であった.挿入後手術室にて 4 個,一時管理区域病室では膀胱内留置カテーテル抜去前が 2 個,そして,膀胱内留置カテーテル抜去後,一時管理区域病室退院時のサーベイで32個発見された.膀胱鏡にて,膀胱内より取り除いたのは 5 個であった.別に,退院後自宅で脱落したとして持参したのが 5 個であった.【結語】脱落線源を紛失しないためには,管理病室への入退室者の注意深いモニターと慎重なサーベイが必要と考えられた.
  • 小宮山 貴史, 許山 剛, 中村 公二, 大西 洋, 荒屋 正幸, 佐野 尚樹
    2009 年 21 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】息止め下照射システムを照射室における患者意思表示装置(SOS switch system: SSS)として応用し,照射中リスクマネジメントの改善を試みた.【対象と方法】SSSの適応は,(1)シェルの使用,(2)喉頭摘出の既往,(3)突発性の嘔気・嘔吐の危険,(4)照射中の咳嗽の可能性,(5)痙攣の既往,(6)治療への強い不安とした.平成17年 5 月から平成18年10月,当院で放射線治療を施行したのべ426例中65例にSSSを使用した.男性32例,女性33例.年齢は26~88歳(中央値65歳).SSSを使用した理由(重複あり)は,シェル使用:57例,喉頭摘出の既往:2 例,咳嗽:6 例,痙攣:1 例,不安:3 例であった.また,別の患者群において頭部・頸部用シェルを使用した23名に,SSS使用についてアンケート調査を行った.【結果】SSSを使用しての照射は65例の,合計で1,120回であった.使用目的,使用方法については年齢に関係なく,ほぼすべての患者が平易に理解した.手元スイッチが押された回数は全11回であった.スイッチが押された理由がはっきりしたものは 4 回で,理由は嘔気,誤嚥,疼痛,咳嗽が各 1 回であった.これら 4 回については照射を中断,必要な処置を行った後,照射を再開できた.7 回(2 症例で,のべ 7 回)については押された理由がはっきりと分からず,脳転移による意識障害によるものと考えられた.咳嗽時にスイッチが押されなかったケースが 1 回あった.全身状態がやや不良な症例であり,咳嗽に対してスイッチ操作の対応が遅れたものと考えた.SSSを使用したことにより,新たにトラブルが発生したことはなかった.別の患者群に対するアンケートの結果,90%以上の患者が「SSSは有用」と回答した.【結語】息止め下照射システムをSSSとして応用した.多くの患者に簡便かつ明確な意思伝達手段を提供でき,トラブル伝達・認知手段として有用と考えられた.
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