日本企業の課題の一つに、企業の中にある有望なシーズが、組織内で潰され活用できていないという認識は長らく問題視されている。そのような課題を解決する一つの手法がカーブアウトである。本稿の目的は、カーブアウトの成功の要件を事例研究から考察する。本稿ではINCJの支援先で最初のイグジットの成功事例となった日本電子株式会社のNMR 事業部(JEOL RESONANCE)のカーブアウトとカーブインの事例を取り上げ、そこでINCJが果たした役割に着眼する。日本電子は2009年に赤字に陥り、その際に赤字事業部であったNMR事業をINCJに売却を試みた。INCJは1年にわたるデゥーデリジェンスを行い、NMR事業部に15億円を出資すること決定した。NMR事業部はJEOL RESONANCEという独立会社となり、INCJからの経営支援を受けながら再建を目指した。当初は両組織の文化の違いに戸惑ったものの、経営陣の刷新、研究開発への投資、オープンイノベーションの実施、営業の国際化などを次々に実行していった。その結果、JEOL RESONANCEは新製品開発を加速し、利益を上げられる体質に変化を遂げていった。これと並行して親会社である日本電子でも、社長のリーダーシップのもと、組織改革が進められ、組織の縦割りを壊し、全体最適をめざすYOKOGUSHI戦略を実行していった。こうして2013年11月、INCJは、業績が回復したJEOL RESONANCEを日本電子に30億円で売却し、イグジットを果たした。そしてINCJ設立後初めての出口戦略に成功した事例となった。2022年にJEOL RESONANCE は日本電子に吸収され消滅した。
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