ウサギ総頸動脈の二個所にクリップをかけて, 一時的に血流を遮断し, その間の Segment に生理的食塩水を注入し, 動脈内圧を下記のごとく統御した後, 血流を再開し, その動脈壁を光顕的, 電顕的, 免疫組織化学的, オートラジオグラフ的に研究した.
1.180±10mmHg (1分間, 10回) に内圧を統御した群: 術後1日の動脈壁では, 中膜筋細胞壊死, IgG, 線維素原, エバンス青の滲入, 沈着が認められた. 電顕的に, 内皮細胞間接合部の開大と, carbon の内皮下への滲入を見た. 3~5日においては, 中膜筋細胞の
3H-thymidine による標識率は著明に増加し, 以後徐々に減衰した. 内皮細胞や内膜細胞の標識率は, 3日後においては高かったが, 以後速やかに減衰した. 3日以後, 細胞性内膜肥厚が発生し, 同部にIgG, 線維素原, エバンス青がび漫性に沈着していた. さらに, 高脂肪食を負荷した群では, Oil red O 陽性物質や泡沫細胞も, 内, 中膜に見られた. 10日以降, 中膜に石灰沈着と肉芽腫様細胞増殖巣が認められ, 電顕的にこれらの細胞は, 線維芽細胞様細胞と modified smooth muscle cell であった.
2. 110±10mmHg (1分間, 10回) に内圧を統御した群: IgGや線維素原の壁内沈着はなく, エバンス青の滲入もごく軽度だった. 中膜筋細胞壊死はなく, ごく少数の内膜細胞がまれに見られた. 壁細胞の
3H-thymidine による標識率は上昇しなかった.
以上の成績から, 機械的内圧上昇により, 中膜筋細胞壊死や内皮細胞の透過性亢進 (血漿浸潤) が起こり, その結果, 内膜肥厚が生じたと考えられる. 中膜筋細胞壊死後, 中膜再生にあずかる細胞は中膜筋細胞であった.
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