支援工学理学療法学会誌
Online ISSN : 2436-6951
2 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 吉川 大志, 島津 尚子, 藤田 峰子, 隆島 研吾
    原稿種別: 原著
    2022 年 2 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】免荷式歩行器を用いた歩行練習が、脳卒中片麻痺者の歩行速度に与える即時的効果について検討した。【方法】回復期脳卒中片麻痺者25名を対象とした。通常の歩行練習条件(以下、通常歩行)、非免荷歩行練習条件(以下、非免荷歩行)、免荷歩行練習条件(以下、免荷歩行)を各1日ランダムに10分間ずつ実施した。歩行評価は各歩行練習前後で実施した。評価項目は快適歩行速度、歩幅、Stride長、歩行率、両脚・単脚支持期割合、歩行対称性とした。各評価項目を介入前後と条件間で比較した。【結果】快適歩行速度、非麻痺側歩幅、Stride長に交互作用を認め、免荷歩行後に有意に増加した。また麻痺側立脚後期における両脚支持期割合、両脚支持時間対称性にも交互作用を認め、通常歩行と非免荷歩行後に有意に増加した。【結論】脳卒中片麻痺者に対する免荷式歩行器を用いた介入が、対象者の歩行速度およびその関連指標を即時的に改善させることが示唆された。

  • 太田 啓介, 森田 智之, 渡辺 偉二, 横山 修, 松田 健太
    原稿種別: 原著
    2022 年 2 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は、車椅子利用者における身体活動量の計測方法の検証および活動量と移動距離との関係性を検討することとした。【方法】対象は日常の移動手段として車椅子を利用している障害者支援施設入所中の脊髄損傷者5名と在宅生活中の脊髄損傷者5名とした。計測にはサイクルメーター、スマートウォッチ、活動量計を用いた。まず施設入所者の車椅子移動距離、車椅子駆動時間について計測方法の検証を行った。その後、施設入所者と在宅生活者の活動量と移動距離の関係性を各々検証した。【結果】車椅子の左右それぞれの駆動輪の移動距離、駆動時間に有意な差は認められなかった。施設入所者、在宅生活者ともに移動距離と活動量に有意な相関が認められた。【結論】車椅子駆動時の左右駆動輪の移動距離の計測値に有意差はなく片側駆動輪のみにおいても計測が有効であると考えられた。車椅子駆動が車椅子利用者において活動性の向上をもたらす可能性があることが示唆された。

  • 宮原 拓也, 高島 恵
    原稿種別: 原著
    2022 年 2 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    臨床実習での下肢装具の体験不足等により、下肢装具に関する自己効力感が十分に培われていない可能性がある。本研究では最終学年の理学療法学科学生を対象に下肢装具に関する自己効力感を調査し、実施内容や体験機会による相違を検討し、下肢装具教育の課題を明らかにすることを目的とした。対象は3年制養成校最終学年41名とし、調査票を用いて年齢、性別、臨床実習で関わった主な病棟・施設、下肢装具に関する自己効力感、体験機会を収集した。その結果、体験機会の相違による比較では、自己効力感は臨床実習で体験、学内のみで体験、体験なしの順に高値を示した。実施内容の相違による比較では、使用、選定、調節の順に高値を示した。また、実施内容細項目間の比較では、長下肢装具やゲイトソリューションに関する内容で低値を示した。学内から体験機会を創出し、実施内容による差を是正することが必要と考えられる。

  • 金子 達哉
    原稿種別: 原著
    2022 年 2 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】装具作製後のフォローアップ実態と他施設との連携実態を明らかにすること、装具手帳の必要性を検討することである。

    【方法】36施設を対象とした質問紙調査を実施した。質問は1)所属施設の種類、2)過去5年間での下肢装具処方歴、3)装具作製後のフォローアップ実態、4)装具作製後の他施設との連携実態、5)装具手帳の活用による装具難民減少の可能性である。なお、5)のみは各施設の複数理学療法士に回答を求めた。

    【結果】解析対象は15施設であった。装具作製後のフォローアップ実態は保守点検における不十分は94%、装具不具合時の問い合わせ先における不十分は87%であった。他施設との連携実態は不十分が100%、装具手帳の活用による装具難民減少の可能性は95人中83人(87.3%)が減ると思うと回答した。

    【結論】装具難民を減らすためには装具手帳の導入が望ましい可能性がある。

症例報告
  • 栗田 慎也, 藤田 里美, 小磯 寛, 宮崎 亜希子, 中山 玄康
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 2 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    病院内で車椅子は広く使用されているが、その多くの車椅子の耐荷重は100 kgまでであり、体重がそれ以上の症例には使用できない。

    今回、両下肢筋力低下が著明で基本動作能力が全介助状態の高度肥満症例を担当したが、病院内の備品で使用可能な車椅子がなく、近隣の福祉用具専門相談員を通じて耐荷重135 kgかつシート幅45 cmのティルト・リクライニング型車椅子を借りることができた。また、症例の移乗方法は患者の安全な離床と職員の腰痛予防の観点からスライディングボードを使用して行った。症例の車椅子離床を開始し、座位保持能力改善やベッドサイドでは受けられなかった検査・治療が行えた。

    さらに、本症例を通じて、主治医や看護師などが病院内に重度肥満症例に対応可能な車椅子がない現状を知り、購入に至った。院内・院外の多職種で共有・検討することで、症例に適した車椅子の借用や院内備品の購入につながった。

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