TEAと質的探究
Online ISSN : 2758-8335
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  • Z園保育士5名の語りからみる保育実践
    渡邉 真帆
    2026 年4 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル フリー
    近年,保護者の就労状況等の理由から,保育施設は長時間の開所を求められている。クラスでの活動終了後,帰宅する子どもと引き続き園で過ごす子どもがいる降園の時間帯は,保育者にとって日中の保育とは異なる時間の流れが経験されており,この時間帯特有のダイナミック・プロセスがあると推測される。そこで,本研究の目的は,降園の時間帯の流れを保育者がどのように捉えているのかを明らかにすることである。具体的には,同園勤務の立場が異なる保育士5名を対象に降園の時間帯の流れについてインタビューを実施,複線径路等至性アプローチを用いて分析した。結果,〈第1期:「帰る」モードへ〉〈第2期:降園の峠〉〈第3期:1日の終わりへ〉の3期を経て等至点である「延長保育事業終了時刻までに園児全員なんとか降園する」にたどり着くと明らかになった。特に〈第2期:降園の峠〉では,保育者の退勤や同時間帯に重なるお迎えという複数種類の慌ただしさの中で,降園する子どもの援助から保護者対応,引き続き園で過ごす子どもの保育の続行,その他雑務などの業務を,暗黙に役割分担することで等至点へ向かっている様相が捉えられた。等至点に示される“なんとか”を取り除き,降園の時間帯における保育の流れをより負担のないものにするためには,構造上の質及び実施運営の質という視点からの改善が求められる。
  • 関係的自己の発達径路に着目して
    鈴木 ちひろ
    2026 年4 巻1 号 p. 13-28
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,障害児の母親が,信頼に基づくケアのネットワークにつながり,政治的主体として「世界を社会化する」活動に向かうプロセスと,その価値変容を明らかにするために,ケアの倫理における関係的自己の発達径路に着目し,複線径路等至性アプローチ(TEA)を用いて分析し,検討した。等至点を「信頼に基づくケアのネットワークにつながる」とし,知的障害児の母親5名に歴史的構造化ご招待をし,インタビューを行った。本論文では,そのうちの1名の協力者の語りを中心に,TEM図とTLMGによる分析を行った。その結果,【子が障害児としてではなく個人として認められている】,【子の自立に対する安心感】,【コミュニティーに対する信頼感】の3つの記号が,ケアのネットワークへのつながりを促進したことが分かった。またそれらの発生過程において,【「普通」は子を阻害する壁】という価値が,【「特別」はつながりへの入り口】へと変わることが転機となった。加えて,【裾野を広げる】,【要望を伝えることで変わる】,【一緒に活動することで理解してもらえる】という3つの記号の出現により,【自分が体制を作ることで自分の子ども以外の障害のある子どもも社会に受け入れられる】という価値が生成し,政治的主体として「世界を社会化する」活動に向かう過程を描出した。これらを下支えするものとして,既存の役割への馴致に抗う「不逞不遜な大胆さ」の発揮が重要であることが示された。
  • 今井 彩
    2026 年4 巻1 号 p. 29-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,複線径路等至性アプローチ(TEA)を用いて軽度知的障害のある生徒4名の進路決定プロセスを可視化し,キャリア形成支援の在り方を検討した。複線径路等至性モデリング(TEM)では,現場実習を通して生徒が自分への理解を深め,社会との関わりや役割意識を育みながら進路を選択していくプロセスが描かれた。さらに,TEMで描かれた生徒4名のSGとSDをKJ法に準じてカテゴリー化した。その結果,卒業後の進路決定に向かう意思決定や行動に対して働いた力として,「自分を知る体験」,「応援してくれる人の存在」,「卒業後の生活へのイメージ」,「同調と孤立への不安」の4つの視点が抽出された。この4つの視点を軸に,キャリア形成支援においては,「生徒の『好き』や『楽しい』を出発点としたキャリア形成支援」,「作業学習と現場実習の往還による学びの深化」,「実習先での人間関係や役割意識の構築による社会参加の促進」,「多様なロールモデルの提示による進路選択の拡大」が重要であることが示唆された。今後は,卒業後のキャリアパスの追跡を通じて,持続可能なキャリア形成支援を構築することが求められる。
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