本研究は,障害児の母親が,信頼に基づくケアのネットワークにつながり,政治的主体として「世界を社会化する」活動に向かうプロセスと,その価値変容を明らかにするために,ケアの倫理における関係的自己の発達径路に着目し,複線径路等至性アプローチ(TEA)を用いて分析し,検討した。等至点を「信頼に基づくケアのネットワークにつながる」とし,知的障害児の母親5名に歴史的構造化ご招待をし,インタビューを行った。本論文では,そのうちの1名の協力者の語りを中心に,TEM図とTLMGによる分析を行った。その結果,【子が障害児としてではなく個人として認められている】,【子の自立に対する安心感】,【コミュニティーに対する信頼感】の3つの記号が,ケアのネットワークへのつながりを促進したことが分かった。またそれらの発生過程において,【「普通」は子を阻害する壁】という価値が,【「特別」はつながりへの入り口】へと変わることが転機となった。加えて,【裾野を広げる】,【要望を伝えることで変わる】,【一緒に活動することで理解してもらえる】という3つの記号の出現により,【自分が体制を作ることで自分の子ども以外の障害のある子どもも社会に受け入れられる】という価値が生成し,政治的主体として「世界を社会化する」活動に向かう過程を描出した。これらを下支えするものとして,既存の役割への馴致に抗う「不逞不遜な大胆さ」の発揮が重要であることが示された。
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