現代監査
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2019 巻, 29 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小西 範幸
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 12-21
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    企業のサステナビリティは,長期的に価値を生み出す企業の能力を維持または強化する企業活動に起因するため,サステナビリティ情報には,ビジネスリスクをコントロールし,中長期的には財務諸表の数値に影響を与えることが求められる。しかし,そのサステナビリティ情報は,財務報告の中に有効に取り込めているとは言い難い。統合報告では,サステナビリティ情報は,会計メトリックなどを活用して財務諸表に関連づけて提供できるため,保証業務の対象となり得る。

    本稿では,統合報告が保証業務に与える影響について検討する。まず,統合報告の会計思考を体現したリスクマップによる重要性の評価を用いて,統合報告に係わる保証業務の課題を合理的保証と限定的保証に分けて検討した。次に,統合報告の進展は,経営者,会計監査人,監査役等,内部監査人の間でのリスク情報の共有化を図り,その結果,四者間の連携強化が保証業務を拡充させて当該課題の軽減を導くことに言及した。

  • ─金融商品会計を中心として
    吉田 康英
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 22-31
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    近年の会計基準における将来予測情報の拡大化は,本質的に不確実な会計上の見積り項目の増加を通じて,経営者の主観の介入度合を高めることになる。経営者の判断の結果として財務諸表本体に計上される会計上の見積値の適正性は,見積りに用いる評価モデルやインプットの多様性から一定の幅が存在する。したがって,当該見積値の不確実性の度合を理解するためには,これまで以上に補足・補完情報の開示が必要であるが,その開示場所は財務諸表外の場合も想定されるため,保証業務の対象範囲や保証水準等との関係が問題となる。この状況下での保証業務の課題は,経営者の判断の結果の後追いに留まらない監査人の職業的懐疑心の適用が挙げられるが,監査人による個別的な対応だけでは不十分である。包括的な対応として,保証業務も意識した会計基準の開発や財務報告の全体を通じた開示のあり方の検討等の保証業務の枠組み外での取り組みも併せて求められる。

  • ─監査上の主要な検討事項(KAM)の基準化の分析─
    小松 義明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 32-41
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    世界的な経済危機以降,国際的な監査規範の設定主体,特に欧州委員会や国際監査・保証基準審議会(IAASB)は,監査報告の改革を加速した。また,イギリスやオランダは監査報告の改革にいち早く着手し,フランス,ドイツおよび米国,そして日本においても改革が進行している。本稿は,各国の監査報告制度の改革の動向を示し,監査報告制度の新しい構造の形成を明らかにするものである。検討の対象となるのは,監査上の主要な検討事項(KAM)の基準化の取り組みである。その前提には,監査報告書におけるKAMの情報が資本市場にとって有意味であり,その結果,監査の品質が高められることにある。考察の結果,各国がISA701を模範とし,EU加盟国は関係する規則を取り入れ,監査報告書の改革を進めている状況が明らかになり,全体として,各国の監査報告書の形式と内容上のきわめて密接な関連性をみることができる。

  • ─KAM研究における新たな研究機会の提示─
    佐久間 義浩
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 42-54
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    本稿は,各国ごとに行われたKAMの開示状況に関する報告書の調査をもとに,KAMの開示実態を示すとともに,KAMを主題とした先行研究のサーベイによって得られた知見を明らかにすることを目的とする。あわせてKAMに関する新たな研究機会を提示する。

    その結果,他国では,KAM導入に関する一定の取り組みが行われているものの,開示内容は国ごとの特色が表れていることが明らかになった。さらに,先行研究のサーベイの結果,実験研究では,KAM開示による効果を確認できた。しかし,アーカイバルデータに基づく研究では,一部,KAMの開示による影響が示されたものの,両者の関係を支持しない研究もあった。あわせて本稿では,KAMに関するデータの今後の継続的なフォロー,各国間の特色の要因分析,日本における独自の検証の必要性を提示した。

  • 千代田 義央
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 55-64
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    2018年7月5日の監査基準の改訂に伴い,「監査上の主要な検討事項」(以下,「KAM」)が我が国で導入されるが,これに先駆け,国際監査基準の適用を受ける香港証取に上場する日本企業において,KAMを含む長文化された監査報告書を日本の監査法人として,2017年3月期に続き,2018年3月期については2018年5月23日に発行した。

    KAMを記載する初年度及び2年目の実務を通じて,下記のような課題があった。

    ・監査報告書やKAMの作成過程が複雑。

    ・実効性のある統治責任者とのコミュニケーションをどのように確保するのか。

    ・財務諸表利用者にとっての監査報告書のわかりやすさとは何か。

    ・KAMと財務諸表の整合性をどのように確保するのか。

    ・2年目以降におけるKAMの進化

    上記についての苦労や課題の整理を,今後KAMを作成する監査人やKAM決定に関与する統治責任者を読者と想定した上で取り纏めた。

  • 異島 須賀子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 65-76
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本監査研究学会第41回西日本部会の統一論題「内部統制監査制度の功罪─日本公認会計士協会近畿会監査問題特別委員会提言集から─」の報告にもとづくものであり,わが国の内部統制監査制度の功罪および内部統制監査制度への提言を示すことを目的としたものである。

    2009年3月決算から導入されたわが国の内部統制報告制度について,制度設定者である金融庁だけでなく制度実施者である公認会計士も制度の見直しの必要性を示しているが,制度を見直し,よりよいものにするためには,当該制度の運用実態を明らかにする必要がある。

    本稿では,内部統制上の重要な問題を開示した企業の状況分析から論を展開し,内部統制上の重要な問題にともなう会計不正を未然に防ぎ,日本のディスクロージャー制度の信頼性を保つための提言を試みている。

  • 井上 善弘
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 77-86
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    内部統制報告制度の運用状況に対する評価として,経営者による全社的な内部統制の評価とそれに対する監査人の検討が形式的なものとなっており,実効性に欠けているとの指摘がある。全社的な内部統制の評価は,経営者による財務報告に係る内部統制の評価において,その成否の鍵を握る重要な位置を占めている。それゆえ,全社的な内部統制の評価に対する監査人の検討は,内部統制監査において重要な位置を占めている。内部統制監査の実効性を確保するためには,全社的な内部統制の評価に対する監査人の検討を実効性あるものとする必要がある。財務諸表監査のリスク評価手続において監査人に理解が求められている内部統制と経営者による評価の対象となる全社的な内部統制は,肝要な部分において重なりあっている。したがって,リスク評価手続の過程で入手した監査証拠を,全社的な内部統制の評価に対する検討において積極的に活用することが望まれる。

  • 佐久間 義浩
    原稿種別: データペーパー
    2019 年 2019 巻 29 号 p. 89-117
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー
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