今回初めて,野生のタンチョウをロケットネットを用いて捕獲し,地上テレメトリー用発信器を含めた標識の装着を行った.捕獲は北海道東部の鶴居村下雪裡の採草地(鶴見台給餌場)において,若齢非繁殖個体を対象に,2001年7月16日に実施した.
ロケット点火後,0.06秒で網前端は最高位置まで上がり,点火約2秒後にツルを地上へ押さえ込んだ.今回は1回の発射で1歳鳥のメス2羽とオス3羽の計5羽を捕獲し,各部位の測定や体重計量のほか,健康診断と性判定用の採血をした.さらに,右脚脛部に環境省メタルリングを,左脚にプラスチックカラーリング(黄色)とそれに付随した発信器を装着して放鳥した.
捕獲個体のふ蹠と頭部に関連した計測部位は明らかにオスで長く,1歳1~3ヶ月齢で性的二型が明確であり,この形態差はDNAによる性判定と完全に一致した.
発信器は,本体を薄いプラスチックで覆ってエポキシ樹脂で固定し,これを鉄線でカラーリングに縫いつけ,鉄線が6ヶ月程度で劣化して,発信器が自然落下するよう工夫した.しかし,嘴による破壊が予想以上に強力で,早いものは1日,長いものでも36日で脱落した.今後,地上テレメトリー用発信器の装着については,装着部位の改変とその効果,装着強度,着脱技術の開発,等の改良を加える必要がある.
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