小櫃川河口干潟周辺において1998年から2003年までの6年間,それまで主に行っていた春・秋のシギ・チドリ類を対象とした標識調査に加え,周年を通して小鳥類を対象とした調査も併せて行った.6年間の調査日数は,のべ213日で,調査環境はシギ・チドリ類を対象とした干潟と,小鳥類を対象としたヨシ原と松林に大別される.調査環境と対象鳥種に応じて網の種類と張り方を変えて,また時期や調査の主な対象に応じて,再生装置を用いた鳴き声による誘引を行った.
新放鳥数は91種5,544羽であった(表2).オオジュリンとアオジ,ノゴマは秋の渡りの時期に多くが捕獲されたが,春にもオオジュリンはヨシ原で,アオジとノゴマは松林で少数が捕獲された.セッカは当地で繁殖しており周年捕獲できたが,1998年は特に捕獲数が多かった.オオヨシキリは当地では数番が繁殖するのみであるが,9月の渡りの時期には多く捕獲できた.シギ・チドリ類ではハマシギとキョウジョシギは春に捕獲数が多く,トウネンとソリハシシギは秋の捕獲数が多かった.キアシシギは両方の季節で多く捕獲できた.稀な種としては,シロハラミズナギドリ
Pterodroma hypoleuca,オジロトウネン
Calidris temminckii,ヨタカ
Caprimulgus indicus,マキノセンニュウ
Locustella lanceolata,オオセッカ
Locustella pryeri,コホオアカ
Emberiza pusillaが挙げられる.
1998年から2003年に9種67例(小櫃放鳥で他所回収31例,他所放鳥で小櫃川回収36例)の回収記録が得られた(表3).特記すべきものとして,2002年9月5日に小櫃川で放鳥されたハマシギがほぼ1か月後の10月9日に船橋市の海岸で再捕獲された例,繁殖コロニーで雛で足環を付けられたコアジサシが1~3か月後に小櫃川で回収された例があり,前者はハマシギが秋の渡来当初には北上して移動することがあること,後者はコアジサシの幼鳥にとって小櫃川河口域が重要な渡去前の集結地であることを示す.
抄録全体を表示