日本鳥類標識協会誌
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最新号
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一般論文
  • 早川 雅晴
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 1-11
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

    地面に直接かもしくは皿状の巣を造って産卵する鳥類は,レッドデータリストで絶滅危惧に指定されている割合が高いが,この原因の1つに営巣に適した砂浜等の自然の裸地環境の減少が考えられる.地上の裸地環境が減少する一方,屋上の裸地環境で営巣する種が増えてきている.そこでどのような種がいつから屋上で営巣するようになったのかについて,チドリ目に絞って文献調査を行った結果,36種を記録した.屋上営巣する種が増えた時期は,国内・国外共に概ね鉄筋コンクリート製の建物が増加した時期と一致していた.営巣可能な屋上環境があれば鳥類は利用することが伺えるため,今後は屋上を営巣場所として積極的に誘致していくことで,絶滅危惧種の保護に役立つことが期待できる.一方で,屋上営巣している大型のカモメ類では,人の生活との間に軋轢を生じている例もあるので,営巣を望まない種が営巣する場合には,事前に適正な周辺環境の整備も必要と考えられる.

  • 佐々木 未悠, 鈴木 遥菜, 高橋 雅雄, 蛯名 純一, 東 信行
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 12-20
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    親鳥の繁殖地への帰還率と雛の出生地への帰還率は,その種の繁殖生態及び個体群動態を理解する上で重要な情報である.青森県三沢市の小川原湖湖畔の疎林において,2015–2018年にニュウナイスズメPasser cinnamomeusの親鳥計19羽と巣内雛計220羽を標識し,2019年までの帰還記録を基に帰還率を算出した.親鳥の帰還率は52.0%(n=13/25)で,全ての帰還個体が繁殖した.巣立ち雛では,出生1年後の帰還率は5.9%(n=13/220)と他の渡り性スズメ目よりもやや低く,帰還個体は雄が多い傾向があった.帰還営巣率は,出生1年後が0.5%(n=1/220)と最も低く,出生2年後が2.5%(n=5/202)と最も高かった.すなわち,本種の1歳個体は配偶者および営巣場所をめぐる競争力に劣っている可能性がある.

  • 今野 怜, 今野 美和
    原稿種別: 一般論文
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 21-35
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    マミチャジナイTurdus obscurus 29個体,シロハラT. pallidus 39個体,アカハラT. chrysolaus 79個体,アカコッコT. celaenops 16個体の翼式の要素(初列風切最長羽,p9の位置,初列風切の間隙,外弁欠刻)を比較した.4種の各要素は有意に異なっており,渡る距離が長い種ほど翼の形状が尖っていた.初列風切の間隙の見た目はマミチャジナイ・アカコッコとシロハラ・アカハラに大別された.アカコッコは間隙を形成する羽毛が独特で外弁欠刻はより近位にあると推察されたこと,マミチャジナイの外弁欠刻はより遠位にあったこととあわせ,翼式は4種の識別に有効であった.

観察報告
  • 桐原 佳介, 土居 克夫
    原稿種別: 観察報告
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 36-41
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

    2018年9月16日に,鳥取県米子市彦名新田米子水鳥公園にて,スゲヨシキリAcrocephalus schoenobaenus 1羽が捕獲された.当該個体は,標識・計測・撮影を行った後,性不明・幼鳥として放鳥した.本記録は,本種の国内3例目の記録であり,標識記録としては国内2例目である.

  • 原田 俊司, 白石 利郎
    原稿種別: 観察報告
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 42-52
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

    日本鳥類目録改定第7版ではノゴマの越冬地は奄美諸島と琉球諸島とされているが,神奈川県で冬期にノゴマLuscinia calliopeを3個体標識放鳥した.山階鳥類研究所より許可を得て,1973年から2015年までの秋の渡り時期と冬期と春の渡り時期の全国での再捕獲を含めたノゴマの標識放鳥記録を入手し,神奈川県だけでなく日本での渡りと越冬状況について調べた.これらの記録は,ノゴマの定期的な越冬地と推定されるのは既知の琉球諸島と奄美諸島だけでなく,奄美諸島の北に位置するトカラ列島と鹿児島県の本土部であることを示していた.神奈川県では渡りの時期を含めても標識放鳥された個体は少なく越冬個体の割合が高いことから,少数が越冬あるいは稀に越冬している可能性が示唆された.更に,静岡県,長野県,兵庫県で少数ではあるが越冬期と推定される時期に捕獲記録があった.積雪が少なく比較的暖かな地域では,越冬期に多くの標識調査をおこなえば更に多くの越冬記録が得られるであろう.

放鳥・資料報告
  • 福田 道雄
    原稿種別: 資料報告
    2020 年 32 巻 1_2 号 p. 53-64
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

    1975年から2018年(1996年と1997年は休止)の42年間に,関東南部の6か所のコロニーで,8,054個体のカワウを標識放鳥した.2019年6月までに,標識コロニーの観察で死亡を確認した50個体を含む430個体が回収された.「駆除類」(駆除と狩猟)回収は,放鳥時期の前期(1975~1995)に4個体,後期(1998~2018)に多くが0歳と1歳の81個体であった.「網絡み」(混獲など)回収は前期になく,後期に多くが0歳の25個体であった.後期の駆除類回収個体の平均生存期間が駆除類以外の回収個体よりも長いのは,駆除類以外の個体に0歳時回収が多いためである.また,コロニー内での回収個体を除いた比較で,出生コロニーから回収地までの平均移動距離が前期よりも後期で長いのは,後期にコロニーや塒が各地に多数形成されたためである.今回の回収記録には,調査地域の生息状況が大きく影響していて,さらにカワウの年齢差を示す事例がみられた.

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