行動経済学
Online ISSN : 2185-3568
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11 巻
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論文
  • 盛本 晶子
    2018 年11 巻 p. 1-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,人々がオンラインゲーム内コンテンツの購入もしくはオンラインゲームをプレイすることに対して料金を支払う,いわゆる「課金」行動について時間割引の観点から検証することである.東京国際大学の有志学生に対してアンケート調査を行い入手したデータを分析した結果,(1)時間選好率は課金行動に影響を与えないこと,(2)現在バイアスの程度が強いほど課金する傾向があること,(3)ナイーブの度合いが強いほど課金する傾向があること,の3点が明らかになった.

  • 楠田 康之
    2018 年11 巻 p. 14-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,時間割引をともなう消費者行動に対応するオムニチャネル戦略を考察することである.ネットで財を販売する企業が実店舗を出店し,消費者に財の情報を与えることで販売拡大につなげたい場合,消費者の将来に受け取る財に対する時間割引率は重要なものとなる.本稿では,実店舗とネットの販売チャネルに直面した消費者の行動と企業の最適化行動を分析し,時間割引率が十分に大きければオムニチャネル戦略が無効になる場合がありうることを示した.

  • 郷 香野子
    2018 年11 巻 p. 24-39
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,革新的な製品の採用という不確実な状況に事例ベース意思決定理論(CBDT)を適用した.研究1では,「グーグルグラス」を対象新製品とした消費者実験から,革新的な製品の採用では多属性意思決定(MAD)モデルよりも事例ベース意思決定(CBDT)モデルの方がモデルのあてはまりが良好となることを明らかにした.さらに,新製品の採用では,消費者の外部からの情報による学習を考慮する必要があることから,研究2では,最も初期の学習過程である,新製品のポジションを得る学習状況にCBDTを拡張させた.新製品のポジション情報を利用してCBDTで参照する事例を制約するという仮説を設定し,革新度が高い/低いとポジショニングする場合の差異についても検討した.「グーグルグラス」に対して革新度の異なる製品カテゴリ・ラベル(HMD,スマートフォン)を提示する消費者実験を行った結果から,新製品を革新度が高いとポジショニングした場合(HMD)にのみ,この情報から学習してCBDTで参照する事例を決めるとわかった.

  • 大久保 信一
    2018 年11 巻 p. 40-53
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/16
    ジャーナル フリー

    本論では,Webアンケート調査にて,退職給付による人材の選別の効果及び非正規雇用者への適用の可能性を検証し,次の2つの結論を得た.

    第1に,現在の職場での退職給付による,長い期間1つの会社で働く意志があり,時間選好率の低い人材を選別する効果は首肯された.ただし,非正規雇用者における人材の選別の効果があるとはいい切れない.第2に,退職給付は,転職を考える者の中で長い期間1つの会社で働く意志があり,時間選好率の低い人材の選別に寄与するといえる.これは非正規雇用者での選別においても効果を持つ可能性がある.

  • 久米 功一, 鶴 光太郎, 佐野 晋平, 安井 健悟
    2018 年11 巻 p. 54-74
    発行日: 2018/11/29
    公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    本稿では,経済産業研究所が実施したアンケート調査の結果を用いて,増税の是非と社会保障の縮小・拡大という選択に対して,信頼や公共心などの個人の意識がどのような影響を与えるかを分析した.特に,増税せずに社会保障の拡大を求める人々の特徴をみると,税負担と社会保障増減の整合性を取るような財政中立的選択を支持する人々に比べ,政府・他人への信頼や公共心が低い一方,政府への依存が強く,市場経済に懐疑的であった.また,教育水準,時間当たりの所得,相対所得が低かった.これらの結果は,将来に向けて財政・社会保障の持続可能性を確保していく上で,政府・他人に対する信頼や公共心を醸成していくことが重要であることを示唆している.

  • 山村 英司
    2019 年11 巻 p. 75-87
    発行日: 2019/01/22
    公開日: 2019/01/19
    ジャーナル フリー

    所得の不平等は古くから経済問題で,不平等を小さくするため所得分配政策は適切にと取られるべきであると認識されている.2010年代に入り近年では国内の所得の不平等が原因となって,反グローバル主義が台頭し貿易自由化を推進してきた米国などが閉鎖経済を志向する政策を取るようになった.このような現実を反映し,21世紀に入り経済学において不平等や所得再分配の問題を考察する研究が数多くなされている.とりわけ人々の心理面を考慮に入れた行動経済学において,先端的手法により分析が進められ重要な知見が蓄積されている.本稿では古くも新しい不平等の問題を,経済学はどのように分析してきたかを振り返る.そして,行動経済学に残された今後の課題に触れる.

  • 髙橋 秀徳
    2019 年11 巻 p. 88-95
    発行日: 2019/01/22
    公開日: 2019/01/19
    ジャーナル フリー

    本稿は新規株式公開(IPO)の価格形成に関する理論及び実証研究のレビューを行う.IPOパズルについては長い研究の歴史があるが,絶えず新たな研究が発表されている.近年の研究では,テクノロジーの発展に伴い新しい種類のデータや分析手法を利用することで,IPOパズルの解明が進んでいる.本稿では,この分野で特に行動ファイナンスが果たした役割に焦点を当て,IPO研究の過去と未来を俯瞰する.

  • 下村 研一, 大和 毅彦
    2019 年11 巻 p. 96-109
    発行日: 2019/02/06
    公開日: 2019/01/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,市場参加者の出身民族の相違が,市場メカニズムのパフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを吟味するために,ケニアの主要民族であるルオ人,キクユ人,そしてカレンジン人を対象として,相対取引実験を実施した.保守的で慎重な性格であるとされるカレンジン人が参加した取引では,ルオ人やキクユ人だけが参加する取引と異なり,取引価格と保有量は公平な均衡へ収束した.民族の違いは市場結果に多大な影響を与える可能性があるが,対面で取引を行う異民族間の相対取引でも,所得や厚生の不平等といった大きな格差が生じるとは限らないことを観察した.

  • 佐々木 周作, 大竹 文雄
    2019 年11 巻 p. 110-120
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,これまでに,医療・健康分野でどのような行動経済学研究の成果が蓄積されてきたかを整理する.本分野の研究は,患者を対象に,以下二つの分類で進められてきた.一つは,患者の意思決定上の行動経済学的な特性が積極的な医療・健康行動を取りやすくしたり,逆に,阻害したりしていることを明らかにする実証・実験研究である.具体的には,リスク回避的な人ほど積極的な医療・健康行動を取りやすいこと,一方で,時間割引率の大きい人・現在バイアスの強い人ほど取りにくいことがさまざまな医療・健康分野で観察されている.もう一つは,患者の行動経済学的な特性を逆に利用して,積極的な医療・健康行動を促進しようとする,ナッジの介入研究であり,実際に,ナッジが患者の行動変容を促すことが,多くの研究で報告されている.さらに,近年の研究動向として,医療者を対象にした行動経済学研究を紹介するとともに,長期的かつ安定的に効果を発揮するナッジの開発の必要性について議論する.

  • 岡田 克彦, 羽室 行信
    2019 年11 巻 p. 121-131
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿では株価の予想可能性をクロスセクション(cross section)の予測に限定し,新たに報告されるファクターが近年急増している事実を紹介する.クロスセクションの予測ファクターの数は年々増加の一途をたどっているが,その整理は未だされていない.これらは真のリスクファクターの一断面であるかもしれないが,次元の呪いにより同じファクターの別断面なのか,独立したファクターなのかがわからない.そこで,近年では機械学習の方法論を援用して変数選択しようという取り組みが行われている.AIの金融応用におけるもう一つの方向性は,これまで活用されていないデータを,近年の計算機能力の進化を活用してすすめることにある.本稿では,その一例として取引関係に基づく株価の予測可能性について紹介した.

  • 依田 高典, 石原 卓典
    2019 年11 巻 p. 132-142
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    金銭的インセンティブとナッジがどのような人間の行動変容をもたらすのか,行動経済学的なエビデンスの蓄積が進んでいる.本稿では,フィールド実験を通じた健康増進の先行研究の結果を概観し,京都府けいはんな学研都市で行った著者らの研究結果も紹介する.

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