行動経済学
Online ISSN : 2185-3568
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12 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
論文
  • 筒井 義郎
    2019 年12 巻 p. 1-14
    発行日: 2019/01/18
    公開日: 2019/01/19
    ジャーナル フリー

    本稿は,結婚が幸福度に及ぼす影響に関連する研究をサーベイし,以下のような結果を報告する.結婚している人はしていない人より幸福である.結婚と幸福の因果関係については,両方向の関係が確認されている.一般に幸福感にはベースラインがあり,結婚というライフイベントについても,いったん上がった幸福感は速やかに下がっていくことが確認されている.しかし,順応が完全であるかどうかについては論争があり,決着していない.なぜ人は結婚するのか,どのようなカップルが結婚し幸せになるのかについて,Becker (1973) は家庭内生産というモデルを提示して,家庭内分業が効率的であり,それでも多くの特質については似たもの夫婦が効率的であることを示した.後者は選択配偶仮説として,心理学や社会学の分野で精力的に研究されており,価値観や性格が似たものが結婚し,幸福であるという結果を報告している.

  • 川越 敏司
    2019 年12 巻 p. 15-25
    発行日: 2019/01/18
    公開日: 2019/01/19
    ジャーナル フリー

    実験経済学においては被験者の選好統制を行うために報酬を支払うが,これまで使用されてきた様々な報酬支払法のどれにも問題があり,これらの問題を回避するには1回限りの実験を行う必要があることを提案する.

  • 八木 匡, 瓜生原 葉子
    2019 年12 巻 p. 26-36
    発行日: 2019/02/06
    公開日: 2019/01/31
    ジャーナル フリー

    社会にとって望ましい行動を人々が常に行うわけではない.しかしながら,個人の選択と行動を社会的観点から変化させることは,個人の主体的意思決定を尊重するという立場からは,多くの人々が妥当性を認める問題に対して適用されるべきであり,その方法についても慎重な配慮がなされる必要がある.本章では,医療および健康行動における行動変容について議論を整理し,行動変容の基礎理論,社会的行動変容の神経科学的根拠を紹介する.最後に、臓器提供意思表示の事例を用いて,行動変容を可能にする戦略デザインについて議論を行う.

  • 竹村 和久, 村上 始
    2019 年12 巻 p. 37-50
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,心理学と行動経済学との歴史的経緯について述べ,次に,両者が関連する現象として,プロスペクト理論にも仮定されている確率荷重関数を心理学的に解釈する研究の試みを例示して,心理学と行動経済学が密接に関係していることを説明する.

  • 星野 崇宏, 竹内 真登
    2019 年12 巻 p. 51-61
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    行動経済学とマーケティング研究双方に関係が深い二重過程理論と文脈効果についてレビューを行うとともに,実際のスーパーマーケットでの購買履歴データから魅力効果の存在を示す著者らの解析例を示す.

  • 池田 新介
    2019 年12 巻 p. 62-74
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,セルフコントロール(自制)と意志決定の関係についての研究を展望することによって,行動経済学を含めた経済学の今後の研究の発展に資するところにある.二重処理理論の観点からセルフコントロールを定義し,意思決定や行動への含意を実証と理論の両面から総括する.実証知見については,行動上のさまざまなアウトカムへの影響やセルフコントロールによる消耗について,経済学では馴染みの薄い心理学等隣接分野の知見を含めて整理する.セルフコントロールの理論的含意については,誘惑理論に基づいた二重自己モデルを取り上げ,意志力の限界を考慮した新しい消費理論の可能性について考える.セルフコントロールコストの凸性とセルフコントロールの異時点間代替という定型的事実が,意志力を内生化することでうまく記述される.

  • 大垣 昌夫, 大竹 文雄
    2019 年12 巻 p. 75-86
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    日本を筆頭に世界の国々で少子高齢化が進むなかで,各国の人口の大きい割合を占める高齢者の認知能力が低下することになる.また,女性の社会参画のために,保育サービスの重要性が増す.認知能力が大きく低下した高齢者や子供が市場メカニズムを一人では有効に使えないことを考えると,市場メカニズムと共同体メカニズムをどのように混合させていくことが社会にとって望ましいかという問題が重要である.行動経済学がこの問題に取り組むための研究の枠組みをすでに完成させたとは言えないが,内生的選好モデルに徳倫理という倫理観を導入する理論研究など,すでにこのような問題に取り組むために役立つさまざまな研究が行われている.本稿ではこのような視点から,規範行動経済学と共同体について概観する.

  • 川西 諭, 田村 輝之
    2019 年12 巻 p. 87-104
    発行日: 2019/04/16
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,グリット(Grit)とマインドセット(Mindset)という2つの心理学概念に関する研究を紹介し,労働生産性向上をめぐる議論への含意,および行動経済学研究への応用の可能性について議論する.グリットとは,長期的な目標達成に向かって「やり抜く力」であり,本稿で紹介するマインドセット研究は「固定思考」と「成長思考」という2つの対極をなす思考を問題とする.既存のグリット研究とマインドセット研究はいずれも私たちの能力のうち,努力によって後天的に獲得される資質が常識的に考えられているよりも重要であること,そして資質の獲得が私たちの心理や思考によって強く影響を受けることを指摘している.これらの研究に照らすと,労働生産性を低水準にしている原因として,人々の考え方が,先天的資質を重視する固定思考に偏ってしまっている認知バイアスが浮かび上がる.

  • 青山 肇紀, 青山 道信
    2019 年12 巻 p. 190-214
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/25
    ジャーナル フリー

    人々の消費行動における異時点間の選択は普遍的な課題である.双曲線型割引関数を持つ個人が事前の意図より過剰消費し,コミットメントより自己資産の流動性を制約する自己統制の問題は家計資産の選択に決定的に重要である.本稿は大阪大学が実施した「暮らしの好みと満足度に関するアンケート」のパネルデータを用いて2009年から2012年までの4年間に日本,米国,中国,印度の4カ国を対象に,家計の割引構造,消費と所得・資産の限界消費性向を統計学的に実証分析したものである.双曲線型割引関数を持つ家計は,その比率が日本で21%,米国で14%と顕著に違い,過剰消費のアノマリーが中国で確認されず日米印で確認された.消費と所得との連動性が米国(非線形)と印度(線形)で確認されたが,日本では連動性が弱く,負債との連動が確認された.米印における固定資産の限界消費性向が有意に正で,金融市場におけるイノベーションが過剰な流動性を供給しコミットメント効果を希薄化する中で家計の自己統制の変化,及び限界消費性向のシステマティックな上昇の可能性が示唆された.

第1回行動経済学会学生論文コンテスト優秀賞受賞論文
第1回行動経済学会ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部優秀論文賞受賞論文
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