行動経済学
Online ISSN : 2185-3568
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8 巻
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論文
  • 阿部 誠, 守口 剛, 八島 明朗
    2015 年8 巻 p. 1-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
    行動経済学では,時間軸における選好の逆転現象を割引で説明する場合が多い.一方,心理学や行動意思決定理論の分野では,時間を含めた心理的距離の変化による選好の逆転を解釈レベル理論の枠組みで分析する研究が多数,存在する.本研究では,割引の概念を解釈レベル理論に組み込んだ割引解釈レベルモデル(DCLM)を提案する.具体的には,割引の適用を時間も含めた一般的な心理的距離に拡張し,割引傾向の違いに関する2つの要因,量的効果と符号効果を仮定する.本論文では,これらを3つのプロポジションとして提案し,ロトの選択に関するアンケート調査に基づいて統計的に検証する.その結果,DCLMが時間軸も含めた一般的な心理的距離の変化による選好の逆転を説明,予測できることを示す.
  • 中川 宏道
    2015 年8 巻 p. 16-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    小売業での買物において,ポイント付与と値引きとでは,どちらが消費者にとって得と感じられるのであろうか.本研究では,少額のポイントは心理的な貯蓄勘定に計上され,多額のポイントは当座勘定に計上されるというポイントに関するメンタル・アカウンティング理論の仮説を提示し,スーパーマーケットおよび家電量販店におけるアンケート実験によって検証をおこなった.スーパーマーケットでの実験結果から,値引率・ポイント付与率が低い水準においては,値引きよりも同額相当のポイント付与の知覚価値の方が高いことが明らかになった.低いベネフィット水準におけるセールス・プロモーション手段としては,値引きよりもポイント提供の方が有効であることが本研究の結果から示唆される.
書評
論文
  • 安田 昌平, 中川 雅之, 浅田 義久
    2015 年8 巻 p. 33-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル フリー
    効率的な都市の防災対策を考える際,正確な費用対便益の検討と共に,危険な地域に住む住民にはどのような特徴があり,災害リスクに対してどのような反応をするのか把握することは,とても重要なことである.本研究では,東京都に住む3,000世帯を対象にアンケート調査を行い,住民の災害リスクに対する反応を把握した.その結果,危険な地域では,所得水準が低い家計が集中する傾向にあり,客観的リスクの認知率も高い傾向にあった.また,本研究では,防災対策を実施する誘因を,プロビット分析を用いて検討した.その結果,住民の時間割引率の効果が居住地域の危険度によって変わることが示唆され,さらに,所在各地域の耐震改修率が有意に影響していることから,周辺地域の環境が強く影響することが示唆された.
第9回大会パネルディスカッション
第9回大会プロシーディングス
  • Kotaro Miwa, Kazuhiro Ueda
    2015 年8 巻 p. 55-61
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    Despite the introduction of sophisticated stock market indices, investors often trade portfolios of the flawed indices to change their exposure to the market. In this study, we show that these transactions cause significant distortions in individual stock prices, especially during periods of significant market movement. As an influential, albeit flawed, stock index, we focus on the Nikkei 225. We find index constituents that are excessively weighted on the index, experience excessive buying (selling) pressure when the stock market surges (falls), and experience price corrections after such periods of change. In contrast, non-constituent stocks do not experience such trading pressure.
  • Takeharu Sogo
    2015 年8 巻 p. 62-65
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    I consider a situation in which workers have present-biased preferences and have a tendency to procrastinate their tasks, but underestimate the degree of self-control problems that they will face in the future. In such situations, their manager may want to introduce some form of competition to induce them to finish their tasks earlier. However, I show that the introduction of competition may delay the completion of their tasks. The intuition of the result is simple: The introduction of competition reinforces their belief that they will complete the task soon, which undermines their incentive to undertake the task now. This result holds even when there is only one worker who underestimates the degree of self-control problem, which suggests that the mere existence of a single “irrational” agent can undermine the overall performance of organizations.
  • 佐野 一雄
    2015 年8 巻 p. 66-72
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    株式のファンダメンタルズ指標には,情報だけでなく,株価に作用するノイズとバイアスが含まれていると考えられるが,一般に,ノイズとバイアスの作用を識別することは困難である.本稿では,合理的期待による「真のファンダメンタルズ仮説」を提示し,実際のファンダメンタルズ指標からバイアス成分を検出する.具体的には,「真のファンダメンタルズ仮説」にもとづく対数正規分布モデルを用いて,株価収益率, 純資産倍率および株価キャッシュフロー倍率からバイアス成分を検出する.バイアスは基本的に同じ性質を示し,分析結果の一部は「真のファンダメンタルズ仮説」を強く支持している.キャッシュフロー指標に含まれるバイアス成分は相対的に少なく,とりわけ「投資活動による正のキャッシュフロー倍率」は「真のファンダメンタルズ」の代理変数であることを示す.
  • 川口 宗紀, 田代 雄介
    2015 年8 巻 p. 73-76
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿では株式の売買注文の時間間隔に注目し,間隔の短い注文が株価形成にどのような影響を及ぼしているのかについて分析する.直前の注文との間隔が極端に短い注文(短間隔注文)は,直前の注文に反応するような高頻度取引によるものである可能性が高い.したがって,短間隔注文を分析することは,高頻度取引が増加している近年の株式市場の特性を捉えることにも繋がる.分析の結果,売買が盛んな銘柄に多い等,短間隔注文の特徴が明らかになった.さらに,スプレッドを拡大させる約定のようなインパクトが大きい注文の後には短間隔注文が集中し,前の注文のインパクトを拡大させるような傾向があること等,価格形成への影響もわかった.
  • Keiko Iwasaki, Yasuyuki Sawada
    2015 年8 巻 p. 77-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    We test the canonical version of prospect theory using unique data from residents displaced by the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster. To collect the data set, we designed and administered surveys to residents from Futaba (a town in Fukushima), who evacuated from the area because of high levels of radiation. As a result, all residents of Futaba lost their homes, land, and stable income sources. Using this incidence as a source of exogenous variations, our analysis reveals three significant empirical patterns. First, the displaced residents show unusually high levels of depression as captured by the Kessler 6 measure (K6), a widely-used measure of non-specific psychological distress. Second, we find that large losses of income, health, and home space are strongly associated with increased depression levels. Moreover, our empirical results show that psychological outcomes are more sensitive to losses than to gains, a finding which is largely consistent with the basic predictions of prospect theory.
  • 大竹 文雄, 黒川 博文, 森 知晴
    2015 年8 巻 p. 81-85
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本研究では所得税と消費税の等価性を検証する実験を行った.ある所得分布と所得に応じた消費パターンを前提として,所得税(20%)と消費税(25%, 24%, 22%, 20%)のそれぞれどちらが好みかを被験者に選択させた.消費税(25%)は所得税(20%)と税負担が同等である.消費税(24%, 22%)は所得税(20%)よりも見た目の税率は高いが税負担は低い.消費税(20%)は所得税(20%)と見た目税率は同じだが,税負担は低い.被験者は見た目の税率が消費税の方が高いときは所得税を好み,見た目の税率が同じときは消費税を好んだ.消費税の方が税負担は低いにもかかわらず,被験者が所得税を好んだという結果は,消費税誤計算バイアスの存在を示唆する.消費税誤計算バイアスとは,外税表記の消費税を所得税と同様に内税かのように考えて消費税額を計算してしまうバイアスである.等価な消費税と所得税では所得税の方が被験者に好まれることから,消費税誤計算バイアスにより,等価性が成り立たないことが明らかとなった.
  • 後藤 晶
    2015 年8 巻 p. 86-89
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    プレミアム商品券とは一定分のプレミアム率に応じた金額を上乗せした商品券である.本研究においては2014年度の緊急経済対策による地方交付金の活用方法として採用されたプレミアム商品券政策に関連して,インターネット調査を実施し,社会経済的属性に着目して,プレミアム商品券政策に関する経済行動の特徴について検討した.その結果,低収入世帯ほど,プレミアム商品券を購入していないこと,高収入世帯ほどプレミアム商品券に期待する「最低希望プレミアム率」が低いことなどが明らかとなった.
    特に,購入者に比べて,非購入者および購入未定者の最低希望プレミアム率が高いことが示されており,非購入者は販売されたプレミアム商品券のプレミアム率が自身の望むプレミアム率を満たさなかったためにプレミアム商品券を購入しなかった可能性が示唆される.
  • Tetsuo Yamamori, Kazuyuki Iwata
    2015 年8 巻 p. 90-93
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    We examine how wage claims influence the principal–agent relationship between firms and workers with hidden action by using laboratory experiments on a gift exchange game in which workers make payoff-irrelevant requests concerning their wage before the firm makes a wage offer. We compare the experimental results of this game with those of a gift exchange game without wage claims and find that wage claims reduce reciprocity regardless of the wage levels offered by the firm, resulting in shrinking the economic surplus in their labor contracts.
  • 森 知晴, 小川 一仁
    2015 年8 巻 p. 94-99
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本論文では,学生及び幅広い年齢層の非学生参加者を対象として,経済実験室での信頼ゲームを実施した.実験の結果,以下のことがわかった.(1) 年齢と信頼(Trustorの送付額)の関係については,男性で逆U字となり中年世代で最も信頼が高くなる一方,女性では関係が見られなかった.(2) 年齢と信頼性(Trusteeの送付額)の関係については,男性・女性ともに中年世代で最も信頼性が高くなった.(3) 信頼・信頼性と性別の関係については,中年世代で男性の信頼が高く,若年世代で女性の信頼性が高くなった.(4) Trustorの初期保有額がタスクの結果に応じて決まる場合,ランダムに決まる場合と比べて,Trusteeの信頼性が高くなることがわかった.
  • 佐々木 周作, 明坂 弥香, 黒川 博文, 大竹 文雄
    2015 年8 巻 p. 100-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    社会的地位の上昇は長寿や健康を促進するだろうか.両者の相関関係はよく知られているが,前者から後者への因果効果を検証することは難しい.本研究では,日本で最も権威ある文学賞として知られる芥川賞と直木賞のデータを使用して,因果効果の有無・方向性・程度を分析した.具体的には,受賞者と非受賞候補者の同質性が高いと考え,受賞による社会的地位の上昇が余命にどのような影響を及ぼすかを検証した.純文学の新人賞である芥川賞では,初回候補時点から30年を経過するまでの受賞者の死亡確率は,候補者よりも67.5%程低い.予測値から算出した受賞者の平均余命は,候補者よりも3.3年程長い.一方,大衆小説作品の賞で中堅作家を主な対象とする直木賞では受賞者の死亡確率は35.4%程高く,平均余命も3.3年程短い.これらの結果は,受賞には平均余命の延命効果と短縮効果の両方が存在すること,社会経済的基盤の不安定な時には延命効果が相対的に大きいが,安定後には短縮効果の方が大きくなるという可能性を示唆している.
  • 影山 純二, 松浦 司
    2015 年8 巻 p. 106-109
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿はWorld and European Integrated Values Surveyを使用して,世界各国の子ども数が金銭的な満足度に与える影響を,合計出生率や1人当たりGDPの違いを考慮して分析した.子ども数と金銭満足度の関係については内生性の問題が考えられるため,金銭満足度を生活満足度で割ることでウェイト付した上で操作変数法を用いた.分析の結果,合計出生率が低い国では,子ども数が満足度に与える効果が特に経済面で低くなることが示された.この結果は,子どもに対する経済的負担の高さが出生率の低さの一因であるという仮説と整合的である.
  • 影山 純二
    2015 年8 巻 p. 110-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    主観的ウェルビーイング (SWB) に関して近年研究されてきた事柄の1つに,幸福度や生活満足度の年齢変化がある.しかし,その変化を理論的に説明する研究はない.そこで本研究は,満足の裏返しである不満が行動インセンティブになっていることに着目して,その年齢変化を進化生物学のフレームワークの中で考察し,そこで得られた仮説を検証した.進化生物学の中でも生活史理論を用いて得られた仮説は,所得不足と配偶者/生殖パートナーがいないことのそれぞれの不満へのインパクトは生殖年齡期に最も大きく,他の要因をコントロールした上での生活満足度(ベースライン)は生殖年齡期に最も低くなるというものである.ブリティッシュ・ハウスホールド・パネル・サーベイ (BHPS) を用いた回帰分析では,すべての仮説と整合的な結果が得られた.所得不足や配偶者/生殖パートナーがいないことの生活満足度への効果は30歳前後で最も大きく,生活満足度のベースラインはU字型で中年期に最も低くなった.本研究の結果は,生活満足度のベースラインが進化上適切な行動を促すインセンティブの強さを表し,グロスで見た際の生活満足度や人間行動の年齡変化を考察する上で重要な情報になることを示唆している.
  • 布施 匡章
    2015 年8 巻 p. 114-117
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,内閣府が実施した,神戸,名古屋,仙台の3都市アンケートデータを用いて,地域コミュニティの代理変数としてのソーシャル・キャピタルが,防災活動における自助・共助意識に与える影響について分析した.地域別,あるいは震災経験別による分析の結果,自助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルだけでなく,年齢,学歴,年収等によって高まることが示唆されたが,共助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルのみが影響し,特にネットワーク,互酬性の規範と呼ばれる地域行事や地域活動が影響する可能性があるとされた.また,震災を経験した住民は経験していない住民よりも,共助意識とソーシャル・キャピタルを高める活動との相関が高いことが分かった.地域行事や地域活動への参加を促す政策が,自助のみならず共助による防災につながると考える.
  • 山田 歩, 芳澤 希, 鮫島 和行, 野場 重都, 舛田 晋, 鰐川 彰, 植田 一博
    2015 年8 巻 p. 118-121
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    消費者が商品に与える評価は官能評価と日常場面とで異なる場合がある.本研究では,テイスティングを行う状況が飲料の美味しさに与える影響を検討した.三つのグループが異なる状況でブラインド・テイスティングし,飲料の美味しさを評価した.その結果,日常的な状況で飲料を飲んだ参加者は,官能評価としての実験に参加し複数の味覚特性について評定した参加者と比べて,飲料の美味しさを高く評価した.官能評価状況ではあるが複数の特性について評価することは求められなかった参加者が飲料に与える評価は,他の2条件の中間に収まった.テイスティング状況によって美味しさの評価が変化した理由について論じた.
  • 森本 恵美, 荒井 弘毅
    2015 年8 巻 p. 122-125
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿は,北海道開発局の公共調達において,入札参加者数と落札率の関係を調べ,勝者の呪い抑制効果(勝者の呪いを避けるために消極的に入札を行うことにより,落札率が上がる効果)が生じていないことを示し,その原因について,共通価値の大きさが私的価値よりそれほど大きくないこと,落札による損失への学習と調整が迅速に行われること及び競争効果が大きいことを挙げて実証しようとしたものである.
  • 佐々木 周作, 奥山 尚子, 大垣 昌夫, 大竹 文雄
    2015 年8 巻 p. 126-130
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    人は思いやりの気持ちを持つ.一方,誰にでも等しく思いやるわけではないことも知られている.本研究では,米国・ドイツ・シンガポール・韓国・日本の5ヶ国で実施した相互比較可能な全国規模調査のデータを用いて,社会的関係性の異なる複数の他人をどのくらい等しく思いやるか,という思いやりの傾向の国際差を検証した.具体的には,「あなたの家族」および「同じ地域(市町村や集落)に住む人」「同じ都道府県や州に住む人」「同じ国の人」「外国の人」の5者に対する思いやりの水準を計測し,その水準を5ヶ国で比較した.主要結果は二つある.一つは,思いやりの水準を各国内で比較すると,どの国においても,対象が家族から外国の人に向けて移行するにつれ,思いやりの水準が下落する傾向があることがわかった.次に,5ヶ国間で比較すると,思いやりの水準は国によって異なることがわかった.特に,家族以外の4者に対する日本・韓国の思いやりの水準が,他の3ヶ国よりも低かった.
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