日本気管食道科学会会報
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52 巻, 6 号
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原著
  • 原 浩貴, 端本 陽子, 村上 直子, 山下 裕司
    2001 年 52 巻 6 号 p. 431-437
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは1996年より40症例に対して全身麻酔下に硬性内視鏡を使用した喉頭微細手術を行った。 40症例中3例は,喉頭展開が不良で顕微鏡下の喉頭微細手術が不可能であったが,内視鏡下に手術可能であった。
    内視鏡下の喉頭微細手術においては,顕微鏡では観察が難しい喉頭室および声門下の病変の観察や,喉頭展開不良な例での前交連病変の観察が可能であった。特に,声帯白板症での病変部の詳細な観察や喉頭腫瘍の正確なステージ決定に,内視鏡法は有効であった。
    内視鏡下喉頭微細手術では,術中の視野が明瞭であることから,ポリープや結節,腫瘤の切除など容易に行うことができた。
    喉頭直達鏡内で鉗子と直達鏡が干渉し操作が不自由となる場合には,器具の操作性を妨げないように,内視鏡を通常より少し声帯から遠ざけた位置に置き,ズーム機構によって術野を拡大する必要があった。
    また声帯結節やポリープ様声帯の手術時には,内視鏡の位置をやや遠目にし,過剰切除を避ける注意が必要であった。
  • 梅野 哲義, 佐藤 公則, 松田 洋一, 石井 玄吾, 中島 格
    2001 年 52 巻 6 号 p. 438-446
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    久留米大学医学部耳鼻咽喉科で1991年1月から1997年12月までの間に,初治療として喉頭全摘を行った喉頭癌T3,T4症例は声門癌24例,声門上癌46例である。これらの症例の摘出喉頭を用いて病理組織学的な声門下進展,CA浸潤,気管傍・喉頭前リンパ節転移を検討し以下の結果を得た。
    1)気管傍・喉頭前リンパ節に転移する頻度は声門癌T3,T4で19%,声門上癌T3,T4で7%であった。
    2)声門癌では声門下進展例の50%に,声門上癌では20%に気管傍・喉頭前リンパ節転移を認めた。
    3)声門癌のT3症例1例と声門上癌のT3症例1例では,声門下進展がないにもかかわらず気管傍リンパ節転移をきたしておりCA浸潤の関与が示唆された。
    4)声門下進展がなくてもCA浸潤があれば,声門癌では40%の頻度で,声門上癌では20%の頻度で気管傍・喉頭前リンパ節転移が認められた。
    5)声門下進展とCA浸潤がなければ,声門癌・声門上癌ともに気管傍・喉頭前リンパ節に転移は認められなかった。
    6)気管傍リンパ節郭清術あるいは同部へ術後照射を行った例では,SRをきたした例は1例も認められず,SRを予防する方法としていずれも有効であると思われた。
  • IV型コラゲン発現パターンによる検討
    村上 泰, 河田 了, 中井 茂, 木村 隆保, 丸山 晋, 四ノ宮 隆, 島田 剛敏, 丁 剛
    2001 年 52 巻 6 号 p. 447-455
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    声門癌T2-4の治療における頸部郭清の適応決定とその術式選択を目的として,IV型コラゲン発現パターンによって連続性発現群28症例,断続性発現群12症例および発現性陰性群12症例の3群に分け,各症例の頸転移およびその頸部レベルへの拡がりについて検索した。
    以下のように結論する。 1.N-が33例(63.5%)で,N+が19例(36.5%)であり,N+の内訳はcN-N+が7例,cN+N+が12例であった。 2.SLIの平均値およびEGF-Rの陽性発現率は連続性発現群で最も低く,断続性発現群でやや高く,発現性陰性群で最も高かった。 3.発現性陰性のcN- 3症例はいずれも転移陽性であることが確認されたが,連続性あるいは断続性発現のcN-症例から転移陽性例を予測することは,SLIおよびEGF-Rの結果を総合しても不可能であった。 4.連続性発現の28症例はいずれもcN-で,そのうちのわずか2例(7.1%)が転移陽性となった。これらには基本的に頸部郭清術は不必要で,もし予防的頸部郭清をするとすればレベルIIIおよびVIだけの選択的頸部郭清術で十分と思われる。 5.断続性発現のcN-症例に対してはレベルIIIおよびVIの選択的頸部郭清術が妥当である。さもなければ厳重な経過観察を要する。 6.断続性発現のcN+症例では,レベルVへの転移を認めたものはなく,副神経を温存する機能的頸部郭清術にレベルVIの郭清を併用するのが妥当である。 7.発現性陰性のcN-は全例転移陽性となったが,レベルVへの転移を認めたものはなく,機能的頸部郭清術およびレベルVIの郭清を予防的に行うのが妥当である。 8.発現性陰性のcN+症例では,レベルVを含んで広範に転移を認めるので,根治的頸部郭清術およびレベルVIの郭清が必須である。
  • 塚原 清彰, 小柳 泰久, 吉田 知之, 井上 斉, 伊藤 博之, 鈴木 衞
    2001 年 52 巻 6 号 p. 456-462
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    近年,悪性腫瘍診断技術の向上,治療法の確立により,重複癌および三重複癌は増加している。今回われわれは頭頸部癌・食道癌を含む多重癌症例の食道癌治療方法について報告する。
    対象は1989年から1998年の間に食道癌と診断され,頭頸部癌との重複を認めた49例で,三重複癌は49例中15例であった。同時性重複癌ではEMRや手術が中心となり,頭頸部癌が先行した異時性重複癌では半数が手術を施行され,半数が放射線治療と化学療法が施行された。
    頭頸部に同時性にみられた食道癌は早期のものが多く,上部消化管の定期的なスクリーニングが重要と思われた。また,食道癌は頭頸部との重複が多くみられ,頭頸部スクリーニングのシステム化が急務である。
症例報告
  • 黒田 浩之, 土井 清司, 田中 博紀, 藤島 禎弘
    2001 年 52 巻 6 号 p. 463-467
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    VCD(vocal cord dysfunction,以下VCD)は吸気時に声帯が内転するために吸気時喘鳴をきたす症候群である。VCDの確定診断に,発作時の喉頭所見が重要であることは海外の報告例で指摘されている。喉頭観察に習熟した耳鼻科専門医が診断すべきであると考えられるが,本邦では耳鼻科からの報告が少ない。今回われわれは,近医内科治療中に呼吸困難を生じ,救急搬送され,耳鼻科でVCDと診断した1例を経験した。吸気時に披裂部が声門に,吸い込まれるように観察された。酸素飽和度の低下はなく,発声時の声帯運動は障害されていなかった。吸気時声帯の内転を認めVCDと診断した。原因はストレスによると考えられた。治療は電子内視鏡を用いた視覚的フィードバック法を行い効果的であった。他科で喘息と診断されている場合もあり,今後耳鼻科医が積極的に診断に関与すべきであると考えられる。
  • 石田 良治, 山田 弘之, 藤田 健一郎, 徳力 俊治
    2001 年 52 巻 6 号 p. 468-472
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    緊急気道確保に際して輪状甲状膜切開を余儀なくされた4症例を経験した。症例は男性3例,女性1例であり,平均年齢は58.5歳であった。全例,上気道狭窄による呼吸困難により輪状甲状膜切開が行われており,上気道狭窄の原因としては,頸部術後出血が1例,深頸部膿瘍が3例であった。全例に術後合併症を認めており,気管孔閉鎖不全が3例(75%)に,皮下気腫が2例(50%)に,声門下狭窄が2例(50%)に認められた。呼吸停止により死亡した症例,脳梗塞などの合併症を生じた症例はなかった。輪状甲状膜切開は他の気道確保方法に比べ最も迅速かつ確実な方法であり,上気道狭窄とくに咽喉頭の狭窄による呼吸困難を伴う症例に対しては極めて有用であると考える。しかし,その合併症の頻度は高く,輪状甲状膜切開を行う状況はでき得る限り回避すべきと考える。その回避の方策としては,喉頭浮腫を認める症例において,気道確保の時期を逃さないこと,全身麻酔を導入する際には意識下での気道確保の後,全身麻酔を導入することが重要と考える。
  • 柏村 正明, 中村 義敬, 檜山 繁樹, 目須田 康, 西澤 典子, 千田 英二, 福田 諭
    2001 年 52 巻 6 号 p. 473-480
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    小児における高度の声門下狭窄症例に対する輪状軟骨・気管切除および端々吻合術(cricotracheal resection with primary thyrotracheal anastomosis:CTR)は,欧米では多数の症例で施行され確立された手技になりつつある。
    われわれは出生直後から未熟児肺および喉頭軟化症の診断のもと,長期にわたり気管内挿管および度重なる試験抜管を施行されたことに起因すると思われた,両側反回神経麻痺を合併した声門下高度狭窄の3歳女児例に対してCTRを施行し,発声可能な状態とすることができた。手術は,輪状軟骨の前方部と狭窄気管を切除し,下方の残存気管断端を残った輪状軟骨にはめ込み甲状軟骨と縫合し吻合を行う方法とした。術後は1週間鎮静下に置き,経鼻挿管チューブをステントとして吻合気管内に留置した。術中・術後の管理を的確に行えば,CTRは安全であり,狭窄部を除去するという目的に最も理にかなった方法であると思われる。また近年の欧米の報告においても吻合部の離開は極めて少なく,また喉頭発育への影響は見当たらないことから高度狭窄例には今後積極的に試みられてよい方法であると結論した。
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