日本気管食道科学会会報
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52 巻, 2 号
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寄稿
  • 村上 泰
    2001 年 52 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    1949年に日本気管食道科学会が発足してから50年余りが経過し,このたび広島において今世紀最後の総会が開催された。この記念すべき時にあたって,今世紀における進歩の跡を振り返り,来るべき21世紀へ向けての踏み台とするべく広い視野に立って展望することは真に時宜を得た重大事である。気管食道科学は関連各科の相互協力によって進歩するものである。それぞれの領域において見られた進歩を整理してまとめ,今後の更なる発展に向けての問題点を抽出した。
特集1 シンポジウム1:気管・食道狭窄に対するステント治療
  • 加藤 治文, 山木戸 道郎
    2001 年 52 巻 2 号 p. 66-67
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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  • 青山 法夫, 南出 純二, 小泉 博義
    2001 年 52 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    1996年5月より2000年5月までの期間に進行食道癌に金属ステント留置を施行した32例を対象とし,金属ステントの効果と問題点について臨床的検討を行った。ステント治療の理由は,食道狭窄が24例(75%),気管食道瘻が8例(25%)であった。 30例(93.8%)は食道癌に対する化学療法や放射線治療が行われていた。使用した金属ステントは,Ultraflex 31例(covered type 27例,uncovered type 4 例),Wallstent 1例であった。食道用金属ステントの留置は全例可能であった。気管食道瘻8例中7例(87.5%)は瘻孔遮断が可能であった。金属ステント留置後に経口摂取の改善が認められたのは30例(93.8%)であった。金属ステント留置後退院可能であったのは14例(43.8%)であった。金属ステント留置後の生存期間中央値(MST)は,54日であった。合併症としては,uncovered typeで出血が1例に,ステントの脱落・移動が4例(12.5%),ステント自己拡張中の食道穿孔が1例,tumor ingrowthが2例(6.3%)であった。また,死亡時の出血(吐血・喀血)は12例(37.5%)に認められたが,その原因の大部分は腫瘍因子によるものであった。
  • 島田 英雄, 千野 修, 西 隆之, 田仲 曜, 木勢 佳史, 姫野 信治, 釼持 孝弘, 山本 壮一郎, 原 正, 田島 隆, 町村 貴郎 ...
    2001 年 52 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    ステント(SEMS)挿入は切除不能進行癌や気管食道瘻形成例などに対する最終段階の処置としての印象が強かった。また,このような症例では長期予後が望めないものも多く,QOLの改善を考慮して,ステント挿入を行い積極的に経口摂取の改善を図りたいと考えている。われわれは,SEMS挿入時期と挿入後,追加治療の評価法について検討を行った。1996年からSEMSを挿入した症例は23例である。切除不能理由に関しては,腫瘍要因が16例,腫瘍要因+全身要因が4例,全身要因は3例であった。腫瘍主占拠部位はUtが10例,Mtが10例,Ltが3例で,腫瘍長径は6~12cm(平均:9.3cm)であった。SEMSの挿入時期については,治療初期挿入例は11例で,治療後挿入例は12例である。SEMS挿入は合併症もなく行われ,全例に経口摂取が可能となりQOLの改善がみられた。口側食道の拡張を認める症例では,SEMS挿入を行うことで経口摂取が可能な状況での治療が可能であり,誤嚥の予防にも有効と思われた。さらに,ステント挿入前後のCT検査は,ステント挿入に伴う腫瘍による気道系の圧排状況の評価また治療効果の判定にも有用と思われた。
  • 古川 欣也, 臼田 実男, 鈴木 明彦, 緒方 昭彦, 島谷 英明, 筒井 英光, 大平 達夫, 坪井 正博, 河手 典彦, 小中 千守, ...
    2001 年 52 巻 2 号 p. 82-87
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    気道ステント挿入症例125例中20例(16.0%)にcombination stentingを施行した。悪性狭窄19例,良性狭窄1例であった。同時性にステント挿入した症例は13例,異時性に挿入した症例は5例,同時性および異時性に挿入したものが2例であった。20症例に対して気道ステント43個,食道ステント2個の計45個のステントを挿入し,SEMSを17例(85.0%)に使用した。combination stentingの挿入部位は,気管,左右の主気管支および中間幹に挿入される場合がほとんどであり,気管にstent in stentとして挿入した症例が2例,気管と食道にdouble stentsとして挿入した例が2例であった。
    初回治療としてステント挿入が施行された肺癌4例中3例(75.0%)および食道癌4例中3例は,ステント挿入後呼吸困難の改善に伴う全身状態の改善のため化学療法または放射線療法の施行が可能となった。
    QOLをperformance status(ECOG)および Hugh-Jones 分類にて評価したところ,performance statusは3.3から2.0に,Hugh-Jones分類は4.1から2.7に有意に改善した。呼吸機能では,%VCが77.6%から84.7%に,peak flowが2.13 l/sから2.73 l/sに有意に改善した。
    ステントの留置期間は平均106.8日で,3ヵ月以上の挿入期間が得られた。Combination stentingの合併症は30.0%に認められ,全体の合併症の約2倍の高率であるため,合併症に十分注意して症例の経過観察をしていくことが重要ではあるが,combination stentingは手術不能症例に対するステント気道再建術として有用な手段になり得ると考えられた。
  • 宮澤 輝臣, 岩本 康男, 宮津 由香
    2001 年 52 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    それぞれの特殊な状況に応じて一番適したステントを選択することが要求される。
    ときに新たに同種または異種の気道ステントの挿入・留置が必要となることがある。
    1991年6月から2000年6月までに当院にて,致死的気道狭窄で同種または異種の複数個のステント留置(combination stenting)を緊急に必要とされたのは24例であった。全症例の88%において,複数個のステント留置により呼吸困難の改善が認められた。
    combination stentingは,広範囲気道狭窄,長い気道狭窄,両側気道狭窄や気管・気管支瘻を合併した例など,特に複雑な気道狭窄の呼吸困難を改善するために有用であった。
  • 安川 朋久, 藤澤 武彦, 吉田 成利, 鈴木 実, 関根 康雄, 渋谷 潔, 飯笹 俊彦, 斎藤 幸雄, 馬場 雅行, 由佐 俊和
    2001 年 52 巻 2 号 p. 93-94
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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特集2 シンポジウム2:咽喉頭異常感の現況と対策
  • 小池 靖夫, 小宮山 莊太郎
    2001 年 52 巻 2 号 p. 95
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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  • 石田 春彦
    2001 年 52 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    1997年のスギ花粉飛散期にスギ花粉症患者55例を対象に検討した結果,34例(61.8%)が喉頭アレルギーと診断された。それらの症例は全例何らかの咽喉頭症状を有しており,咽喉頭異常感が最も多く認められた。喉頭所見では披裂部蒼白浮腫状変化を最も高頻度に認めたが,異常所見のない症例も存在した。また抗アレルギー剤の効果は喉頭アレルギーでは79.4%で認められたのに対し,喉頭アレルギー疑いでは22.2%にすぎなかった。
    次に咽喉頭異常感症と診断される患者42例を対象として喉頭アレルギーについて検討した。その結果14.3%が喉頭アレルギーであった。これらの症例でも喉頭所見としては披裂部蒼白浮腫状変化を高率に認め,またアレルギー疾患の既往や特異的IgE抗体の陽性率等アレルギー素因も喉頭アレルギーのほうが疑い例より強く認められた。
    これまでのわれわれの基礎的検討結果,および今回の臨床的検討の結果より,喉頭でもアレルギー反応は起こり得るものであり,咽喉頭異常感を主訴に来院した患者の診察に際しては喉頭アレルギーも鑑別疾患に加える必要がある。
  • 小澤 博史, 北嶋 和智, 片岡 英幸
    2001 年 52 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
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    最近,咽喉頭に何らかの異常感を訴えて耳鼻咽喉科を受診する患者が増えているようである。今回,咽喉頭異常感症315例のスクリーニング検査について検討した。検査結果は,血清鉄低下15%,F-T3低下19%,F-T4低下12%,抗マイクロゾーム抗体陽性13%,抗サイログロブリン抗体陽性18%,頸部超音波検査で甲状腺に何らかの異常所見42%,上部消化管造影で異常所見10%,頸椎X-Pで頸椎の変形31%であった。咽喉頭異常感症の器質的疾患の一つとして甲状腺疾患があげられており,今回のスクリーニング検査でも比較的多くの症例に甲状腺の異常を認めた。特に甲状腺の部位に異常感を訴えた症例に甲状腺機能低下,抗マイクロゾーム抗体陽性,抗サイログロブリン抗体陽性,頸部超音波検査で甲状腺に異常所見のある症例が多かったことより,咽喉頭異常感症と甲状腺疾患の関連性が示唆され,スクリーニング検査として甲状腺の精査は必要であると考えた。
  • 倉富 勇一郎, 竹田 和雄, 小宮山 荘太郎
    2001 年 52 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    中咽頭癌,下咽頭癌,声門上癌275名の患者の症状,病歴を調査し,癌における咽喉頭異常感の特徴と癌の早期発見のための対策について検討した。受診のきっかけとなった症状は,咽頭痛や嚥下痛,食べ物がしみるといった痛みに関する症状が32%と最も多く,次いで頸部腫瘤(20%)であり,咽喉頭の異常感は嗄声とともに16%であった。異常感を主症状として受診した場合,原発巣の進行度は少ない傾向があり,特に下咽頭癌においては約90%がTl,T2であった。癌における異常感にこれといった特徴はないが,痛みについては「骨が刺さったようなチクチクする痛み」に代表される軽度の痛みが癌の特徴の一つであった。また,癌における異常感や痛みを感じる部位は癌の占拠部位にほぼ対応しており,症状を感じる広さは痛みの方がより限局していた。以上から,咽喉頭の異常感や痛みといった自覚的にしか分からない症状で受診した患者の中から癌を見逃さないことが早期発見に重要であり,特に異常感や軽度の痛みが左右いずれかに局在するような,特定の比較的限局した部位に持続的にみられる場合は,癌の存在を強く疑う必要がある。
    癌患者の平均病悩期間は2カ月以上であり,約20%の患者は異常感や軽度の痛みを自覚していても受診をためらっていた。加えて,癌患者の約20%は咽喉頭の異常感や痛みにより受診した際,上気道の炎症と診断され投薬を受けていた。咽喉頭の異常感や痛みは上気道炎症状と類似しているが,これらが癌による症状の可能性があることを一般社会に広報し,同様の認識を耳鼻咽喉科医のみならず広く医療関係者に深めることが,癌の早期発見につながるものと思われる。
  • 津田 邦良
    2001 年 52 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    咽喉頭異常感症(異常感症)は様々な原因によって発現し,また訴えも多彩である。ほとんどの患者はのど(下咽頭,喉頭および食道入口部)に漠然とした異常感を感じており,患者自身が異常感を認知する部位や異常感の性状をはっきりと特定できずにいる場合が多い。今回異常感症発現の神経機序を考察するにあたり,異常感症を惹起させる解剖学的なtrigger point別に分類した。その分類は末梢神経レベル由来のもの(末梢性咽喉頭異常感症),中枢神経レベル由来のもの(中枢性咽喉頭異常感症)の2種類とした。さらに末梢性咽喉頭異常感症の神経機序を明らかにする目的で喉頭披裂部と食道入口部に異なる逆行性トレーサーを注入し蛍光抗体法で頸静脈神経節と節状神経節内で標識される一次知覚細胞の分布および二重に標識される細胞の有無について検討した。その結果として,一次知覚細胞の二重標識が頸静脈神経節で約10%に認められた。このことが咽喉頭異常感の成因のひとつであることが示唆された。
  • 内藤 健晴
    2001 年 52 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭アレルギーの主要症状である咽喉頭異常感と咳嗽の二大症状について,臨床的に検討した。咳嗽は3週間以上持続する乾性で,抗アレルギー薬投与で,改善が著しかった。咽喉頭異常感では,期間は咳同様長かったが,表現が多彩で,抗アレルギー薬による効果は低かった。
特集3 シンポジウム3:進行甲状腺癌の取り扱い
  • 木田 亮紀, 永原 國彦
    2001 年 52 巻 2 号 p. 125-126
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
  • 長谷川 泰久, 松浦 秀博
    2001 年 52 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺分化癌の病態が解明されてくるに従い,全体としては予後のよい分化癌もいくつかの因子により癌死リスクの低い群と高い群に大別できることが明らかになった。予後因子が明らかになることにより,いくつかの臨床的対応が生まれる。予後の予測とカウンセリング,予後因子に対応した治療,特に手術療法と術後の治療計画である。ここでは甲状腺分化癌の予後因子から癌死高危険群を明らかにし,その臨床的意義について検討を加えた。
    対象は1980年から1990年の間に愛知県がんセンター頭頸部外科において手術を施行した甲状腺分化癌135例である。予後因子の解析はCoxの比例ハザードモデルにて行った。単変量による解析では性,年齢,TNM分類,被膜外浸潤,分化度が有意な予後因子であった。多変量による解析では性,年齢,被膜外浸潤が有意な独立した予後因子であった。また,臨床的リンパ節転移もリスク比の高い予後因子であった。特に,被膜外浸潤が最も重みのある因子であり,55歳以上でかつ被膜外浸潤の症例を高危険群として位置付けることができる。
  • 中尾 量保
    2001 年 52 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺分化癌に関してはほとんどの場合,その生物学的悪性度が低いため局所浸潤進行癌に対する手術治療,すなわち甲状腺および浸潤臓器合併切除はQOLやsurvivalにとって有用であると考えられている。われわれもまたこの考えのもとに過去20年間に甲状腺癌の気管,食道,血管等への浸潤のため臓器合併切除を48例に行った。気管環状切除・端々吻合が最も多く39例で,気管切除の最長は11軟骨輪であった。喉頭全摘を6例に行い,再発2例において喉頭半切後耳介軟骨で再建し,QOLに寄与したと考えられた。これら39例の10年生存率は67.7%でsurvivalも良好であった。食道内腔にまで浸潤の及んだ3症例に対しては,1例には前腕皮弁を用いて再建し,2例には空腸間置移植を行い,いずれもマイクロサージェリーによる血管吻合を行った。また総頸動脈へ浸潤した2例に対しては人工血管による置換を行った。
    QOLからみて最も問題になるのは両側反回神経麻痺であり,12例に発症し9例で一側の麻痺は回復したものの12例中11例で嗄声が残存した。以上,甲状腺癌の臓器浸潤例に対し,局所根治を得た合併切除はQOLやsurvivalからみて有用と思われた。
  • 吉積 隆, 海老原 充, 佐竹 文介, 平尾 隆, 大城 貴史, 海老原 敏, 林 隆一, 斎川 雅久, 大山 和一郎
    2001 年 52 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    群馬県立がんセンターにおける甲状腺分化癌stage III,IV症例53例(乳頭癌47,濾胞癌6)の治療および遠隔成績を検討した。手術を施行した44例の10年累積生存率は84%であった。34例は葉峡切除であったが残葉再発は1例のみであり,喉頭全摘を要した症例は2例であった。遠隔転移例の予後は不良であったが,局所再発のみの症例は長期生存が得られていた。
    国立がんセンターにおける乳頭癌気管浸潤に対する手術例30症例の成績を示した。手術は全例気管ないし喉頭壁の部分切除・開窓であった。経口摂取は術後中央値7日で全例可能となり,25例で気管瘻の閉鎖が可能であった。病理学的に切除断端陽性例が13例あったが,断端再発は2例であった。遠隔転移が15例にみられ,原病死7例はすべて遠隔転移例であった。10年累積生存率は67%であった。
  • 木西 實, 天津 睦郎
    2001 年 52 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部気管環状切除後の気道再建には種々の再建法が提唱されてきたが,気管端々吻合は十分な内腔を保持し,気道分泌物を容易に喀出できる点で最も生理的な一期的気道再建法である。吻合部の過剰な張力を減少させることは一般に肺と縦隔気管を頭側に授動させる方法と上気道を尾側に移動させる方法が行われてきたが,遠位気管を吻合部を越えて近位気管に牽引することにより過剰な張力を減少させる試みは文献上報告されていない。われわれは両側の胸鎖乳突筋胸骨頭弁により乳様突起から吻合部を越えて遠位気管を牽引する術式により過剰な張力なしに気管端々吻合術に成功した5例を報告した。
    両側の胸鎖乳突筋胸骨頭を筋腱,胸骨骨膜を含めて切離することにより乳様突起から遠位気管を牽引する胸鎖乳突筋胸骨頭弁を得る。筋腱,胸骨骨膜を含んだ胸鎖乳突筋胸骨頭弁を吻合部より7気管遠位の気管側壁に縫着する。この縫合は胸骨頭弁の筋腱,胸骨骨膜,気管軟骨側壁を含むことが遠位気管の牽引を確実にするために重要である。
  • 平川 勝洋, 夜陣 紘治, 立川 隆治
    2001 年 52 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺未分化癌は,ときに数週間で死の転帰をとることもあり,癌のなかでも極めて予後不良なものである。われわれの施設では1990年から1999年までの10年間に治療した甲状腺癌100例中8例が未分化癌であった。8例中5例に根治目的で手術を行った。2年以上生存例は,吸引細胞診で未分化癌と診断し,化学療法後に咽喉頭食道摘出術を行った1例のみで,他の7例は治療開始1~8カ月後に死亡した。生存例は術後の病理学的検索では大部分が乳頭癌で,未分化転化癌であったと考えられた。本疾患の治療法については議論の多いところであるが,白金製剤や副作用軽減のためのG-CSFの登場,多剤併用療法の開発により,化学療法による治療成績の向上もみられている。また拡大手術の併用により化学・放射線治療のみよりも良い成績の報告も増加してきている。手術治療を考慮する場合は,完全切除がなされなかった場合,進行を助長する可能性もあり,慎重であるべきであるが,未分化転化癌のなかには治癒切除可能な症例があり,完全治癒させ得る可能性が示唆されている。残念ながら,系統的な治療法を確立するには至っていないのが現状であるが,個々の症例で慎重に根治を目指す一方で,常に患者のQOLを考慮した治療法の選択が重要である。
特集4 パネルディスカッション:下咽頭・頸部食道癌—喉頭温存はどこまでできるか—
特集5 ランチョンレクチャー
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