日本気管食道科学会会報
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52 巻, 4 号
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原著
  • 平松 隆, 大西 将美, 村井 道典
    2001 年 52 巻 4 号 p. 299-306
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
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    気管内挿管の合併症のひとつである披裂軟骨脱臼の報告例は少なくその実態はあまり知られていない。
    1997年~2000年9月までに当科で経験した披裂軟骨脱臼を疑い整復術を試みた17例を検討した。原因手術は心臓手術5例,大血管手術2例,肺手術1例,消化管手術8例,肝臓手術1例であった。
    症状は発声障害と嚥下時に不快感がある嚥下困難を伴う例が多かった。整復後には16例の症状は劇的に改善した。改善しなかった例は左肺手術後の患者で,発声障害に加え嚥下障害がその後出現し軽快増悪を繰り返した。この例は反回神経麻痺と考えられた。
    喉頭所見では,患側は両側8例,左側2例,左側7例であった。患側声帯の可動性が制限され,声帯突起の動きと披裂軟骨上端部の動きが協調しておらず声帯突起の動きが悪く,披裂軟骨上端部の動きは良好のようにみえた。
    症状では嚥下時に不快感を伴う点に注意し,喉頭所見では声帯突起の動きと披裂軟骨上端部の動きの乖離に注意すれば,披裂軟骨脱臼は反回神経麻痺と誤診することは少ない。整復により劇的に改善するので,積極的に整復を試みるべきと考えた。
  • 挿管性麻痺を中心に
    石田 良治, 山田 弘之, 藤田 健一郎
    2001 年 52 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    1997年1月から2000年5月までに,当科にて加療を行った術後性声帯麻痺症例18例を対象とした。18例に対し手術内容,手術時間,麻酔方法,挿管時間,声帯麻痺の改善の有無,治療法,改善例における回復までの期間等につき検討を行った。声帯麻痺の改善率は73%であった。非改善例5例は全例胸部,頸部の手術例であり,術中に反回神経が直接損傷された可能性が考えられた。改善例13例中10例は反回神経,声帯とは無関係の手術例であり,これらは気管内挿管による麻痺と考えた。挿管性声帯麻痺の改善率は100%であり,平均改善期間は37.7日であった。ATP療法の有無による比較では,改善期間に差は認められなかった。平均手術時間は5時間58分,挿管時間は20時間27分であった。挿管中に気管内チューブのカフ圧をモニターされている症例はなかった。以上より,挿管性声帯麻痺の原因としては,気管内チューブのカフ圧による気管粘膜の循環不全,長期挿管が重要と考えた。挿管性声帯麻痺に対する治療については,予後良好であること,ATP療法により改善期間に差を認めなかったことから,積極的な治療は必要なく,経過観察のみで十分であると考えた。
  • 西山 耕一郎, 廣瀬 肇, 井口 芳明, 山本 一博, 廣島屋 孝, 佐藤 賢太郎, 正来 隆, 平山 方俊, 山中 盾, 八尾 和雄, 高 ...
    2001 年 52 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    直達喉頭鏡下における顕微鏡的喉頭観察法は,大変優れた方法であるが,視野の制限という欠点がある。この点を解決するために硬性内視鏡を使用することを考えた。今回使用した器具は,2.7mm屈曲型硬性内視鏡70度,鼻内手術用4mm硬性内視鏡0度と70度である。これによって声門下,声帯下面あるいは喉頭室内の病変の観察と処置が可能になった。また屈曲型内視鏡の像を顕微鏡像と併用することにより,三次元的に術野をとらえることも可能であった。顕微鏡下喉頭手術支援用内視鏡は,喉頭微細手術を施行する上で有用であった。
  • 塚原 清彰, 山口 宏也, 鈴木 伸弘, 中村 一博, 廣瀬 肇
    2001 年 52 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
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    1995年9月から2000年9月の5年間の間に東京専売病院耳鼻咽喉科音声外来を受診した,声帯後部に器質性病変を認める38例について検討した。初診時肉芽腫が30例,嚢胞が4例,乳頭腫が2例,癌が2例であった。嚢胞4例のうち3例が,また癌2例のうち1例が初診時に肉芽腫と診断されていた。胃食道逆流症(GERD)が疑われた肉芽腫9例中4例にPPIは有効であった。ストロボスコープは声帯後部における器質的疾患の診断において有用性が低く,診断には生検が最も有用である。後部声門の肉芽腫に対してはGERDに対する加療が効果的であると思われた。
  • 河野 敏朗, 久保田 彰, 古川 まどか, 佃 守
    2001 年 52 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
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    当科では1994年以降のインフォームド・コンセントの徹底以来,根治治療に放射線治療を選択する下咽頭癌患者が増加した。そこで1986年9月から1999年12月までに治療した重複癌および遠隔転移のない下咽頭癌未治療例53例について検討した。放射線根治治療によるstage別死因特異的5年生存率は,stage I,stage II(計10例)は100%であり,stage III(7例)では80.0%であった。しかしstage IV(36例)は24.9%と他の病期に比べて有意に低くなっていた。放射線治療後の原発巣再発は12例あり,そのうち4例にsalvage手術を行い生存は2例,遠隔転移死1例,他因死1例であった。また原発巣が制御されたがリンパ節再発を認めたのは5例で4例にsalvage手術を行い,生存は2例,遠隔転移死2例であった。stage I,IIの症例では放射線の予後および喉頭温存は良好であったが,進行下咽頭癌に対する機能温存と生存率の向上をいかに両立させるかが今後の課題と思われた。
  • 中村 一博, 山口 宏也, 堀口 利之, 平松 宏之, 塚原 清彰, 廣瀬 肇
    2001 年 52 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開術は,日常的によく行われる手技で,通常はカニューレ抜去により問題なく自然閉鎖が期待できる。しかし,なかには閉鎖しない症例も存在する。だが,気管孔閉鎖術の術式についての報告は多くない。今回,われわれの術式について報告する。
    症例は,1996年から2000年までに気管孔閉鎖術を行った7症例(男性3例,女性4例,平均年齢56.8歳)である。自然閉鎖を期待し,5ヵ月以上の保存的観察期間の後,閉鎖を認めなかった症例を対象とした。全例に術前の気管孔からの培養にて,MRSAが検出されていた。
    局所麻酔下に気管孔閉鎖術を施行した。気管孔左右より,hinge flapを2枚,皮膚欠損部被覆用として1枚,計3枚の皮弁を作製した。2枚のhinge flapを用い気管前壁を再建した。皮膚の欠損部をもう1枚の皮弁を用い,被覆した。術後の内視鏡所見では,全例に内腔狭窄は認めなかった。
    本術式の利点として,侵襲が少ない点,気管の内腔狭窄を起こしにくい点,感染が存在しても閉鎖可能である点などがあげられる。欠点として,頭頸部術後や放射線治療後の気管孔には適さない点,瘢痕により喉頭の挙上を妨げ誤嚥の原因になり得る点があげられる。
  • 森田 武志, 須藤 正治, 倉田 響介, 藤木 暢也, 塩見 洋作, 河田 恭孝, 平塚 康之
    2001 年 52 巻 4 号 p. 336-340
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    小児閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)(3歳から11歳までの22例・平均6.5歳)に対して,口蓋扁桃剔出術・咽頭扁桃切除術を行い,その効果を検討した。術前および術後7日から10日目の終夜睡眠時呼吸検査結果を比較すると,oxygen desaturation index (ODI)は平均13.3/hから1.4/hへ,血中最低酸素飽和度は平均79.9%から88.3%へと有意に改善した(p<0.01, paired t-test)。これは従来の報告同様,これまで経験的に知られている小児睡眠時呼吸障害に対する手術療法の高い有効性を裏づけるものであった。現状の問題点として,成人OSAHSの診断基準がapnea hypopnea index(AHI)5/h以上とされているのに対して,小児ではいまだ統一された基準がなく,施設ごとにAHI 1/h以上の所からAHI 15/h以上の所まで様々である点があげられる。長期の予後調査等を行うことで,小児における診断基準が統一されることが望まれる。
症例報告
  • 野々山 勉, 藤田 健一郎, 朝日 ゆかり, 原田 輝彦, 間島 雄一
    2001 年 52 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭に原発する良性腫瘍のなかでも神経原生腫瘍は稀である。今回われわれは喉頭原発の神経鞘腫の1例を経験したので報告する。
    患者は74歳男性で,約7年前より嗄声を自覚していた。初診時の喉頭ファイバースコピーによる局所所見では喉頭右仮声帯の粘膜下に表面平滑な腫瘤を認め,右声帯の可動性は良好であった。CT所見では喉頭右声門上部から声門レベルに腫瘤陰影を認めた。喉頭截開術により腫瘍摘出を行い,病理組織診断の結果,神経鞘腫と診断された。術中に発生母神経は確認できなかった。喉頭神経鞘腫の多くは,披裂部や披裂喉頭蓋ヒダに発生するとされるが,われわれの症例は声門付近に存在していた。また喉頭の神経鞘腫ではほとんどの症例が上喉頭神経内枝から発生するとされているが,本症例では術後右声帯麻痺をきたしたことより,喉頭内反回神経分枝より発生した可能性もあると考えられた。
  • 落合 敦, 平山 方俊, 西山 耕一郎, 山中 盾, 廣島屋 孝, 廣瀬 肇, 岡本 牧人
    2001 年 52 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは挿管によって声門下に肉芽腫が生じた1症例を報告した。
    患者は60歳の男性で,僧帽弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症,狭心症に対して施行した手術後より感じているのどの違和感を主訴に当院を受診した。喉頭ファイバー所見は声門下に淡赤色で表面平滑な腫瘤を認めた。声帯の可動性は良好であった。
    われわれは初めに局所麻酔下で気管切開術を施行し,その後全身麻酔下で喉頭微細手術を施行し声門下の腫瘤を切除した。そしてその基部をCO2レーザーで焼灼した。
    病理組織学的所見は非特異性肉芽腫であった。現在術後約26カ月を経ているが再発を認めていない。
  • 石井 豊太, 中山 貴子, 新田 光邦, 正来 隆, 星野 功
    2001 年 52 巻 4 号 p. 351-354
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部外切開を要した下咽頭魚骨異物の1例を経験した。異物は,咽頭後間隙に認められ,危険間隙への炎症の波及などを考えると早急な処置が必要と思われた。異物の種類大きさにより咽頭の側面単純レントゲン撮影で確認できるものもあることを痛感した。
  • 平海 晴一, 北尻 真一郎, 廣瀬 知子
    2001 年 52 巻 4 号 p. 355-357
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    吸気性喘鳴は重篤な上気道閉塞を示唆する。吸気性喘鳴の原因は大部分が器質的で,しばしば気管内挿管や気管切開を要する。心因性喘鳴は呼吸のサイクルを通じて声帯および仮声帯が閉鎖することによって生じる機能的疾患である。心因性喘鳴はしばしば気管支喘息や声帯麻痺と診断され,ステロイド投与や気管内挿管,気管切開を含めた不必要な治療が施行される。
    われわれは18歳女性に生じた心因性喘鳴を報告する。彼女は気管支喘息発作に続いて強い吸気性喘鳴を生じた。
  • 真鍋 恭弘, 津田 豪太, 斎藤 武久, 斎藤 等
    2001 年 52 巻 4 号 p. 358-360
    発行日: 2001/08/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    消化管アニサキス症は魚介類の生食で発症し,ほとんどは胃アニサキス症である。今回,消化管症状をまったく伴わず嚥下困難で発症した稀な胃アニサキス症を経験したので報告する。症例は54歳女性で,嚥下困難を主訴に来院した。咽喉頭には嚥下困難を示唆する所見はなく,中枢性嚥下障害も疑われたが,口蓋垂の挙上,声帯の可動性など嚥下障害以外の所見は認められなかった。異物,あるいは器質的障害を除外するため胃食道内視鏡を施行したところ,食道胃接合部に刺入しているアニサキスの虫体を確認した。アニサキスの除去により,嚥下障害はただちに消失した。
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