日本気管食道科学会会報
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52 巻, 5 号
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特集:再興感染症としての結核
  • 森 亨
    2001 年52 巻5 号 p. 369-376
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
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    結核は多くの欧米諸国と同様に日本でも「再興感染症」としての問題の様相を呈している。具体的にそれがどのような問題を提起しているのか,その対策はどのようにあるべきかを考えるために,疫学の立場から検討した。
    感染:戦後の急速な感染機会の減少のためほとんど結核に未感染の若年層と密に感染を受けている中高齢者層のギャップが問題で,これが集団感染や院内感染の基礎となっている。
    発病:最近の発病は大半が古い時代に感染を受けた中高齢者から起こり,この世代の患者発生の防止と早期発見が重要な焦点となるが,従来日本の対策ではあまり省みられなかった。BCG接種に代わる化学予防の強化はその重要な課題である。患者の早期発見のためには,臨床での診断を遅らせないように医師の卒前,卒後の研修が重要である。同時に無差別の定期検診よりも,接触者検診および社会的リスク階層への検診の強化が必要である。
    進展:患者発生が身体的および社会経済的リスク階層に集中している現在,患者発見と同様,それ以上に治療の管理(規則的受療の確保)は重要である。すでに現在でも結核の治療成績は必ずしも良好でないが,今後はさらに悪化する恐れがある。
  • 倉島 篤行
    2001 年52 巻5 号 p. 377-382
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    80年代後半,全地球規模で結核は増加の一途を辿り,これに伴う多剤耐性結核蔓延等の深刻な事態は,再興感染症としての結核の制圧を緊急の課題とした。1994年,米国CDCは結核菌診断検査の新たな目標を提言し,コッホの結核菌発見以来約100年間,基本的に変化のなかった結核診断技術は,今日新たな技術の導入で大きく変化しつつある。
    最もインパクトをもたらしたのは結核菌検出での核酸増幅法および,菌種同定での核酸ハイブリダイゼーション法である。これらはいくつかの短所もあるが,迅速性において極めて優れ,従来法との併用で大きな効果を発揮している。また近年普及しつつある自動化液体培養システムは,従来の固形培地よりも高感度であり菌検出期間も大幅に短縮された。
    これらを総合的な結核菌検出システムとして運用し,かつ国際的な整合性をも考慮して,結核菌検査指針が20年ぶりに改訂された。
    今後さらに薬剤感受性試験ではDNAチップなどを応用した薬剤耐性遺伝子を効率よく検出するシステムの登場などに期待がもたれている。
    しかし,今日結核診断の8割以上が医療機関への有症状受診でなされていることを考えると,これらの新しい診断技術は重要であるが,高齢者などのハイリスクグループを意識した日常診療での結核を疑う姿勢が依然最も重要である。今日,若年世代の結核既感染率の低下に伴い,一人の結核発病は容易に周囲への集団感染を起こす状況になっている。発病者自身の治療とともに,周囲からの発病阻止という複眼的視野が求められている。特に重要なことは初回治療を完遂することであり,この意味で現在WHOはDOTS(直接服薬確認,短期化学療法)を結核制圧の最も重要な戦略としている。ニューヨーク市は1992年全面的にDOTを導入し,治療完了率を94.8%とし,結核罹患率をピーク時の約1/3に低下させることに成功している。現在わが国でもDOTが一部の地域,一部の対象に導入されつつあるが,さらに広範囲な実施が要求されている。
  • 高木 秀朗, 堀口 利之
    2001 年52 巻5 号 p. 383-386
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    本邦における結核症患者は化学療法の進歩などにより年々減少していた。しかし近年の新登録患者数の増加に伴い,喉頭結核も増加傾向にあると言われている。このような背景を踏まえたうえで,われわれは,自験例7症例に文献上の報告例を加え検討した。7症例中4例は声帯,3例は喉頭蓋に肉芽腫性の病変を認めた。また,6例が嗄声を主訴とし3例において咽頭痛が出現していた。近年の報告では嗄声を主訴とする症例がほとんどで,自験例においても傾向は一致した。胸部X線検査,喀痰検査,ツベルクリン反応などは補助診断として有用であり,胸部X線検査においては6例に活動性病変を疑う所見を認めた。喀痰塗抹・培養検査では4例より結核菌を検出し得たが,他の3例は陰性であった。最終的には悪性腫瘍との鑑別を念頭におき,生検による病理学的検索によって診断を確定した。喉頭結核は肺結核に続発し発症するとされており,結核菌を排菌していることが多い。早期診断,早期治療が感染予防の上で重要である。
  • 狭窄の外科治療を中心に
    稲垣 敬三
    2001 年52 巻5 号 p. 387-394
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    気管気管支結核は本来肺結核の二次的疾患と考えられ,診断治療は肺結核に準じ結核菌の証明と抗結核化学療法が基本となるが,本疾患の病変が中枢気道に局在し,様々の気道狭窄を生じるため,その臨床像,診断法,治療に特殊性がある。過去22年間に気管支鏡下に気管気管支結核と診断された236例のうち,狭窄のため外科療法を必要とした48例(20.3%)を対象に検討を行った。男女比は3:5であった。主病変は,左側33例,右側15例で,気管病変を合併していたものが4例あった。また左主気管支が,31例で65%を占めていた。主な手術適応は,無気肺(閉塞性肺炎を含む)20例,荒蕪肺12例,日常生活に支障をきたす狭窄症状16例であった(重複あり)。術式は,単純肺切除術が19例,外科的気道再建術が29例であった。しかし対象期間の前半期症例では,経過観察期間が長く罹患部より末梢の肺が,荒蕪肺などのように不可逆的変化を起こしたのちに単純肺切除術が行われたのに対し,後半期では罹患後比較的早期に気道再建術が施行されたものが多くなったのが特徴的であった。治療成績は,周術期合併症を11例(22.9%)に認めたが,術死なく全例が症状改善し社会復帰した。術前後の肺機能(一秒量/予測肺活量:INDEX)の変化で,気道再建術群で平均9%の改善が得られ,本疾患に対し機能温存改善を目的とする気道再建術の有用性が認められた。
  • 宍戸 真司
    2001 年52 巻5 号 p. 395-399
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    結核の感染は,特殊の場合を除き空気感染によって生じるので,院内における空気感染予防対策が主体となる。
    まず,採用時に40歳未満の医療従事者にツベルクリン二段階試験を施行し,ツベルクリン反応のベースライン値を把握しておくことは極めて大切である。可能ならば,既採用者にもこのツベルクリン二段階試験を施行しておくことが望ましい。次に,感染性患者と接したり,それらの気管支鏡検査時等には結核感染予防用に作製されたN95微粒子用マスクの着用を励行する。結核病棟や結核病室の空調を他の病棟や病室から独立させるとか,結核病棟や結核病室の換気の整備等,ハードの面における根本的な改善も必要とする。
    結核既感染率が低下し,結核に対する免疫を有していない若い世代がほとんどを占めている現状において,院内感染を生じる危険性は今後さらに増加することが予想される。結核の感染予防には,早期診断が最も重要である。院内結核感染予防マニュアルを作成し,結核に対して常に関心をもって日常診療にあたることが大切である。
原著
  • シスプラチン単剤に対するシスプラチン+ピラルビシン併用療法の有効性の検討
    吉崎 智一, 志賀 英明, 真田 順一郎, 寺山 昇, 松井 修, 石崎 純子, 宮本 謙一, 河合 晃充, 古川 仭
    2001 年52 巻5 号 p. 400-408
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    シスプラチン(CDDP)を用いた超選択的動注化学療法は有用な頭頸部癌臓器温存療法として認識されつつある。今回,下咽頭癌および喉頭癌に対し,CDDPと作用機序の異なるピラルビシン(THP)を併用した,よりインパクトの高い化学療法の有効性を検討するため無作為前向き研究を行った。
    200 cGy/day ×30-35の放射線療法中に超選択的動注化学療法を2から3回施行した。CDDP群(CDDP 100 mg/body)とCDDP+THP群(CDDP 100 mg/body +THP 20 mg/body)に被検者を無作為に割り付けた。CDDPの中和剤チオ硫酸ナトリウムを経静脈的に投与した。チオ硫酸ナトリウムの投与量はCDDPとTHPによるAH-66細胞増殖抑制作用の阻害効果を参考にして決定された。
    CDDP群はCR 9/12 (75%)PR 2/12 (17%),CDDP+THP群はCD 7/11 (64%)PR 1/11 (9%)の奏効率であった。有害事象の発生はCDDP+THPに咽喉頭粘膜炎の重症化する傾向がみられた(p =0.11)。
    下咽頭癌喉頭癌に対する超選択的動注化学療法においてはCDDP群に対するCDDP+THP群の有用性は認められず,むしろ,有害事象が増加する傾向があることが判明した。
症例報告
  • 白石 浩, 老木 浩之, 石川 雅洋, 田中 由基夫, 村田 清高
    2001 年52 巻5 号 p. 409-413
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は咽頭痛,左下頸部痛を主訴に来院した25歳の男性である。CTやMRIにて甲状腺左葉に膿瘍を認めたため,抗生剤投与で消炎後,下咽頭食道造影を行ったところ,両側の下咽頭梨状窩瘻の診断を得た。外科的に左側の瘻孔摘出術を行う際,ピオクタニンで瘻管を染色して容易に摘出できた。現在まで再発を認めていない。
  • 原 浩貴, 今手 祐二, 堀池 修, 奥田 剛, 山下 裕司
    2001 年52 巻5 号 p. 414-419
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    深頸部感染症は高齢者や糖尿病等の基礎疾患を持つ患者に発症した場合,時に致死的になる疾患である。したがって治療は救命を第一に考える必要があり,治療後にいろいろな後遺症を残すことがある。今回われわれは,頸部のガス壊疽の治療後に嚥下障害をきたした症例を経験した。症例は糖尿病を基礎疾患としてもつ80歳の女性で,頸部の外切開と可及的なデブリードメントを行い救命し得たが,消炎後に嚥下障害をきたした。ビデオ造影検査の結果,喉頭の挙上が不良であったため嚥下改善手術として舌骨吊り上げ術,輪状咽頭筋切断術を行った。術後2カ月間の嚥下リハビリテーションを行った結果,経口摂取良好となり退院となった。嚥下障害の原因は,深頸部感染症の高度の炎症と舌下筋群などのデブリードメントの影響によるものと考えられた。
  • 中村 真美子, 平林 秀樹, 浅井 忠雄, 深美 悟, 秋山 香織, 内藤 文明, 馬場 廣太郎
    2001 年52 巻5 号 p. 420-425
    発行日: 2001/10/10
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル 認証あり
    55歳の男性が上部消化管内視鏡検査施行後に頸部腫脹と頸部痛を主訴に来院した。頸部CTにて深頸部膿瘍が認められ,内視鏡検査によって下咽頭食道穿孔が生じ,それによる膿瘍形成と思われた。
    本例は検査終了後,患者が強い疼痛を訴えたが,経口摂取を中止せず,また基礎疾患として糖尿病が存在したため短期間に膿瘍が生じたと思われた。
    治療は,大量のガスを伴った膿瘍で上気道圧迫症状が認められたため,直ちにDeanの切開法および気管開窓術を施行した。術中大量の腐敗臭を伴った膿汁が存在しており,嫌気性菌が疑われたため切開創は開放創とし,経過観察を行った。創の閉鎖は膿汁排出の消失を確認後に行った。
    深頸部膿瘍の診断には頸部単純X線撮影とX線CT検査が有用であった。特に頸部X線CTは膿瘍の程度や縦隔内への波及の有無を見るためには必須の検査と考えられた。
    内視鏡による穿孔は,小穿孔や感染徴候のないものでは抗生物質投与と絶飲食で治癒可能であるが,穿孔が大きいものや深頸部膿瘍などの合併症が生じた場合は,直ちに外科的治療を行うべきである。また,嫌気性菌が疑われるときは頸部切開創を開放創にし,炎症の消退を確認してから二次的に閉鎖することが望ましい。
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