80年代後半,全地球規模で結核は増加の一途を辿り,これに伴う多剤耐性結核蔓延等の深刻な事態は,再興感染症としての結核の制圧を緊急の課題とした。1994年,米国CDCは結核菌診断検査の新たな目標を提言し,コッホの結核菌発見以来約100年間,基本的に変化のなかった結核診断技術は,今日新たな技術の導入で大きく変化しつつある。
最もインパクトをもたらしたのは結核菌検出での核酸増幅法および,菌種同定での核酸ハイブリダイゼーション法である。これらはいくつかの短所もあるが,迅速性において極めて優れ,従来法との併用で大きな効果を発揮している。また近年普及しつつある自動化液体培養システムは,従来の固形培地よりも高感度であり菌検出期間も大幅に短縮された。
これらを総合的な結核菌検出システムとして運用し,かつ国際的な整合性をも考慮して,結核菌検査指針が20年ぶりに改訂された。
今後さらに薬剤感受性試験ではDNAチップなどを応用した薬剤耐性遺伝子を効率よく検出するシステムの登場などに期待がもたれている。
しかし,今日結核診断の8割以上が医療機関への有症状受診でなされていることを考えると,これらの新しい診断技術は重要であるが,高齢者などのハイリスクグループを意識した日常診療での結核を疑う姿勢が依然最も重要である。今日,若年世代の結核既感染率の低下に伴い,一人の結核発病は容易に周囲への集団感染を起こす状況になっている。発病者自身の治療とともに,周囲からの発病阻止という複眼的視野が求められている。特に重要なことは初回治療を完遂することであり,この意味で現在WHOはDOTS(直接服薬確認,短期化学療法)を結核制圧の最も重要な戦略としている。ニューヨーク市は1992年全面的にDOTを導入し,治療完了率を94.8%とし,結核罹患率をピーク時の約1/3に低下させることに成功している。現在わが国でもDOTが一部の地域,一部の対象に導入されつつあるが,さらに広範囲な実施が要求されている。
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