日本気管食道科学会会報
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53 巻, 1 号
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原著
  • 田村 悦代, 北原 哲, 甲能 直幸, 小倉 雅實
    2002 年 53 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    両側声帯の正中固定によって生じる呼吸困難に対する声門開大術には多くの方法があるが,1984年Ejnellらによって報告された方法は,喉頭の正常構造を破壊しない,手技が比較的簡便であるなどの利点があり,本邦においても1990年以降行われるようになってきた。本法は,手技は比較的容易ではあるが,実際に甲状軟骨に刺入する針の位置や披裂軟骨直前に廻した糸の牽引方向などに関する詳細な報告がなく,症例に応じて行っているのが現状と思われる。そこで,摘出喉頭を用い,刺入する針の位置や牽引する糸の方向と,声門の開大度の関連につき検討した。
    甲状軟骨翼に垂直に牽引した際の声門面積は,牽引前に比較して106.2%であり,声門正中線に対して垂直に牽引した際の声門面積は牽引前の112.7%であり,声門正中線に対して垂直に牽引したほうが,約6%程度大きな声門面積が得られた(p<0.05, paired t-検定)。
    以上の結果から,声門正中線に垂直に声帯を外側に牽引する方法によって,十分な声門開大が得られると同時に,牽引する糸を誘導する針の刺入部位を術前のCT像から算出することができ,透見できない喉頭内腔へ針を刺入するジレンマが解決できると思われた。
  • 鶴田 至宏, 長谷川 太郎, 清水 智之, 小川 佳伸
    2002 年 53 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1993年から当科では喉頭麻痺声帯に対して,声帯の体積を増やす注入材として自家脂肪を用いている。われわれの方法で移植自家脂肪が長期にわたって生着しているかどうかを確かめるために,移植自家脂肪の長期観察を行った。
    対象は10名の片側喉頭麻痺患者で,うち2名はCT画像による評価を行った。全例で最長発声持続時間が延長し(平均時間4.9秒→13.6秒),CTで評価した2例では46カ月,55カ月の後でも注入部位に脂肪組織の存在が確認された。
    以上の結果から,自家脂肪組織は採取や注入時に損傷を受けなければ声帯内で生着可能であることが示された。
  • 逆流防止弁付き回転T字管の考案
    磯貝 豊, 浜田 はつみ, 福田 宏之, 楠山 敏行, 藤本 裕一, 塩谷 彰浩, 大久保 啓介, 齋藤 康一郎, 茂呂 和久, 神崎 仁
    2002 年 53 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭ファイバースコピーにおける致命的な問題点は,赤玉現象(スコープの最短観察深度よりも手前に観察対象粘膜が近接することが原因)と白玉現象(唾液などの分泌液の近接が原因)である。これを解決するために,ファイバースコープの先端にフードを装着する方法について報告してきたが,今回,既存の処置用ビデオ鼻咽喉スコープの先端に透明フードを装着し,有効長を500 mmに延長したビデオ下咽頭スコープを試作し,持続送気(300∼500 ml/分)しながら下咽頭ファイバースコピーを行う方法について検討した。
    1.画質は精細できわめて優れておリ,赤玉現象は吸引時を除いて発生しなかった。
    2.持続送気用の回転T字管を鉗子チャンネルに装着すると,注水時と吸引時に送気管側への逆流現象を生じるため,逆流防止弁付き回転T字管を考案した。
    3.食道内腔での吸引機能に問題がある。
    4.下咽頭ファイバースコピーにおいては,左右交互に両側の梨状陥凹から挿入して,合計2回観察しないと反対側の病変を見逃す危険性がある。
  • 塚原 清彰, 山口 宏也, 古川 政樹, 新美 成二
    2002 年 53 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    嚥下は一般的に口腔期,咽頭期,食道期の3期に分類される。今回ストローを用いて吸啜,嚥下する際の口腔期,咽頭期について研究した。ファイバースコープ,超音波断層法,圧センサーを用いて行った。対象は健康な成人男子2名で,これらの結果を同時記録した。すべての器機にキャリブレイションを行い,予備実験としてphonation/ka/,long/S/発話,吸気,呼気,ハミングを行った。結果:吸啜開始時,舌と軟口蓋が接触し,その後離開した。ファイバースコープや口腔,咽頭圧センサーでも同様の所見を認めた。今後更なる研究が望まれる。
  • 吉川 琢磨, 吉田 晋也, 浅川 剛志
    2002 年 53 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    当科において,甲状腺摘出術を施行した55例について,超音波ガイド下FNAと術後病理診断の一致率とシンチグラフィー検査の診断精度について検討したところ,諸家の報告とほぼ同様であった。
    Tcシンチでcold, Tlシンチでdelay陽性と悪性を示唆するパターンが見られても,FNAの結果がclass 1,2であれば腺腫様甲状腺腫のことが多く,class 3でも超音波,CT検査での高輝度石灰化,壁の不整などの所見がなければ,病理組織学的に良性のことが多く,手術をせずに経過観察でよいものと考えられた。腺腫様甲状腺腫症例を検討しても同様の結果であった。
    濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別は細胞診や超音波では難しいが,今回の検討では,細胞診とシンチグラフィーと画像診断を加えた総合診で診断できた。
症例報告
  • 平山 方俊, 山中 盾, 新田 光邦, 廣島屋 孝, 山崎 公義, 廣瀬 肇, 岡本 牧人
    2002 年 53 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    一側声帯に多発した声帯嚢胞の1例を報告した。症例は53歳女性で,嗄声を主訴に当科を受診した。ポリープ様声帯と右声帯嚢胞と診断し,全身麻酔下に喉頭微細手術を施行した。右声帯に3つの嚢胞を認めた。嚢胞の大きさは,それぞれ4×2×2, 2×1×1, 1×1×1 mmでいずれも乳白色の薄い被膜に被われていた。病理組織学的にはいずれも上皮性嚢胞だった。外傷が反復して声帯上皮細胞の一部が上皮下に封入されて発育し,多発性に嚢胞を形成したと考えた。
  • 加藤 洋治
    2002 年 53 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    ムンプスは日常的な疾患であり合併症も多い。しかし咽喉頭浮腫を合併したという報告はない。今回,ムンプスに合併した咽喉頭浮腫の成人2例を報告する。2例とも呼吸困難を訴えた。1例は予防的に気管切開を要した。流行性耳下腺炎患者が呼吸困難を訴えた場合には,下気道のみならず上気道も精査しなければならない。
  • 生野 登, 荒川 圭三, 蒲 伸泰, 平林 秀樹, 馬場 廣太郎, 江口 光興, 坪井 龍生
    2002 年 53 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    舌根部甲状舌管嚢胞は,新生児期における重篤な呼吸障害を引き起こすため早期診断・治療が必要である。今回われわれは,新生児期に発症した1例を報告した。症例は男児,在胎40週,正常分娩,生下時体重3,222 g。生後第3週より喘鳴・哺乳障害が出現。内視鏡下に舌根部正中の腫瘤を認め,CT・Tcシンチグラフィー・エコー所見は嚢胞性疾患を示唆した。喘鳴の増強とともに呼吸状態の悪化を認め,全身麻酔下に嚢胞摘出術を施行。経口・経鼻挿管不能のためマスク麻酔下に気管切開を行った。嚢胞壁が厚く経口的摘出困難にて外切開術を施行した。術後,経過良好。
    甲状舌管嚢胞は舌内発生がまれとの報告があるが,剖検では時々みられることがある。症状の発現時期には成人例と小児例がある。特に,小児では生下時のみならず,本例のように生後数週経ての発現があり,この時期に喘鳴のある患児に対し積極的な内視鏡検査が必要と思われる。鑑別診断にCT・Tcシンチグラフィー・エコー検査が有用であった。
  • 山下 勝, 平野 滋, 金子 賢一, 児嶋 久剛, 岸本 正直, 大森 孝一
    2002 年 53 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部食道の陳旧性腔外魚骨異物例を報告した。症例は32歳の女性で5カ月前にカレイを摂食したことによる異物であった。他院にての食道鏡検査上,異物は発見されず,1カ月後のCT検査結果から異物の残存が指摘された。症状が軽微であったため放置していたが,誤飲から5カ月後,摘出を希望して来院。頸部外切開にて頸部食道筋層内に埋没する異物を粘膜損傷なく摘出し得た。頸部食道の陳旧性腔外異物例は渉猟し得た限り,国内2例目であった。
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