1868年Kussmaulが47 cm,外径1.3 cmの真鍮製の直管を呑刀師の体位で食道に挿入,Desormeauxの光源装置で食道内を観察したのが食道鏡検査のはじめとされている。1900年代になり,Killian,Brünings,Jacksonらがそれぞれのタイプの内視鏡を作製,久保,小野両教授によりわが国にも紹介されたが,全国229病院へのアンケート調査では,76%がJacksonタイプの食道鏡を慣用していた。一方,食道ファイバースコープはLoPresti (1964)により開発され,ACMIより市販された。本邦では1965年以降オリンパス光学と町田製作所より開発されたが,とくにオリンパスEFの操作部の押釦方式は左手指の操作で送気,送水,吸引を自動的に行うことができ,食道の内視鏡検査に有用であった。後に解像力の改善や先端アングル機構の改良がみられ,さらに細径の食道ファイバースコープ(EF-P
2)の出現で食道および胃上部のスクリーニング検査が大変容易になった。同じ頃,食道から胃・十二指腸球部を1本の内視鏡でみる上部消化管汎用ファイバースコープが開発され,これも初期の太く,曲率半径の大きいアングル機構から,細径で先端は小さい曲率半径で200度近くまで屈曲するGIF-P
2となり,さらに細径ながらチャンネル内径が大きく通常型の処置具の使えるGIF-XQとが市販されて,食道から胃・十二指腸下行脚までのスクリーニング検査のための汎用ファイバースコープとして定着した。これに伴って短い食道専用機種は姿を消し,short GIF-P
3, short GIF-XQとして特注となった。
さて,診断面ではヨード法を主体とする色素内視鏡検査がひろく行われてきた。Schiller (1933)の子宮頸癌の診断にはじまるが,Voegeli (1966), Brodmerkel (1971)らの食道疾患への応用が報告され,1974年以降わが国でも早期癌の診断を主体に臨床研究がすすんだ。粘膜癌の発見数が年々増加してきたのも本法の普及によるところが大きい。これに伴って治療法も侵襲の少ない内視鏡的粘膜切除術が1980年代の後半よりさかんに行われてきた。手技として,2チャンネル法,EEMR-tube法,EMR cap法などがポピュラーである。本法の絶対的適応を,m
1,m
2癌で3×3 cm以下または1/3周以下,病巣数3個以内,術前リンパ節転移陰性としたものとし,良好な臨床成績をあげてきた。手技の習熟と新しい工夫とで,病巣の大きさについてはかなりの適応の拡大が示され,今後は癌の深達度への適応の拡大が検討されている。
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