日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
53 巻, 2 号
選択された号の論文の53件中1~50を表示しています
寄稿
  • 遠藤 光夫
    2002 年 53 巻 2 号 p. 55-64
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1868年Kussmaulが47 cm,外径1.3 cmの真鍮製の直管を呑刀師の体位で食道に挿入,Desormeauxの光源装置で食道内を観察したのが食道鏡検査のはじめとされている。1900年代になり,Killian,Brünings,Jacksonらがそれぞれのタイプの内視鏡を作製,久保,小野両教授によりわが国にも紹介されたが,全国229病院へのアンケート調査では,76%がJacksonタイプの食道鏡を慣用していた。一方,食道ファイバースコープはLoPresti (1964)により開発され,ACMIより市販された。本邦では1965年以降オリンパス光学と町田製作所より開発されたが,とくにオリンパスEFの操作部の押釦方式は左手指の操作で送気,送水,吸引を自動的に行うことができ,食道の内視鏡検査に有用であった。後に解像力の改善や先端アングル機構の改良がみられ,さらに細径の食道ファイバースコープ(EF-P2)の出現で食道および胃上部のスクリーニング検査が大変容易になった。同じ頃,食道から胃・十二指腸球部を1本の内視鏡でみる上部消化管汎用ファイバースコープが開発され,これも初期の太く,曲率半径の大きいアングル機構から,細径で先端は小さい曲率半径で200度近くまで屈曲するGIF-P2となり,さらに細径ながらチャンネル内径が大きく通常型の処置具の使えるGIF-XQとが市販されて,食道から胃・十二指腸下行脚までのスクリーニング検査のための汎用ファイバースコープとして定着した。これに伴って短い食道専用機種は姿を消し,short GIF-P3, short GIF-XQとして特注となった。
    さて,診断面ではヨード法を主体とする色素内視鏡検査がひろく行われてきた。Schiller (1933)の子宮頸癌の診断にはじまるが,Voegeli (1966), Brodmerkel (1971)らの食道疾患への応用が報告され,1974年以降わが国でも早期癌の診断を主体に臨床研究がすすんだ。粘膜癌の発見数が年々増加してきたのも本法の普及によるところが大きい。これに伴って治療法も侵襲の少ない内視鏡的粘膜切除術が1980年代の後半よりさかんに行われてきた。手技として,2チャンネル法,EEMR-tube法,EMR cap法などがポピュラーである。本法の絶対的適応を,m1,m2癌で3×3 cm以下または1/3周以下,病巣数3個以内,術前リンパ節転移陰性としたものとし,良好な臨床成績をあげてきた。手技の習熟と新しい工夫とで,病巣の大きさについてはかなりの適応の拡大が示され,今後は癌の深達度への適応の拡大が検討されている。
  • 佐々木 英忠
    2002 年 53 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    老人性肺炎を起こす人は大脳基底核に脳血管障害を有する。そのため,ここに存在する黒質線状体の働きが悪くなり,ドーパミンの合成が減少する。ドーパミンの低下は頸部知覚神経節で作られるサブスタンスPの合成の低下を伴う。
    サブスタンスPは迷走神経や舌咽神経の知覚枝を逆行性に咽頭や気管に分布し,嚥下反射と咳反射を正常に保つ役割をしている。サブスタンスPの低下により両反射が障害され,口腔内唾液を口腔内雑菌とともに不顕性誤嚥を起こす。毎日起こしていて,いつか調子の悪いときに肺炎に至る。
    不顕性誤嚥を防ぐには第一にドーパミンを補充してやればよい。アマンタジンはドーパミンの合成をうながす。アマンタジンを3年間投与したところ,非投与群に比べて,肺炎の発生を約5分の1に減少せしめた。
    次にサブスタンスPが減少しているのであるから,サブスタンスPを上昇させるとよいことになる。カプサイシンを少量口腔内に入れることによって,サブスタンスPは強力に放出され,嚥下反射は正常化した。ある程度辛い食物を食べることも不顕性誤嚥を予防するために必要と考えられた。
    ACE阻害剤はサブスタンスPの分解酵素も阻害するため,サブスタンスPは少ないながらも分解されずに残り,正常な濃度になる。ACE阻害剤を投与することにより,肺炎発生を2年間で3分の1に減少せしめた。
    口腔ケアをすることにより,不顕性誤嚥はしても口腔内雑菌が少なければ肺炎には至らないと考えられる。2年間口腔ケアをすることによって,肺炎発生を非口腔ケア群に比べて40%だけ減少せしめた。
特集1 シンポジウム1:気管食道科領域の重複癌
  • 加藤 治文, 鶴丸 昌彦
    2002 年 53 巻 2 号 p. 69-70
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
  • 坪井 正博, 林 和, 永田 真一, 大平 達夫, 筒井 英光, 池田 徳彦, 中嶋 伸, 古川 欣也, 奥仲 哲弥, 中村 治彦, 小中 ...
    2002 年 53 巻 2 号 p. 71
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
  • 川原 克信, 白日 高歩, 今村 明秀, 加藤 寿彦
    2002 年 53 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1995年1月より2001年9月までに治療を行った頭頸部,食道,肺重複癌症例は12例であった。頭頸部・食道重複癌は6例で頭頸部癌の2.0%,食道癌の4.4%,頭頸部・肺重複癌は2例で頭頸部癌全体の0.7%,肺癌の0.3%,食道・肺重複癌は4例で食道癌の2.9%,肺癌の0.6%であった。頭頸部癌の内訳は咽頭5例,喉頭2例,副鼻腔1例であった。頭頸部癌と食道癌の重複頻度が頭頸部癌と肺癌の重複頻度より有意に高く,第1癌発症時の平均年齢は肺・食道重複癌が71歳で最も高齢であった。第1癌発見後第2癌発現までの期間は同時から10年で,第2癌がスクリーニングで発見されたのは2例のみであり,他の10例は何らかの自覚症状を契機に発見され,病期はI・II期癌が58%,III・IV期癌が48%で,第2癌が必ずしも早い時期に発見されるとは限らなかった。頭頸部癌先行もしくは同時性の食道癌に対しては胸腔鏡下食道切除,T3癌には放射線治療が行われた。肺癌先行の食道重複癌では右開胸による食道切除が行われた。食道・頭頸部重複癌の第1癌切除後のKaplan-Meier法による5年生存率は65%,肺・頭頸部重複癌の第1癌治療後の5年生存率は100%であった。肺・食道重複癌の第1癌(肺癌)切除後の5年生存率は50%であったが,第2癌(食道癌)の切除後2年以上生存例はない。
    頭頸部・食道・肺重複癌症例では,頭頸部癌がコントロールされれば肺癌,食道癌はそれぞれの原発性癌に準じた根治的切除が可能な症例の予後は期待できる。
  • 飯笹 俊彦, 穴山 貴嗣, 馬場 雅行, 斎藤 幸雄, 関根 康雄, 鈴木 実, 吉田 成利, 伊豫田 明, 安福 和弘, 本橋 新一郎, ...
    2002 年 53 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    原発性肺癌切除例における咽喉頭食道領域の重複癌について臨床的検討を加え,他臓器発生重複癌症例ならびに非重複例との比較した。1985∼1999年に切除した原発性肺癌1,279例のうち他臓器重複癌128例(10.0%)を対象とした。重複臓器は,3重複以上を含め咽喉頭14例,食道12例,胃十二指腸24例,結腸直腸33例,肝胆膵17例,甲状腺3例,子宮卵巣10例,腎尿路12例,乳腺6例,前立腺5例,リンパ節その他3例であった。重複部位別に,咽喉頭食道領域群26例,非咽喉頭食道領域群102例ならびに非重複群1,151例に分類した。各群の平均喫煙指数は,それぞれ1,031, 693, 714で,咽喉頭食道領域群は他の2群に比べ有意に平均喫煙指数が高かった(p=0.0174, p=0.0192)。肺癌の組織型は,咽喉頭食道領域群,非咽喉頭食道領域ならびに非重複群における扁平上皮癌:腺癌はそれぞれ18:5例,32:61例ならびに394:648例と咽喉頭食道領域群は有意に扁平上皮癌が腺癌に比べ多かった(いずれもp<0.0001)。原発性肺癌を含む重複癌の発生率は増加傾向であり,肺癌および咽喉頭食道領域癌の重複癌症例は,肺癌では扁平上皮癌が多く,喫煙と強い関連性を有するものと考えられた。
  • 平井 敏弘, 山下 芳典, 吉田 和弘, 香川 佳寛, 檜原 淳, 井上 秀樹, 峠 哲哉
    2002 年 53 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道重複癌について,分子生物学および実験的なわれわれの知見について報告した。頭頸部治療後58例の食道生検組織を検索したところ,ルゴール不染症例は17例(29%)で,そのうちの7例(41%)がp53陽性であった。さらに,不染部のない41例のうち10例(24%)は,組織学的には異常がないもののp53陽性であった。また,食道主病変において,3つ以上のmarkerでmicrosatellite instability (MSI)を認めた症例のdysplasia 24病変と,MSIを認めなかった症例のdysplasia 17病変のMSIを検索したところ,前者では21病変(78%)がMSI陽性で,後者の場合には5病変(29%)だけがMSI陽性であった。以上のように,分子生物学的なmarkerを用いて食道重複癌の予知ができる可能性が示唆された。また,胃切除後患者では食道癌の発生率が高く,胃切除後に食道はアルカリ化の環境に曝されており,発癌実験では膵液の逆流が食道癌の発生に関与していることが示された。胃切除後の逆流予防はQOLのみならず,食道二次癌の発生予防にも役立つと思われた。
  • 多発癌・重複癌危険因子の多変量解析
    梶山 美明, 服部 公昭, 富田 夏実, 天野 高行, 関根 正幸, 岩沼 佳見, 鳴海 賢二, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2002 年 53 巻 2 号 p. 88-89
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
  • 大杉 治司, 高田 信康, 竹村 雅至, 木下 博明
    2002 年 53 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌との重複癌例における治療上の問題点について検討した。
    〈対象と方法〉1986年より1998年までの食道癌根治施行263例のうち,53例(20.2%)に他臓器重複癌を認めた。これら症例を対象に,臨床病理学的因子,治療法,予後について非重複癌例と比較検討した。
    〈結果〉対象53例中23例が同時性,30例が異時性であった。癌重複臓器は胃21例,頭頸部16例,肝3例,結腸3例,肺3例,乳腺3例,腎2例,前立腺2例,子宮2例で,白血病を1例に認めた。重複癌例と非重複癌例の臨床病理学的因子に差はなかった。胃癌先行あるいは同時性の18例中,胃が使用不可の14例では有茎空腸再建を8例,有茎結腸再建を6例に行った。食道癌切除後再建胃に癌を認めた3例では,1例に内視鏡下粘膜切除,1例に再建胃切除・有茎空腸再建を行った。他の1例は,TS-1投与によりCRで健存中である。頭頸部癌重複16例では,7例に切除が,9例に放射線・化学療法が施行された。重複癌例の食道切除後5年生存率は44%で,非重複癌例の40%と差がなかった。多変量解析では食道癌リンパ節転移の有無が最も有意な予後因子であった。
    〈結語〉食道癌根治切除例では約20%の高い頻度で重複癌を認めた。癌重複臓器は胃が最も頻度が高く,再建術式に工夫を要す。他臓器重複癌はそれのみでは予後不良因子ではなく,それぞれの癌に対する根治的治療が予後向上に最も重要である。
特集2 シンポジウム2:反回神経麻痺の病因と対策
  • 久 育男, 藤田 博正
    2002 年 53 巻 2 号 p. 95-96
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
  • 馬場 政道, 中野 静雄, 大脇 哲洋, 柳 正和, 池田 直徳, 夏越 祥次, 愛甲 孝
    2002 年 53 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道癌手術後の一過性あるいは永続的反回神経麻痺によるquality of life悪化を予防するためにリンパ節郭清手技を修正した。神経周囲でのクリップの多用,右側の前頸筋群や右下甲状腺動脈の気管への分枝の温存などである。食道癌根治切除例で退院時に反回神経麻痺を認め,術後1年間disease freeであった128例を対象とした。郭清手技の変更前(1993年以前)の63例(グループA)と1994年以降の65例(グループB)に分け,術後のquality of lifeを比較した。全切除例に対する退院時の耳鼻科医による反回神経麻痺の頻度は両群とも40%台であった。術後1年目のpersistent vocal cord paralysisの頻度はグループA:57.1%に対し,グループB:24.6%に減少した。さらに,severe hoarsenessを訴えた症例はグループA;28.6%からグループB:3.1%に減少した。術後の反回神経麻痺に伴う嗄声は,愛護的郭清手技や栄養状態の改善により軽減できる。しかし,永続的麻痺の症例ではその麻痺が適切に治療されるまではquality of lifeが阻害される。
  • 経内視鏡的声帯内コラーゲン注入療法
    日月 裕司
    2002 年 53 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    食道切除術後に声帯内注入療法を行った87例を対象とした。キシロカインで表面麻酔し,鼻腔から処置用気管支ファイバースコープを挿入した。注入針は金属製の外筒の先端から針先が4 mm出る内針を使用した。注入薬剤は3%アテロコラーゲンを用い,注入量は2 mlを基本とした。注入時期は術後7日以内27例,14日以内21例,30日以内19例であった。鼻出血を3例,喉頭浮腫のための気道閉塞感を2例,発熱を3例に生じた。声帯麻痺が回復した17症例に障害はみられなかった。肺炎の発生は術後7日以内注入27例中2例,14日以内注入21例中4例であり,声帯麻痺を主たる原因とする気管内挿管,気管切開,人工呼吸器管理,死亡はなかった。気管支ファイバースコープを用いた声帯内コラーゲン注入療法は,食道癌術後早期に施行可能であり,反回神経麻痺が確認され臨床的に咳嗽・喀出力の低下,誤嚥を認める症例の肺合併症対策に有効である。
  • 湯本 英二, 中野 幸治, 中本 哲也, 山形 和彦
    2002 年 53 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1976年10月から2001年6月までに,著者らが愛媛大学附属病院および熊本大学附属病院で経験した反回神経麻痺患者は601名で,年齢は60歳代,70歳代に多く,男性は女性の1.3倍であった。最初の10年間の術後性麻痺患者の割合が27.3%であったのに対し,1986年から1997年,1998年10月から2001年6月までの期間はそれぞれ50.6%,47.0%を占め,術後性麻痺の増加が明らかになった。術後性麻痺の原因は,甲状腺手術,挿管性麻痺,食道癌手術,心臓大動脈疾患の手術,肺癌手術の順に多かった。たとえ原疾患の経過が順調でも,術後性反回神経麻痺による高度の嗄声や嚥下障害をきたして日常生活に支障をきたすことが稀ではない。著者らは71症例に対して積極的に音声外科手術(おもに披裂軟骨内転術と甲状軟骨形成術I型)を行ってきた。術後発声機能は全例で改善したが正常範囲まで至らない例が半数弱にみられた。披裂軟骨内転術を施行した38名中3名で呼吸困難のために気管切開を行った。1名は健側声帯の外転が十分でないことが,他の2名は食道癌術後で再建胃管内容物の逆流によって喉頭痙攣をきたしたことが原因と考えられた。
  • 梅野 博仁, 千年 俊一, 白水 英貴, 濱川 幸代, 森 一功, 松永 敦, 中島 格
    2002 年 53 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    声帯内シリコン注入(以下,シリコン注入)症例349例と声帯内自家脂肪注入(以下,脂肪注入)症例18例を対象に,反回神経麻痺の病因,手術手技,手術前後の音声機能を比較して,両者の適応を考察した。その結果,脂肪注入はシリコン注入と同様,劇的な音声改善をもたらすことがわかった。注入物質としては脂肪のほうが安全であり,麻痺の病因を問わず使用できる。羸痩の激しい患者では脂肪採取が困難なので,そのような麻痺症例(肺癌,食道癌などの姑息治療例で余命の少ない場合など)に対しては外来でのシリコン注入はよい適応であると考えられた。
  • 宇野 敏行, 豊田 健一郎
    2002 年 53 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1988~2000年(13年間)の当科における両側声帯麻痺症例は55例で,全声帯麻痺症例の9.8%であった。病因は,非術後性では特発性麻痺が最も多く12例であった。術後性麻痺では,食道癌手術後が最も多く7例であった。初期治療として気管切開・開窓術を施行した例が26例で,そのうち4例はのちに声帯外方移動術(Ejnell法)を施行した。初期治療なくEjnell法を施行した例は4例であった。
    Ejnell法の長所は,(1)声帯へ直接的な侵襲を加えないために,術後の嗄声が比較的軽度,(2)組織を切除することがないため,やり直しや他の方法を選択することが可能,(3)術後に声帯運動が回復した場合は糸を切断すれば原状復帰が可能,などである。
    最近Lichtenbergerが開発したendo-extralaryngeal needle carrierを用いて声帯外方移動術を行い良好な結果を得た。これはEjnell法の利点に加え,(1)直達喉頭鏡下に喉頭内腔より針を刺入するので,適正な位置に糸を配することが容易である,(2)甲状軟骨を露出する必要がないので手術侵襲が少ない,ことがあげられ,本法は声帯外方移動術に有用であると考える。
  • 塩谷 彰浩, 齋藤 康一郎, 渡部 和彦, 茂呂 和久, Paul W. Flint, Bert W. O'Malley Jr., 福田 宏 ...
    2002 年 53 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    反回神経麻痺治療の背景にある問題として,脱神経に伴う神経線維再生不良,運動神経細胞死,運動終板の変性,筋の萎縮等があげられる。これらの問題に対し,運動神経筋機構に対する強力な再生促進効果や保護効果を持つ神経栄養因子の応用が期待される。しかし,神経栄養因子タンパクそのものを投与する場合は有効濃度の維持が必要で,局所注射や全身持続投与では応用が困難であり,遺伝子導入の手法(遺伝子治療)が有用となる。この方法では,1回の導入で数週間から1カ月にわたり,局所的持続的タンパク発現が実現できる。ラットを用いて反回神経切断直後に甲状披裂筋に筋細胞,神経細胞の両者に対して強力な栄養作用を持つIGF-I遺伝子をformulated plasmidを用いて導入したところ,遺伝子導入後4週の時点で,有意な筋萎縮改善,末梢神経再生,運動終板保護効果を認めた。迷走神経を頸静脈孔レベルで抜去し,疑核運動神経細胞死誘発モデルを作製し,頸静脈孔からアデノウイルスを用いて運動神経細胞に対して強力な栄養作用を持つ,GDNF遺伝子導入を行ったところ,遺伝子導入後2週,4週の時点で,疑核運動神経細胞死が有意に抑制された。これらの結果から反回神経麻痺の遺伝子治療は,既存の手術の代用か増強手段として用い得ると考えられる。
特集3 ビデオシンポジウム:下咽頭,頸部食道癌の機能温存手術
特集4 パネルディスカッション1:気管食道科領域癌治療の現況と将来展望
特集5 パネルディスカッション2:呼吸困難対策の進歩
特集6 ワークショップ:癌免疫療法・化学療法の新知見
特集7 ビデオワークショップ:内視鏡的・内視鏡下治療の最前線
feedback
Top