日本気管食道科学会会報
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53 巻, 3 号
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原著
  • T2放射線照射による非制御例を中心に
    石田 良治, 山田 弘之, 藤田 健一郎, 徳力 俊治
    2002 年 53 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1986年から2000年までに当科にて1次治療を行ったT1, T2喉頭癌86例を対象とした。T1症例の内訳は,声門癌53例,声門上癌4例であり,T2症例では,声門癌24例,声門上癌5例であった。5年粗生存率はT1症例で88.4%,T2症例で81.2%であった。5年喉頭保存率は,T1で94.7%,T2で45.1%とT2例において有意に低下していた。初回治療で喉頭保存に失敗した症例を検討したところ,前連合および声門下に進展する症例が多い傾向にあったことから,腫瘍進展の把握が不十分であること,放射線制御困難な症例においても初回治療において放射線療法を選択していたことが考えられた。今後の対策としては,画像診断を用い腫瘍進展範囲を明確にした上で,前連合や声門下に広く進展する症例など,放射線により制御困難と考えられる症例に対しては,初回治療において喉頭部分切除術などの外科的切除を選択すべきと考えた。
  • 千々和 秀記, 千々和 圭一, 梅野 博仁, 中島 格
    2002 年 53 巻 3 号 p. 250-255
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部外切開で摘出した咽頭食道異物13例について検討し,典型例2症例を提示した。魚骨6例,義歯5例でその他針1例,腕時計1例であった。部位は食道入口部5例,頸部食道3例,下咽頭腔外3例,頤舌骨筋内1例,椎前筋膜内1例であった。魚骨6例中2例に膿瘍形成を認めたが,異物の嵌在期間との関係はなかった。義歯異物症例すべてに精神疾患を認めており,このような患者に対しては義歯作製時より誤飲を想定した対応が必要と考えられた。
  • 塚原 清彰
    2002 年 53 巻 3 号 p. 256-263
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    喫煙者と非喫煙者の口腔咽頭動態の違いについてファイバースコープ,超音波断層撮影,圧センサーを用いて検討した。対象は5人の喫煙者と6人の非喫煙者で,これらの結果を同時記録した。すべての器機に校正を行い,予備実験としてphonation/ka/, long/S/発話,吸気,呼気,ハミングを行った。
    結果:喫煙者と非喫煙者では,喫煙時異なった舌および軟口蓋の動きが認められた。喫煙者では喫煙開始と同時に舌と軟口蓋が接触し,その後離開した。一方,非喫煙者では舌と軟口蓋は接触しなかった。いずれの方法の観察法でも同様の所見が得られた。
  • 肺転移検索目的で行う胸部単純X-p検査の意義
    池田 陽一, 久保田 彰, 古川 まどか, 佃 守
    2002 年 53 巻 3 号 p. 264-270
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    頭頸部癌1次治療後に肺転移検索目的で行う胸部単純X-p検査の意義を検討した。1次治療後の胸部画像検査は,1~6カ月ごとの単純X-pと,1年に1~2回のCT検査を行っている。1987年以降当科を受診した遠隔転移および重複癌のない頭頸部癌新鮮例655例中,局所制御後に肺病変が出現したものは27例(4.1%)あり,23例が単純X-pで,4例がCTで発見された。その内訳は転移性肺癌22例,原発性肺癌5例であった。肺病変判明までの期間は平均23.0M(カ月)(1.9~90.9M)で,肺癌判明後の生存期間は平均11.5M(0.3~57.6M)で,5年生存率は0%であった。Wilcoxon法で生存率の有意差検定を行うと,良好な予後を認めたのは組織別にみた腺様嚢胞癌のみで,他はすべて有意差を認めなかった。以上より,1次治療後の単純X-pで肺転移,原発癌を発見しても予後不良であり,手術・放射線により明らかな延命は認められなかった。胸部単純X-p検査の再考とともに,治療については外来化療などQOLに配慮することが重要であると考えられた。
症例報告
  • 高木 秀朗, 堀口 利之, 阿美 貴久, 鈴木 衞
    2002 年 53 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭裂は喉頭気管食道裂の一分症であり,極めて稀な先天奇形である。今回われわれは先天性食道閉鎖症,鎖肛,副耳を伴った喉頭裂を経験したので報告する。
    本症例は生後間もなくより嗄声と軽度の誤嚥を認めており,精査目的のため満6カ月時に耳鼻咽喉科外来を受診した。喉頭内視鏡,下咽頭・食道透視の結果,喉頭裂II型(Benjamin-Inglis分類)との診断に至った。当初より呼吸器症状が比較的軽度であり,徐々に改善傾向にあったため,現在に至るまで手術は行わず経過観察中である。
    本症例の経過は,喉頭裂に伴う呼吸器症状が成長とともに改善が見込めることを示唆している。
  • 田中 信三, 平塚 康之, 安里 亮, 伊藤 壽一
    2002 年 53 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭の声門上部を合併切除する梨状陥凹癌の下咽頭部分切除において誤嚥を防止する手術法を考案した。患側の喉頭蓋と披裂部を切除後,舌骨半部を胸骨舌骨筋が付着したまま甲状軟骨と喉頭蓋軟骨に固定し喉頭蓋を再建する。胸骨舌骨筋を健側の披裂部断端に縫合して披裂部の隆起を形成する。遊離前腕皮弁を用いて,再建した声門上部を被覆し,梨状陥凹を再建する。
    本手術を梨状陥凹癌T2N0例に行った。術後3週目に気切口を閉鎖し経口摂食を開始した。術後,音声は正常であった。呼吸機能も嚥下機能も良好で,呼吸困難や誤嚥は生じなかった。
  • 吉野 和美, 野中 聡, 片田 彰博, 国部 勇, 林 達哉, 原渕 保明
    2002 年 53 巻 3 号 p. 280-284
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    輪状甲状靱帯の穿刺による小型気管内チューブ留置は,気管切開術より簡便で短時間に施行することが可能である。そのため,上気道閉塞時の緊急気道確保を目的に多用される。また最近では喀痰排出を目的に施行される報告も散見され,その適応が徐々に拡大する傾向がみられている。今回われわれが経験した小型気管内チューブ留置によって,甲状軟骨を穿通したため嗄声と誤嚥をきたした症例と,皮下気腫を呈した症例から,小型気管内チューブの適応の有無やチューブ留置の際の問題点をあげた。小型気管内チューブ留置はあくまでも緊急の気道確保を目的に施行するべきであり,また本方法が適切に普及するために,耳鼻咽喉科医は他科からの依頼に応じ,状況に応じた適切なアドバイスを行うことも重要と考えられた。
短報
  • 梅野 博仁, 濱川 幸世, 権藤 久次郎, 白水 英貴, 吉田 義一, 中島 格
    2002 年 53 巻 3 号 p. 285-288
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル 認証あり
    成人10名にカプサイシンを10-6 mol/mlに溶解させた蒸留水を口腔内に噴霧し,噴霧前と噴霧後の唾液中に含まれるサブスタンスP(以下SPと省略)の濃度を測定した。同様に,成人10名にカプサイシンを1枚につき6×10-8 mol程度含有した市販のガムを使用して,ガムを噛む前と噛んだ後の唾液中SPの濃度も測定した。その結果,カプサイシン投与後,ガムを噛んだ後,ともに有意な唾液中のSPの上昇を認めた。同様に筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,眼咽頭型筋ジストロフィー症,ギランバレー症候群,脊髄小脳変性症患者でも,カプサイシン投与でSPが有意に上昇した。したがって,カプサイシン入りガムを噛むことで咀嚼・嚥下の訓練になり,さらに唾液中のSPが上昇することで嚥下反射が起こりやすくなることが期待できる。嚥下訓練にカプサイシン入りガムを用いるのは有用と考えられた。
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