日本気管食道科学会会報
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54 巻, 6 号
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原著
  • 井口 芳明, 西山 耕一郎, 正来 隆, 岡本 牧人
    2003 年54 巻6 号 p. 387-393
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    両側喉頭麻痺の発症頻度は少ないが呼吸困難,音声障害,嚥下障害を起こし,それらに対して対応が必要である。今回われわれは開院以来の音声外来に登録された両側喉頭麻痺症例について臨床的に検討した。症例は1971年7月から2002年11月までに当科を受診し,両側喉頭麻痺と診断治療した28例,男性17例,女性11例である。平均年齢は男性61歳,女性は51歳であった。主訴は嗄声が12例,呼吸困難が9例であった。嚥下障害は28例中11例に認められた。受診時の声帯の位置は両側正中固定が12例,副正中位が7例,中間位は2例,不全麻痺が5例であった。麻痺の原因は手術に続発した麻痺が14例と多く,甲状腺手術後が9例,食道腫瘍術後が2例,胸部外科手術に続発したのが3例であった。腫瘍が原因としたのは5例,特発性と考えたのは7例,長期挿管が原因としたのは1例,異時性に麻痺となったのは2例であった。治療はほとんどの症例で気管切開術が行われていて,3例だけが行われていなかった。声門を開大する手術をしたのは12例で,声門前方開大術が9例で最多であった。自然治癒したのは3例で5カ月以内であった。声門開大術は発症後6カ月以降に行うのが妥当と考えられた。
  • 正来 隆, 廣瀬 肇, 西山 耕一郎, 井口 芳明, 山本 一博, 竹田 昌彦, 中島 正己, 臼井 大祐, 猪 健志, 八尾 和雄, 岡本 ...
    2003 年54 巻6 号 p. 394-400
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    1971年8月から2002年12月までに北里大学病院手術室で摘出した喉頭異物11例について検討した。異物の嵌入部位は声門下が9例,声門が1例,声門から気管が1例であった。異物は魚骨4例,ピーナッツ3例,義歯,発光ダイオード,画鋲,挿管チューブが各1例であった。気管切開術を行ったのは11例中4例であった。重大な合併症として術後肺水腫が1例,死亡が1例あった。
  • その基礎形態学的および臨床的研究
    三枝 英人, 田沼 久美子, 中村 毅, 愛野 威一郎, 粉川 隆行, 岩崎 智治, 新美 成二, 八木 聰明
    2003 年54 巻6 号 p. 401-415
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    披裂軟骨脱臼症は,その発症頻度は多くないものの,例えば気管内挿管などの喉頭内腔への鈍的損傷や医療行為に続発して起こることが多い。過去の報告例の多くは,主に病歴や,臨床症状,喉頭内視鏡所見によって経験的にその診断が行われていた傾向にある。また,CTなどの画像診断の有用性や,内喉頭筋の筋電図により反回神経麻痺と鑑別診断を行って診断するなどの報告もあるが,内喉頭筋の筋電図は必ずしも容易な検査ではなく,CT画像から喉頭の複雑な軟骨間の位置関係を理解することは一般耳鼻咽喉科医にとっては難しい。さらには,披裂軟骨の脱臼方向が前方なのか,後方なのかについての鑑別や,その診断に基づいた適切な整復の方法もいまだ確立されていない状況である。したがって,より確実で,かつ患者の負担の少ない診断方法の確立が必要である。
    今回,われわれは解剖体から得られた摘出喉頭から披裂軟骨脱臼のモデルを作製し,これをもとに形態学的な研究を行った。前方脱臼モデルでは,声帯は弛緩した状態に陥っており,披裂軟骨筋突起を外側輪状披裂筋の走行方向に牽引し,披裂軟骨を内転させた状態にすると脱臼側声帯の弛緩はさらに強くなり,この時披裂軟骨は外上方へ変位し,声帯突起が正中方向に異常突出することが観察された。後方脱臼モデルでは,声帯全体が引き伸ばされ,緊張した状態にあった。披裂軟骨筋突起を外側輪状披裂筋の走行方向に牽引し,披裂軟骨を内転させた状態にすると,声帯はさらに緊張し,披裂軟骨が外上方に変位した。
    次に,過去に披裂軟骨脱臼症と診断され,整復術が行われた症例(前方型10名,後方型6名)について,前述の形態学的研究の結果に基づくretrospectiveな検討を行った。ビデオ喉頭内視鏡検査では,前方脱臼の場合,脱臼側の声帯は弛緩した状態で,これが発声時にさらに強くなり,また声帯突起が正中方向に異常突出する。後方脱臼の場合には,声帯前後径は引き伸ばされ,緊張した状態にあり,これが発声時に強くなるように観察された。単音節/he/反復発声時の喉頭正面からのビデオX線透視画像では,前方脱臼の場合でも後方脱臼の場合でも,脱臼側の声帯が上外方に変位し,披裂軟骨の上部構造もこれに伴って変位することが確認された。輪状披裂関節付近の触診では,後方脱臼の場合に,同部の腫脹と圧痛を認めた。一方,CTでは,矢状断像で,後輪状披裂靭帯が描出されているスライスでは披裂軟骨脱臼の状態が描出され得たが,それ以外の部分,もしくは断層面では有意な所見は指摘し得なかった。これらの臨床例から得られた所見は,基礎形態学的研究の結果とよく一致していた。
    以上のことより,披裂軟骨脱臼症の診断にあたっては,まず単音節反復発声時の喉頭正面からのビデオX線透視で,披裂軟骨脱臼の確認を行い,その後,喉頭内視鏡や輪状披裂関節の触診により,脱臼の方向を判定するのが最も容易で,確実,かつ侵襲の少ない診断方法であると考えられた。
  • 後藤 理恵子, 星川 広史, 森 望, 印藤 加奈子, 市原 典子
    2003 年54 巻6 号 p. 416-421
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    誤嚥をきたし,リハビリテーションで改善のみられない難治性嚥下障害の患者に対して,嚥下性肺炎の防止や患者のQOL向上のために誤嚥防止手術を選択することがある。当科ではこれまでに,原疾患が神経難病の患者18例に対して,誤嚥防止目的のために気道食道の分離術を行った。原疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)が11例,パーキンソン病が3例と多く,術式は,気管食道吻合術7例,喉頭全摘出術9例,喉頭全摘出術+咽頭弁形成術2例であった。ALSでは唾液や水分でのむせによる苦痛や呼吸困難から手術を選択するものを多く認めた。一方,それ以外の神経難病では嚥下性肺炎の反復により手術を選択するものがほとんどであった。術後は18例中17例で経口摂取が可能(14例で全量経口摂取可能)となったが,原疾患が進行性であるため,経過とともに経口不良となる症例を多く認めた。しかし,本来の目的である誤嚥の防止ははかれており,肺炎の防止,喀痰吸引回数の減少,そしてより長く経口摂取が可能となりQOLが向上するという点から,神経難病においても誤嚥防止手術は有用であると思われた。
  • アスピリン喘息合併の有無による比較
    大竹 里可, 伊藤 浩一, 大木 幹文, 大越 俊夫
    2003 年54 巻6 号 p. 422-427
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    アスピリン喘息(以降AIA)には高頻度に鼻茸が合併することが知られている。しかしその成因と本体についてはいまだ不明な点が多い。そこで今回われわれは鼻茸症例をAIA群,アレルギー陽性群,アレルギー陰性群の3群に分類し,その生理学的パラメーターの検討と,アストグラフによるメサコリン鼻誘発試験による下気道の過敏性の比較検討を行ったところ,メサコリン鼻誘発試験前後の1秒量の変化率においてAIA群は他の2群に比べ有意に高値であった。このことは同じ鼻茸症例でもAIAの鼻茸症例ではメサコリンに対する下気道過敏性が高いことを示している。鼻茸症例をこの3群に分類し,メサコリン鼻誘発試験を行うことは下気道過敏性を臨床的に把握するのに有意義であると思われた。
  • 堀口 章子, 下出 祐造, 足立 真理, 友田 幸一, 早川 忍, 岩井 大
    2003 年54 巻6 号 p. 428-433
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    当科では1998年から喉頭癌11例,下咽頭癌3例の合計14例に喉頭摘出後の代用音声として新型ボイスプロテーシスであるProvox 2を用いている。当科でのProvox 2を使用した会話獲得率はTEシャント90%,TJシャント75%,全体では85.7%であった。また,Provox 2を用いたシャント発声では,TEシャントの場合,全例C4からC5付近でおよその位置は下咽頭収縮筋の甲状咽頭筋付近に新声門が形成されており,TJシャントの場合,振動源の位置については当科では,一定の傾向はみられず,腫瘍の切除範囲や遊離空腸の長さに影響されると推測された。
  • 渡瀬 文貴, 徳丸 岳志, 奥野 敬一郎, 渡辺 尚彦, 調所 廣之, 杉内 智子
    2003 年54 巻6 号 p. 434-438
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは過去2年間に膠原病が基礎疾患にあった深頸部膿瘍3症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
    3症例とも膠原病治療のため長期の副腎皮質ホルモン内服の継続,あるいは既往があった。合併症のない深頸部膿瘍の平均入院期間が3週間前後に比べ,膠原病合併例では6週間以上に及んだ。入院期間が延長した理由として,長期の副腎皮質ホルモン治療がもたらす,免疫力の低下,易感染性,疼痛に対する閾値の上昇により症状発現の遷延化が考えられた。しかし,基礎疾患としての膠原病は,深頸部膿瘍の治療遷延の因子にはなり得るが,予後不良の因子にはならないと推測した。
病例報告
  • 上野 正勝, 大杉 治司
    2003 年54 巻6 号 p. 439-444
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺癌の原発巣が腺扁平上皮癌で転移リンパ節に腺癌成分と扁平上皮癌成分の両方を認めたのは本症例が初報告である。本症例は1995年に左頸部の硬結を指摘され,5年後に急速増大を認め原発巣を切除した。同時に切除した転移リンパ節からは扁平上皮癌成分は認めなかった。しかしその1年後に増大を認め切除した右腋窩リンパ節に腺癌成分と扁平上皮癌成分を認めた。初回手術の1年7カ月後に死亡した。
    甲状腺腺扁平上皮癌は予後が悪く術前診断は困難である。これまでの報告例でも甲状腺腫の存在期間は1~60年とさまざまであるが,急速増大後は大部分が2年以内に死亡している。このような臨床経過から甲状腺腫瘤が出現し始めたときは腺癌のみが存在し,腺癌から腺扁平上皮癌への移行の開始後に腫瘤の急速増大が起こるのではないかと考えられた。そのため臨床的には腫瘤が増大傾向になれば速やかに切除することが望まれる。
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