咽後間隙血腫は比較的稀な疾患であり,最も多い原因は外傷である。今回,我々は血友病患者に合併したきわめて稀な咽後間隙血腫例を経験したので報告する。
症例は18歳,男性で血友病Aにて凝固因子製剤が定期的に投与されていた。上気道炎に続いて右頸部腫脹と呼吸困難が出現したため当科を受診した。初診時に咽頭粘膜下出血,咽頭後壁の腫脹,喉頭蓋の血腫を認め,第VIII因子活性が3%未満であった。喉頭ファイバー検査にて気道が確認できないほどの上気道狭窄を認めたため凝固因子製剤を投与後,緊急気管切開術を行った。CT, MRI, 血管造影検査を施行し,上気道炎を契機に発症した咽後間隙血腫と診断した。入院後は適切な凝固因子製剤の投与にて血腫は自然消失した。
本症例は血友病患者に発症した咽後間隙血腫としては第5例目(本邦1例目)であり,気管切開術を施行したものとしては初めての報告である。
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