日本気管食道科学会会報
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55 巻, 3 号
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原著
  • とくに上方充填型Tチューブの有用性について
    齋藤 康一郎, 塩谷 彰浩, 大久保 啓介, 茂呂 和久, 荒木 幸仁, 池田 麻子, 福田 宏之, 小川 郁
    2004 年 55 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    瘢痕性喉頭気管狭窄は,時に非常に難治性で,治療に苦慮することも多い疾患である。今回我々は1989年2月から2000年2月までに慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科で治療した瘢痕性喉頭気管狭窄症例11例について検討を行った。誘因は,喉頭内腔手術操作によるものが多く,手術回数は平均で14.1回にも及んでおり,治療の難しさをうかがわせた。我々は治療としてTチューブを積極的に用いてきたが,今回検討した症例でも8例に使用しており,どの症例も抜去後瘢痕性の狭窄は起こしておらず,6例で気管口閉鎖が可能で,瘢痕性の喉頭気管狭窄に対して,6カ月程度のTチューブの留置は,大変有効と思われた。また,1996年に我々が報告して以来(日気食会報,47: 124-128, 1996)症例によって用いている,上方充填型のTチューブは,声帯を越えて声門上まで留置でき,しかもチューブ上方が閉鎖端になっており誤嚥がない。また,チューブ上方は中空でなく充填されているために内腔の保持力も強く,高い有用性が期待できる。しかし,チューブ内の痰詰まりやチューブの破損も経験しており,チューブの形状,材質は,改善の余地があると思われた。
  • 花本 美和子, 土師 知行, 末廣 篤, 竹林 慎治, 守屋 真示, 堀 龍介, 山本 達之, 八木 伸也
    2004 年 55 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    ポリープ様声帯の6症例に対し,喉頭手術用のブレードをつけたマイクロデブリッダーシステムを用いて手術を行った。マイクロデブリッダーのみでsucking, squeezing, pinchingなどの操作が同時に行えるため通常の方法より簡便で手術時間を短縮することができた。また,術後PPQ, APQも改善し,患者に十分満足される音声の改善が得られた。今回使用したブレードの形状は先端がなお大きく,角度も調節できないためやや使用しづらく,ブレード先端の位置や吸引の強さ,回転数をうまくコントロールするのに注意を要するが,高度のポリープ様変性症例ではとくに有用であると思われた。
  • 石井 甲介, 安達 秀雄, 椿 恵樹, 太田 康, 篠崎 剛, 山本 昌範
    2004 年 55 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    1999年4月より2002年3月までの3年間に自治医科大学附属大宮医療センター心臓血管外科にて胸部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行い,その術後に反回神経麻痺を生じた症例(手術性麻痺症例)14例について検討した。その結果,胸部大動脈瘤手術症例の9%に術後,反回神経麻痺が生じた。経過を追えた手術性麻痺11例のうち4例で,声帯の可動性が回復した。また,声帯の可動性が回復しなかった症例でも,リハビリテーションにより症状が改善した症例が多数見られた。瘤の大きさや位置は麻痺の予後にはさほど関係せず,置換する人工血管の両端の位置が麻痺の予後に深い関係を持つと考えられた。反回神経麻痺は患者のQOLを損なうのみでなく,長期的には誤嚥性肺炎などにより,生存率の低下をもたらすと考えられる。従って,反回神経麻痺症例に対しては,積極的にリハビリテーションの指導と必要に応じて外科的治療を考慮すべきであると考えられた。
  • 橋本 大門, 八尾 和雄, 西山 耕一郎, 井口 芳明, 正来 隆, 和田 昌興, 牧 敦子, 堀口 利之, 岡本 牧人
    2004 年 55 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    1971年7月から2003年2月までの間に北里大学病院へ入院のうえ治療した急性喉頭蓋炎237例について検討した。気道確保群は21例であった。気道確保群と非気道確保群を比較した。その結果,気道確保の指標として(1)起坐呼吸がある,(2)喉頭蓋腫脹が高度で披裂部腫脹がある,(3)症状発現から24時間以内に呼吸困難が生じている。これらが重要と考えた。
  • 西村 俊郎, 山田 和宏, 三輪 高喜, 古川 仭
    2004 年 55 巻 3 号 p. 253-257
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    当科では未治療の進行下咽頭癌(III期,IV期)には遊離空腸移植を伴った根治術を施行しておりその結果を分析して生存率に影響を与える因子について検討した。調査は過去のカルテを参照して行った。1988年1月から2000年12月までに初回治療をうけた35例を検討対象とした。全例において全周性の下咽頭喉頭全摘術と遊離空腸移植が行われていた。生存率はカプラン・マイヤー法にて求め,特異的な因子によって各群についてログランク試験にて生存曲線を比較した。また生存率に関連する因子をコックスの比例ハザードモデルで検討した。
    全体の粗生存率は32.9%で病因特異的生存率は36.2%であった。T因子の小さいものほど(T2),T因子の大きなものより(T3,T4)生存率が有意に良好であった(p=0.025)。全周性の下咽頭喉頭全摘術と遊離空腸移植は根治性の最も高い治療法のひとつであるが,進行癌での成績は必ずしも良好とはいえない。現在では化学放射線治療が第一選択となりつつあるので,将来は本治療法との比較検討が必要である。
症例報告
  • 山田 啓之, 相原 隆一
    2004 年 55 巻 3 号 p. 258-264
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    咽後間隙血腫は比較的稀な疾患であり,最も多い原因は外傷である。今回,我々は血友病患者に合併したきわめて稀な咽後間隙血腫例を経験したので報告する。
    症例は18歳,男性で血友病Aにて凝固因子製剤が定期的に投与されていた。上気道炎に続いて右頸部腫脹と呼吸困難が出現したため当科を受診した。初診時に咽頭粘膜下出血,咽頭後壁の腫脹,喉頭蓋の血腫を認め,第VIII因子活性が3%未満であった。喉頭ファイバー検査にて気道が確認できないほどの上気道狭窄を認めたため凝固因子製剤を投与後,緊急気管切開術を行った。CT, MRI, 血管造影検査を施行し,上気道炎を契機に発症した咽後間隙血腫と診断した。入院後は適切な凝固因子製剤の投与にて血腫は自然消失した。
    本症例は血友病患者に発症した咽後間隙血腫としては第5例目(本邦1例目)であり,気管切開術を施行したものとしては初めての報告である。
  • 島田 剛敏, 杉山 庸一郎, 松波 達也, 中井 茂, 久 育男
    2004 年 55 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    咽頭腔外異物について頸部外切開法と口内法により摘出した2症例を経験した。症例1は刺入部位が咽頭腔内からは確認できず,舌骨の高さで外側方向に針金が刺入しており,先端が総頸動脈周囲に及んでいたため,損傷を避けることを第1に考慮し,外切開法を選択し問題なく摘出した。症例2は刺入部位が肉芽腫様病変により確認可能であり,口蓋扁桃中央の高さで上下方向に剌入していたためデービスの開口器による口内法で摘出した。異物摘出時の副損傷を避けることが最も重要で,盲目的操作を避け,十分な視野を確保,摘出後のドレナージの経路も考慮しておく。よって懸垂頭位,開口器使用で直達鏡を使用せずに異物に到達できれば,口内法で摘出可能と考え,それ以外の場合は舌根に刺入したものを除いて,直達鏡での摘出の適応は少なく,頸部外切開法が優れていると考えられた。
  • 佐藤 克郎, 佐藤 雄一郎, 花澤 秀行, 渡辺 順, 高橋 姿
    2004 年 55 巻 3 号 p. 270-275
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    再興感染症として注目される結核は肺とともに気管や気管支にも発生し気道狭窄をきたす。今回われわれは,気管支結核の治療に際し長期間気管内挿管をした後に生じた気管気管支狭窄の1例を経験した。症例は33歳女性,20歳時に気管支結核の治療中11カ月間の経鼻気管内挿管が行われ,その後徐々に呼吸困難が進行,気管と右主気管支に高度な狭窄をきたした。初回治療として経皮的心肺補助法を併用し気管切開,KTP-LASERによる狭窄部位の蒸散を行ったが再狭窄を繰り返し,約2年の間にLASERによる再蒸散を2回,Tチューブ留置を2回要した。その後Tチューブは劣化し抜去,気道の観察のため気管切開孔は開存させたままレティナを装用し経過観察中である。本症例の右主気管支病変は当初の気管支結核による影響が,計3回の手術を要した気管狭窄は気管に挿入した装具の刺激の関与が考えられた。本症では気道の形態が1例ごとに異なるため,個々の症例に対する装具の刺激を少なくするきめ細かい治療計画が重要である。また気管切開孔からの長期経過観察は有用であるが,その閉鎖の時期判断が今後の課題と考えられた。
  • 川上 理郎, 伊藤 加奈子, 吉村 勝弘, 田中 斉
    2004 年 55 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    初回手術後25年を経て再手術を行った甲状腺乳頭癌症例を経験したので報告した。患者は56歳女性で,約3年前から左頸部腫瘤に気付くも放置していた。平成15年3月18日大阪府済生会吹田病院耳鼻咽喉科を受診,左側頸部に直径15 cm以上の巨大な易出血性の腫瘤を認めた。既往歴として約25年前に甲状腺癌で甲状腺亜全摘と左保存的頸部郭清術を受けていた。左頸部腫瘤は皮膚を一部付けて一塊として摘出できた。摘出した頸部腫瘤の重量は900 gであった。本例のように甲状腺乳頭癌は長期間経過したのち再発することがあり,注意深い長期の経過観察が必要である。
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