日本気管食道科学会会報
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55 巻, 4 号
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原著
  • 愛野 威一郎, 三枝 英人, 粉川 隆行, 中村 毅, 新美 成二, 八木 聰明
    2004 年55 巻4 号 p. 305-311
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    慢性咳嗽の原因疾患は咳喘息,アトピー咳嗽,喉頭アレルギー,胃食道逆流症,薬剤性咳嗽など多岐にわたり,それらの一部はその疾患概念さえも,まだ完全に確立されておらず,一般臨床の場において,その鑑別・診断に苦慮することは少なくない。
    今回われわれは,内科にて,臨床症状や一般検査所見などからは診断に至らず,また,その制御が困難であった慢性咳嗽症例11例につき,その喉頭所見を中心に検討を行った。
    喉頭所見では,全症例とも,披裂間部粘膜を中心とした声門後部の異常所見を認めた。10例は披裂間部粘膜の発赤・腫脹を認めたため,胃食道逆流症との関係が疑われた。しかし,胸焼けや呑酸などの典型的な自覚症状はなく,上部消化管に対する諸検査で有意な異常を示した割合は低かった。しかし,プロトンポンプ阻害薬試験投与による診断的治療を行ったところ,10例とも約4週間で咳嗽は消失した。なお,喉頭所見の改善は,症状の改善より速く,投与開始後約2週間で認められ始めた。
    その他の1例については,披裂間部粘膜が蒼白性に腫脹していた。プロトンポンプ阻害薬の試験投与を行ったが,改善せず,その後,喘息に移行した。なお,この間,喉頭所見は不変であった。
    以上のことから,慢性咳嗽の鑑別診断および治療中の効果判定に際し,喉頭所見は,重要な手掛かりとなる可能性のあることが示唆された。
  • アンケート調査の検討
    畑中 政実, 森 正博
    2004 年55 巻4 号 p. 312-318
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    摂食障害を持つ脳性麻痺児30例の家族に対し(1)乳幼児期の感覚運動体験,(2)嚥下・捕食・咀嚼別の摂食・嚥下機能,(3)食事姿勢についてアンケートを実施し,対象児の新版K式発達検査の結果と比較した。感覚運動体験と下顎の運動に有意な関連が認められ,姿勢・運動および認知・適応,言語・社会領域の発達と嚥下機能,認知・適応および言語・社会領域の発達と下顎の運動との間に有意な関連が認められた。脳性麻痺児の各種発達の程度と摂食・嚥下機能との関連を知ることは訓練を進めていくうえで,重要な指標となり得ることが示唆された。
症例報告
  • 島田 剛敏, 山本 聡, 四ノ宮 隆, 中井 茂, 久 育男
    2004 年55 巻4 号 p. 319-323
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    高度病的肥満患者に対する気管切開術を行う経験を得た。患者は36歳,男性。180 cm,推定体重200 kg,body mass index (BMI)は57.8,高度肥満であった。呼吸困難のため当院救急外来を受診,肺炎で内科に入院,気管内挿管,人工呼吸器管理を行ったが,長期間の人工呼吸器管理が必要となり当科に気管切開術が依頼された。触診で甲状軟骨が確認できたため気管に到達可能と予測し,全身麻酔下に気管切開術を行った。視野確保のため輪状軟骨が予想されるレベルに10 cmの皮膚切開を行い,広頸筋直下に広く剥離した。次に気管軟骨と皮膚を縫合できるようにしてカニューレの装着を容易にする目的で,胸骨舌骨筋までの脂肪を7×7×4 cmにわたって摘出した。中気管切開で逆U字に軟骨弁を作成,皮膚と3-0ナイロン糸で縫合した。死腔になる気管切開孔周囲にはペンローズドレーンを挿入し1週間留置した。内腔10 mmのアジャストフィットカニューレは人工呼吸器管理下の2カ月間使用した。声帯運動,嚥下には問題なく,CTで気管の狭窄を認めなかったため,カニューレを抜去し,気管切開孔閉鎖が可能であった。
  • 佐藤 克郎, 花澤 秀行, 佐藤 雄一郎, 高橋 姿
    2004 年55 巻4 号 p. 324-329
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    気管癌は稀な疾患で,気道狭窄が出現するまで自覚症状に乏しいことがあり,喉頭までの観察では発見が困難なことから,胸部CTやMRIで発見された時点では進行例が多い。今回気管膜様部原発の腺様嚢胞癌症例を経験したので報告する。症例は72歳男性,呼吸困難自覚3カ月後に他院のCT, MRIで気管後壁または食道原発の腫瘍を認め当科を紹介された。生検法を検討中,呼吸困難が増悪したため行った気管切開孔より腫瘍を直接生検し,腺様嚢胞癌の診断を得た。喉頭気管食道切除術,遊離前腕皮弁での再建,両頸部郭清術を施行し,術中病理で陰性の下方断端が永久診断で一部陽性であったため術後照射と化学療法を追加,再発を認めていない。気管癌の診断法は種々検討されてきたが,CTやMRIの普及で存在診断は容易になったと思われる。しかし生検法に苦慮し,結局気管切開孔から施行し得た。気管上部の,特に後壁から発生した腫瘍では考慮すべき方法と思われた。気管癌の治療では手術が重要であるが,気管上部では喉頭,下部では気管分岐部や気管支の処理が問題で術式の選択は容易ではない。本症例では喉頭全摘を含め拡大切除を行い術後照射を追加した。本症の治療においては,基本的には拡大手術が望ましいと思われるが,QOLを考慮した保存的治療や術後照射などの補助療法も検討すべきと考えられた。
  • 宮本 真, 湯川 尚哉, 辻 裕之, 中江 香, 山下 敏夫
    2004 年55 巻4 号 p. 330-333
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    スクリュープレートによる頸椎前方固定術は頸椎の不安定性の改善に対し一般的になってきている。ロッキングプレートシステムは最近この目的のためよく使用されている。金属に関する合併症は一般的にごくわずかとみられている。しかし,大きな合併症の1つにスクリューのゆるみや破損,移植片の脱転がある。それにより嚥下困難や食道穿孔を起こすかもしれない。今回はスクリューのゆるみが食道や気管を圧迫し,気道狭窄を起こした。
  • 立花 慎吾, 逢坂 由昭, 星野 澄人, 篠原 玄夫, 尾形 高士, 高木 融, 土田 明彦, 青木 達哉
    2004 年55 巻4 号 p. 334-339
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは食道,胃,中咽頭に発生した同時性3重複癌の1切除例を経験したので報告する。症例は71歳,男性。平成14年4月に左側口峡部に腫瘤を自覚し,徐々に嚥下時痛増強してきたため当院口腔外科受診,中咽頭癌の診断にて入院となった。入院後の上部消化管内視鏡検査によるスクリーニングにて胸部中部食道に0-Ipl+IIcの食道癌を認め,さらに胃体上部小弯および体中部後壁に0-IIbの多発胃癌を認めた。食道,胃,中咽頭の同時性3重複癌と診断し,右開胸開腹胸部食道全摘,両側頸部郭清,胃全摘,中咽頭腫瘍切除,胸骨後経路結腸再建術を一期的に施行した。病理組織診断では食道は深達度sm2の扁平上皮癌,胃は深達度mの腺癌が3病変の多発癌,中咽頭は深達度T2の扁平上皮癌であった。食道癌を含む同時性3重複癌に対する一期的切除術症例は稀であることから,文献的考察を加えて報告する。
  • 都築 秀明, 藤枝 重治, 坂下 雅文, 武藤 博之, 須長 寛, 伊藤 聡久, 斎藤 等
    2004 年55 巻4 号 p. 340-346
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    成人において呼吸困難をきたす甲状舌管嚢胞の報告は散見されるが稀である。今回甲状軟骨を破壊し,気道を圧迫することにより呼吸困難を呈した甲状舌管嚢胞の1例を経験したので,文献的考察を含め報告する。症例は82歳,女性。10年来の労作時呼吸困難を自覚するも放置していた。初診時,喉頭左側の腫脹および声門狭窄を認めた。内容液の吸引除去により一時的に呼吸困難が改善し,術前に気管切開は行わなかった。吸引細胞診,CT,MRI,PETの総合的所見から良性嚢胞性腫瘤が疑われ,全身麻酔下に腫瘤摘出術を施行した。腫瘤は長径35 mmの嚢胞で,舌骨との癒着および甲状腺へのびる索状物を認め,舌骨骨体とともに摘出した。咽喉頭粘膜を傷つけることなく摘出可能であった。腫瘤摘出後,甲状軟骨左翼上方約1/2の欠損を認めた。病理組織診断にて甲状舌管嚢胞と診断された。喉頭の腫脹は改善し術後8日目に退院となった。
  • 小西 ひろみ, 朝永 康徳, 坂口 喜清, 渡邊 雄介
    2004 年55 巻4 号 p. 347-351
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    食道穿孔は稀な疾患である一方で,診断,治療開始が遅れると,致命率が高く予後の悪い疾患である。患者は58歳の女性,発熱,咽頭痛を主訴とし,当科を紹介受診され,頸部食道穿孔による縦隔膿瘍と診断し保存的治療を行ったところ,良好な経過をたどり治療開始13日目から経口食開始,20日目に退院となった。12カ月後の現在,症状なく経過良好である。
  • 岸本 曜, 庄司 和彦, 鈴木 慎二
    2004 年55 巻4 号 p. 352-356
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    機能性副甲状腺嚢腫の1例を報告した。症例は72歳の女性であり,左頸部に径50 mm大の可動性を有する腫瘤を触知した。血清カルシウムは12.0 mg/dl,インタクトPTHは200 pg/mlと副甲状腺機能亢進を呈していた。超音波,CT,MRIにより左頸部から上縦隔に達する2房性の嚢胞性病変が描出された。腫瘤は甲状腺左葉背側に存在し気管を大きく右側へ圧排していた。摘出手術を行ったところ,術後血清カルシウムとインタクトPTHは正常化した。摘出標本の病理組織学的検査により副甲状腺腺腫の嚢胞性変化と診断された。
短報
  • 竹内 啓, 今川 博, 榊原 健一, 田山 二朗, 新美 成二
    2004 年55 巻4 号 p. 357-361
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/08/24
    ジャーナル 認証あり
    高速度デジタルカメラ(HSDC)は声帯振動を実際に観察できるシステムである。画像をコンピュータに取り込み様々な定量的評価を行うことができ,音声波形やEGGデータと比較し声門の閉鎖状態をキモグラフとして表示可能である。今回性能の向上した新型HSDCを用い,その臨床応用への可能性を検討した。
    方法:Photron社製のFastcam-MAX®&NEO®の2製品を試験した。Wolf社製,および永島社製の喉頭側視鏡にNisco社製アダプターを接続したものと,喉頭ファイバーではPentax社製(特別仕様)に永島社製アダプターを接続し使用した。被検者:男女各1名。撮影条件は解像度を256×256 (pixels),Frame rateは4000 fpsと2000 fpsとした。
    結果:従来のHSDCと比べ,小型軽量,記録時間の延長,画像のカラー化,情報転送速度の高速化が実現されている。最上位機種MAX®では4000 fpsで喉頭側視鏡,喉頭ファイバーともに十分な明るさであった。下位機種NEO®の喉頭側視鏡では4000 fpsなら利用可能だが,喉頭ファイバーの4000 fpsは画像が暗くなることがわかった。
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