慢性咳嗽の原因疾患は咳喘息,アトピー咳嗽,喉頭アレルギー,胃食道逆流症,薬剤性咳嗽など多岐にわたり,それらの一部はその疾患概念さえも,まだ完全に確立されておらず,一般臨床の場において,その鑑別・診断に苦慮することは少なくない。
今回われわれは,内科にて,臨床症状や一般検査所見などからは診断に至らず,また,その制御が困難であった慢性咳嗽症例11例につき,その喉頭所見を中心に検討を行った。
喉頭所見では,全症例とも,披裂間部粘膜を中心とした声門後部の異常所見を認めた。10例は披裂間部粘膜の発赤・腫脹を認めたため,胃食道逆流症との関係が疑われた。しかし,胸焼けや呑酸などの典型的な自覚症状はなく,上部消化管に対する諸検査で有意な異常を示した割合は低かった。しかし,プロトンポンプ阻害薬試験投与による診断的治療を行ったところ,10例とも約4週間で咳嗽は消失した。なお,喉頭所見の改善は,症状の改善より速く,投与開始後約2週間で認められ始めた。
その他の1例については,披裂間部粘膜が蒼白性に腫脹していた。プロトンポンプ阻害薬の試験投与を行ったが,改善せず,その後,喘息に移行した。なお,この間,喉頭所見は不変であった。
以上のことから,慢性咳嗽の鑑別診断および治療中の効果判定に際し,喉頭所見は,重要な手掛かりとなる可能性のあることが示唆された。
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