日本気管食道科学会会報
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56 巻, 1 号
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総説
  • 伊藤 裕之
    2005 年 56 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
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    手指で摘出した梨上気道異物症例と吸引器により摘出した豚肉上気道異物症例を呈示し, 当院における気道食片異物11例の統計とともに気道食片異物摘出法について検討した。全症例で異物は手指や器具で除去されており, ハイムリック法 (以下HM) は行われなかった。本邦ではハイムリック法は, 医療施設ではあまり行われておらず, 一般に言われているほど有効とは思われない。窒息の危険がある気道食片異物では, 手指を口から入れて, 異物の介在部位を診断し, 上気道異物の場合, 示指あるいは中指で異物を一側に寄せて, 気道を確保した後, 示指あるいは中指を異物の下面に回して掻き出す方法がある。この方法は異物介在部位の診断, 気道確保, 異物摘出が短時間にできる利点がある。手指で摘出困難な場合には, 輪状甲状間膜に太い静脈留置針を数本刺して, 気道確保した後に, 異物除去をするのがよいと考えた。下気道異物では, HMによる摘出は困難と考えられ, 気道確保を優先すべきであろう。HMや心肺蘇生術後には施行後には, 副損傷の有無を確認すべきである。
原著
  • 平野 滋, 永原 國彦, 森谷 季吉, 高北 晋一, 北村 守正, 柴山 将之, 藤原 和典, 大谷 哲之
    2005 年 56 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭癌は予後不良の疾患であり, しばしば咽喉食摘による拡大切除が必要となる。しかし, 喉頭全摘後のQOLの低下は患者にとっては深刻な問題である。われわれは進行癌においても極力喉頭温存術式を施行してきたが, 今回, その術後の発声状況について検討した。
    対象は下咽頭扁平上皮癌患者33例で, 約85%がstage III, IVの進行癌であった。喉頭を完全に保存したもの (‘保存群’) が5例, 喉頭部分切除 (‘部切群’) が13例, 喉頭半切 (‘半切群’) が3例, Pearson変法による喉頭亜全摘 (‘亜全摘群’) が12例であった。
    術後の発声は, 保存群, 部切群, 半切群のほとんどの症例で可能であり, 亜全摘群でも約半数で音声を使用できていた。結果, 全症例の約75%で音声を温存することができた。最長発声持続時間と日常生活上の会話機能評価は, 部切群, 半切群では概ね良好であったが, 亜全摘群ではばらつきが見られた。亜全摘群では発声可能であった症例の半数で日常生活に十分な発声ができていたが, その適応には他の要因を考慮する必要がある。
  • 栗田 知幸, 坂本 菊男, 千々和 秀記, 梅野 博仁, 中島 格
    2005 年 56 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは当科で経験した下咽頭梨状窩瘻10症例についての治療経験を文献的考察も含めて報告する。対象は1991年から2004年であり症例は2歳から11歳, 男性7例, 女性3例であった。術後観察期間は2カ月から13年1カ月であった。患側は全例左側であった。過去に切開排膿を受けていた症例は7例で, 他の3例も膿瘍の自潰を経験していた。全例に瘻管摘出術を行っていた。2002年以前は甲状腺患側切除も合わせて施行していたが, 2002年以降は3例に甲状腺保存を行っていた。手術後の経口摂食開始時期は2000年以降は術後3日目に下咽頭食道造影を行い, 摂食を開始していた。
症例報告
  • 塚原 清彰, 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 鈴木 衞
    2005 年 56 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    一側喉頭麻痺に対しては様々な外科的治療が行われている。われわれは一側喉頭麻痺症例に対して外側輪状披裂筋牽引術を行い良好な結果を得たので報告する。対象は2002年10月から2003年9月の間に東京医科大学耳鼻咽喉科にて一側喉頭麻痺と診断され, 外側輪状披裂筋牽引術を行った7症例 (男性5例, 女性2例) で, 術前, 術後の最長発声持続時間および聴覚印象的評価の比較検討を行った。全例でMPTは改善し, 聴覚印象的には7例中4例が術後G(0) に, 1例がG(1) へと改善した。外側輪状披裂筋牽引術は一側喉頭麻痺の外科的治療として有用であると思われた。
  • 横山 秀二, 渡邉 睦, 多田 靖宏, 鹿野 真人, 大森 孝一
    2005 年 56 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    喉頭に発生した血管平滑筋腫の症例を経験したので報告する。
    症例は73歳男性, 主訴はなし。腸閉塞のため近医外科にて手術を施行された際に, 麻酔科医により喉頭腫瘍を指摘され当科紹介された。喉頭ファイバーの所見は, 腫瘍は表面平滑で, 左披裂喉頭蓋ヒダに存在し, 喉頭蓋内面と左披裂部に接し声帯正中をわずかに越えていた。声帯への腫瘍進展はなかった。CTでは内部はほぼ均一, 境界明瞭であり, 腫瘍に一致した造影効果を認め, MRIではT1強調画像では低信号, T2強調画像では高信号, Gd造影にて増強効果を認めた。外来にて生検を行うも確定診断がつかず, 入院後喉頭直達鏡下生検を施行し, 血管平滑筋腫の疑いであった。後日, 中気管切開術を施行後, 喉頭直達鏡下手術にて腫瘍摘出を試みた。しかし腫瘍が大きく, 多量の出血を認めたため, 外切開による腫瘍摘出術を行った。摘出標本の病理組織検査では血管平滑筋腫の診断であった。血管平滑筋腫の摘出に際しては, 腫瘍の大きさや発生部位, 臨床所見, 腫瘍の形状をもとに術中出血の可能性を念頭に置いた術式の選択 (喉頭直達鏡下手術と外切開による腫瘍摘出術の選択, 気管切開の有無) が重要であると思われた。
  • ―胃内に落下した誤飲PTPへの対処法―
    山内 宏一, 唐帆 健浩, 田部 哲也, 北原 哲
    2005 年 56 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    圧迫包装薬包 (Press Through Package : PTP) は, 1960年代よりその簡便性と耐久性などから多くの薬剤包装に利用され, その普及に伴い, 誤飲による消化管異物の報告も珍しくない。
    平成5年4月から平成14年4月までの10年間に当科で加療を行ったPTP食道異物について検討した。入院加療を行った症例は13例 (男性9例, 女性4例) であった。この内12例は硬性内視鏡による摘出を行い, 撓性内視鏡によるものは1例のみであった。撓性内視鏡下に摘出した1例は摘出操作の際, 嘔吐反射とともに胃内に落下したため, オーバーチューブ法にて胃内から摘出した。従来, 異物が胃内に落下した後は, 経過観察のみを行うのが原則であったが, PTPが胃内に落下した場合消化管穿孔の報告もあり, 最近の対処方法について文献的考察を加え報告する。
  • 浅井 正嗣, 安部 英樹, 和田 倫之助, 石川 亜紀, 渡辺 行雄, 土岐 善紀
    2005 年 56 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    気管内挿管後に生じた大きな気管内肉芽により, 呼吸困難を生じた13歳女児の治療経験を報告する。本症例は, 小児で成人よりも気管内腔が狭い上に, 気管軟化症の後遺症と思われる気管前後径の狭小化や, 肉芽が気管の50%近くを占めるなどの不利な条件が重なって, 治療の困難が予想された。このため, 手術では, 肉芽を一度で大きく減量できる可能性のあるポリペクトミースネアを用い, KTPレーザーを補助的に使用した。手術中の換気障害をさけるため, 内径6 mmの経口挿管チューブと気管切開孔の2経路を使用して切除操作を行った。経口挿管チューブは麻酔器に接続し, 接続コネクターから, ファイバースコープとポリペクトミースネアをテープで固定して一体のものとしてから挿入した。気管切開孔から, 鼻手術用の鉗子を挿入して肉芽を把持してスネアをかけたのち, 通電切除した。残存する肉芽は, KTPレーザーで蒸散した。本症例の経験から, 大きな肉芽切除に, ポリペクトミースネアとKTPレーザーの併用が有用であることがわかった。しかし, これらの機器を使用する場合には, 燃焼事故などの合併症が発生しないように, 注意する必要があると思われた。
  • 川崎 徳仁, 田口 雅彦, 中村 治彦
    2005 年 56 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    全身倦怠感を主訴とし, ADH (anti-diuretic hormone) およびACTH (adrenocorticotropic hormone) を産生する小細胞肺癌の1例を経験した。原発巣は右下葉支に存在し, 縦隔リンパ節腫大を伴い, 胸部CTで局在診断された。確定診断は, 気管支鏡下の細胞診で得られた。高値を示したADHおよびACTHは, 化学療法後に低下した。低ナトリウム血症を認める症例については, 肺癌によるSIADH (syndrome of inappropriate secretion of ADH) も鑑別する必要がある。
短報
  • 吉田 知之, 中村 一博, 鈴木 伸弘, 竹之内 剛, 船戸 宣利, 渡嘉敷 亮二, 伊藤 博之, 清水 重敬, 高田 大輔
    2005 年 56 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    喉頭摘出術後の永久気管孔が縮小しカニューレの装着が必要となることも時おり経験する。しかし市販されている気管切開用カニューレでは角度の問題で肉芽を生じるなど不都合も多い。今回われわれは, 汎用永久気管孔用ストレートカニューレを開発したので報告する。このストレートカニューレは高研式気管カニューレ単管®の彎曲を延ばし, ストレート型になるように設計したもので自己装着管理が容易であるように従来のものより軟らかいシリコン素材とした。また術後の頸部創は皮弁などの凹凸, 開口面の角度が水平に近いなど紐固定により逸脱することが多かった。そこで径を太めとし, 若干長くすることにて固定を不要とした。
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