日本気管食道科学会会報
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56 巻, 4 号
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原著
  • 部坂 弘彦, 太田 史一, 飯田 実, 高柳 博久, 小森 敦史, 大橋 正嗣, 鈴木 裕, 羽生 信義
    2005 年 56 巻 4 号 p. 327-335
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    2002年1月より2003年6月までの1年6カ月の間に東京慈恵会医科大学外科で食道癌手術を施行した32症例について術前後の声帯所見を中心とした音声, 嚥下障害に関して比較検討した。術後5日目の評価として32症例中27症例に声帯運動麻痺を認めた。一側性20例のうち11例は術後3カ月の時点で自然回復した。声帯運動麻痺が持続し音声嚥下障害の改善を希望した5例に外来で声帯内アテロコラーゲン注入術を施行した。両側性声帯運動麻痺の2例に関しては副正中位固定のため術後高度な気息性嗄声, 嚥下障害が持続したが術後3カ月経過した時点では改善した。手術後12日の時点で筋電図検査を施行できた17例, 24側に関してみると, 筋電図の放電パターンがnの症例は手術後3カ月の時点で全例自然回復していた。術後の経口摂取開始の時期については耳鼻咽喉科が中心となり喉頭の知覚, 声帯運動麻痺の程度, 筋電図検査を行うことにより, 経口摂取開始の時期につき的確な指示ができた。また鏡視下手術により全身状態の回復が早まり, 在院日数の低下に大きく関与できた。
  • 三浦 昭順, 永井 鑑, 小嶋 一幸, 山田 博之, 西蔭 徹郎, 井ノ口 幹人, 中島 康晃, 関田 吉久, 荻谷 一男, 田中 浩司, ...
    2005 年 56 巻 4 号 p. 336-342
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    食道扁平上皮癌に対する化学療法を含む前治療後の無効, 再発例に対するsecond-line治療としてのドセタキセル (TXT) /ネダプラチン (CDGP) 併用化学療法を2002年から2004年に13例施行, 評価可能な10例 (男9例, 女1例) を対象とした。年齢の中央値は65歳 (56~70歳), 前治療は切除手術+術後補助化学放射線療法が4例, 切除手術+術後補助化学療法1例, 切除術後再発に対する化学療法3例で, 切除不能例は2例であった。治療回数は1回が8例, 2回が1例, 3回が1例であった。投与はTXT 60 mg/m2, CDGP 80 mg/m2を静脈内投与とし, 3週間以上の休薬期間をおいた。効果はPR2例, SD6例, PD2例でありCRはなかった。PDを除いた8例の本治療開始日からの50%無増悪生存期間は135日 (88~370日) で, 50%生存期間は170日 (88~570日) であった。有害事象は白血球減少が主でGrade 2が1例, 3が2例, 4が5例であった。本併用療法はsecond-lineの化学療法として有用である。
  • ―喉頭,食道温存を目指して―
    千々和 秀記, 千々和 圭一, 梅野 博仁, 中島 格, 藤田 博正, 末吉 晋
    2005 年 56 巻 4 号 p. 343-348
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭・食道同時性重複癌は, 一方が進行癌であればいずれの機能温存も難しいことがしばしばある。下咽頭・食道同時性重複癌症例のうち, どの程度喉頭もしくは食道温存が可能であったか, また喉頭, 食道を温存する上での問題点等について検討を行った。1989年から2001年までに久留米大学病院で加療を行った下咽頭癌203例中, 下咽頭・食道同時重複癌を54例 (27%) に認め, 同時性36例を対象とした。食道癌重複 (+) 症例の3年累積生存率は47%, 重複 (-) では56%であった (N.S)。
    下咽頭, 食道早期癌2例は喉頭あるいは食道温存ができたが, 下咽頭, 食道進行癌12例は喉頭, 食道いずれの温存もできなかった。
    下咽頭早期癌, 食道進行癌8例中7例に喉頭温存治療を行い, そのうち基礎疾患を有する4症例に対しては二期的胃管吻合を行うことで喉頭が温存できた。
    下咽頭進行癌, 食道早期癌14例中11例に食道温存治療を行い, 最終的に13例に対し食道が温存できた。下咽頭早期癌では喉頭を, 食道早期癌では食道を可能な限り温存すべきであると考えられた。
  • 正来 隆, 西山 耕一郎, 平山 方俊, 橋本 大門, 臼井 大祐, 和田 昌興, 牧 敦子, 堀口 利之, 八尾 和雄, 岡本 牧人
    2005 年 56 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    1993年1月から2002年12月までの10年間に, 北里大学病院耳鼻咽喉科で気管切開術を施行した15歳以下の小児20例を検討した。気管切開術の適応は上気道狭窄 : 13例と人工呼吸器管理 : 10例であり, これらの重複が3例あった。12例 (60%) に合併症が生じた。
    言語が発達したのは4例あり, そのすべてに音声言語訓練を行った。途中から訓練に来院しなくなった1例を除く3例の言語発達について1例 (超低出生体重児) は軽度の遅れ, 2例 (超低出生体重児 : 1例, 喉頭嚢胞 : 1例) は正常になった。
症例報告
  • 上田 祥久, 福永 博之, 千々和 圭一, 中島 格
    2005 年 56 巻 4 号 p. 355-359
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    われわれは喉頭から発生した非常に稀な骨軟骨腫を経験した。
    症例は69歳女性で, 主訴は咳嗽と労作時の呼吸困難であった。腫瘍は声門下腔の後壁より発生していた。両側声帯の可動性は良好であった。CTにて輪状軟骨の1/2以上を占める腫瘍を認めた。気管切開の後, 直接喉頭鏡下に生検を施行した。病理組織検査では骨軟骨腫であった。腫瘍を外切開の後, 亜全摘を行った。これは喉頭全摘術を行わずに喉頭機能温存を優先させたためである。1年経過した時点では術後の経過は良好で患者の状態は落ち着いている。
  • 藤田 健一郎, 野々山 勉
    2005 年 56 巻 4 号 p. 360-364
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    深頸部蜂窩織炎へと進展した甲状腺腫瘍内出血の1例を経験したので報告した。症例は48歳の女性で発熱, 前頸部の疼痛と腫脹, 呼吸困難を訴え, 亜急性甲状腺炎の疑いにて紹介受診した。エコーとFNAにて甲状腺嚢胞性腫瘍内に血腫が認められた。CTとMRIでは前頸部皮下組織は蜂窩織炎のため著明に腫脹しており, 気管は腫瘍によって右側へ圧排されていた。甲状腺腫瘍内出血および深頸部蜂窩織炎と診断し, 保存的治療を行ったが症状の改善が認められず, 気道閉塞, 深頸部感染症の悪化による縦隔炎が懸念されたため甲状腺左葉切除術と頸部ドレナージ術を行った。術後, 炎症は速やかに消退し, 合併症を起こすことなく術後9日目に退院することができた。
  • 佐藤 暢人, 森川 利昭, 石川 慶大, 大竹 節之, 小原 修幸, 愛宕 義浩, 古田 康, 近藤 哲
    2005 年 56 巻 4 号 p. 365-368
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
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    症例は34歳の男性。嗄声を主訴に近医を受診し, 頸部腫瘤を認めたため当院紹介受診となった。超音波検査, CT検査で甲状腺左下葉から尾側に連続して, 径3.0 cm大の腫瘍病変を認めた。吸引細胞診では悪性を疑う所見であった。甲状腺悪性腫瘍の診断で甲状腺左葉峡部切除術を施行した。肉眼的には, 腫瘍は甲状腺外に中心をおき, 一部で甲状腺実質に浸潤していた。組織学的には, 上皮系腫瘍細胞が増殖する像を認め, 免疫染色ではCD5陽性であった。また, 腫瘍周囲に胸腺組織を認めた。以上の所見から頸部胸腺癌と診断し, 拡大胸腺摘出術, 放射線治療を追加した。
    頸部胸腺癌は過去に報告が少なく, 稀な疾患を経験した。また, その確定診断にはCD5が有用であった。
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