下咽頭・食道同時性重複癌は, 一方が進行癌であればいずれの機能温存も難しいことがしばしばある。下咽頭・食道同時性重複癌症例のうち, どの程度喉頭もしくは食道温存が可能であったか, また喉頭, 食道を温存する上での問題点等について検討を行った。1989年から2001年までに久留米大学病院で加療を行った下咽頭癌203例中, 下咽頭・食道同時重複癌を54例 (27%) に認め, 同時性36例を対象とした。食道癌重複 (+) 症例の3年累積生存率は47%, 重複 (-) では56%であった (N.S)。
下咽頭, 食道早期癌2例は喉頭あるいは食道温存ができたが, 下咽頭, 食道進行癌12例は喉頭, 食道いずれの温存もできなかった。
下咽頭早期癌, 食道進行癌8例中7例に喉頭温存治療を行い, そのうち基礎疾患を有する4症例に対しては二期的胃管吻合を行うことで喉頭が温存できた。
下咽頭進行癌, 食道早期癌14例中11例に食道温存治療を行い, 最終的に13例に対し食道が温存できた。下咽頭早期癌では喉頭を, 食道早期癌では食道を可能な限り温存すべきであると考えられた。
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