日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
56 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 : 喫煙と気管食道領域疾患
総説
  • 吉見 逸郎, 祖父江 友孝
    2005 年56 巻5 号 p. 375-382
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    世界保健機関 (WHO) によるたばこ対策は, たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約 (FCTC) に結実し, 国際的な枠組みによるたばこ対策がちょうど始まったところである。一方喫煙習慣は歴史的にも人々の生活と密接に関係し, ありふれた習慣となっていることから, 喫煙対策の実施には多くの面から関係する問題がある。たばこ対策の先進国とされる英米においても同様で, 政策としてたばこか健康かという二者択一になじみにくい面がある。各国はそれぞれの抱える問題に対し多くの利害関係者との対応をもちつつ対処をしていくことになる。日本でも幾多の海外の例に学びつつ, 同時に日本独自の問題に対して自ら対応していくことが迫られている。
    喫煙が健康に大きく影響を及ぼすことは明らかで, その多くはよく知られた事実だが, 現在の社会情勢のもと, 日本国内で, 関連業界を広く巻きこんで実効性のあるたばこ対策を推進していくためには一筋縄でいかないことが多いと予想される。たばこや喫煙習慣は身近にありふれているが, だからこそ健康問題としてのたばこは, 非常に大きな問題としてわれわれの目の前に提示されている。
Related Papers
  • 宮原 裕
    2005 年56 巻5 号 p. 383-393
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    喫煙は肺癌に加えて, 喉頭癌, 中咽頭癌, 下咽頭癌および口腔癌の発癌危険因子として重要である。タバコに含まれる発癌物質は極少量であるが喫煙が長期間に及ぶとかなりの量となる。すなわち, 1日の喫煙本数とその喫煙年数 (ブリンクマン指数) によって相当な曝露量となる。喉頭癌患者, 中・下咽頭癌患者のブリンクマン指数は相当高値である。喉頭癌患者の声門上部の扁平上皮化生度は年齢相応よりさらに進行している。とくに, 声門上癌の患者では顕著であり, それは喉頭室の扁平上皮化生においても同様であり, 扁平上皮化生からの発癌過程が想定される。発癌のリスクは禁煙することによって減少するが, 非喫煙者のレベルになるまでには10年以上の禁煙が必要とされている。多くの疫学的研究により喉頭癌や下咽頭癌の発癌にはタバコ喫煙のみでなくアルコール飲酒が相加相乗的に関与することが示されている。高度喫煙者や一次治療後喫煙を継続していると喉頭内同時多発癌がみられたり, 異時あるいは同時の二次癌の発生のリスクが高くなる。
  • 島田 英雄, 幕内 博康, 千野 修, 西 隆之, 木勢 佳史, 釼持 孝弘, 山本 壮一郎, 原 正
    2005 年56 巻5 号 p. 394-401
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    近年, 喫煙が健康に及ぼす被害に関して, 受動喫煙の問題なども注目され, 公共施設における禁煙や分煙活動が進んでいる。
    癌をはじめ, 呼吸器疾患, 循環器疾患また脳血管疾患などが喫煙と関与していることは, 周知の事実である。特に喫煙と発癌に関しては, 多くの疫学的調査や研究がなされており, 肺癌はその代表的疾患としてあげられる。喫煙はその他, 消化器疾患に及ぼす影響も多大であり, 良性疾患から悪性疾患では食道癌の発生がよく知られている。食道癌の危険因子としては, 高齢の男性であることや飲酒なども関与し, これらは特に重要な危険因子と考えられている。さらに喫煙と飲酒の両者は相互作用により相乗的により高い危険因子となっている。タバコ煙には多くの発癌物質が含まれており, アルコールに溶けると食道粘膜を傷害しやすくなるとされている。また, 飲酒に関しては, 肝臓での代謝によるアセトアルデヒドの細胞傷害性や, これら代謝酵素の遺伝子多型と食道癌発生の関連についても明らかにされている。
  • 中村 博幸, 大石 修司, 岸 厚次, 松岡 健
    2005 年56 巻5 号 p. 402-409
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    本邦における肺癌死亡率は男女とも増加の一途をたどり, ついに1998年肺癌死亡数は癌死の第1位となった。
    タバコが肺癌の原因であることは数多くの臨床研究および基礎研究から確立されている。また喫煙と肺癌組織型について扁平上皮癌と小細胞癌のみならず, 腺癌も関連があると考えられる。
    ところで本邦の喫煙率は減少しているが欧米と比較するとまだ高い。また20~30歳代の若年女性の喫煙率の上昇が問題となっている。喫煙による癌化のメカニズムはBenzo(a)pyreneの代謝などを通し分子生物学的さらに癌関連遺伝子の基礎研究が数多く行われ, 解明が進んでいる。しかし今重要なことは肺癌死亡率をいかにして減少させるかということである。このままでは2025年には全世界の肺癌死亡数は現在の数倍に増加することをWHOが警告している。禁煙は肺癌発症を単一で防止できる最も強い因子である。中年以前に禁煙すると肺癌の約90%は予防できることも指摘されている。このため医療関係者は肺癌死亡率を低下させるために日常診療において禁煙を教育・指導する社会的責務を有している。
  • 高藤 繁
    2005 年56 巻5 号 p. 410-416
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    COPD発症のリスクの80~90%は喫煙により説明されるとされている。わが国での住民調査によるCOPD疫学調査NICE Studyでは, COPDの有病率は8.5%であった。そして, 喫煙者の12.3%, 非喫煙者の4.7%がCOPDであるとの結果であった。「国民衛生の動向」によれば, 2000年にはCOPDは死因の第10位となった。わが国では1960年以降タバコ販売量・消費量が増加し, これに約20年遅れて「慢性気管支炎および肺気腫」の死亡率が増加していると考えられる。発症メカニズムとしては, 喫煙によって吸入される有害粒子, ガスは肺の炎症を惹起し, 組織破壊を起こし, 防御機構を障害し, 修復メカニズムを悪化させ, COPD発症に至ると考えられる。タバコの煙は, マクロファージと上皮細胞を活性化し, TNF-αを産生させ, また, マクロファージに対し, 好中球遊走因子であるIL-8・LTB4を含む炎症メディエーターを遊離させる。炎症に加えて, 重要と考えられるプロセスにプロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡と酸化ストレスがあげられる。
  • 加治 正行
    2005 年56 巻5 号 p. 417-423
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    小児にとって, 妊娠中の母親の喫煙および家庭内での受動喫煙による健康被害は深刻な問題である。
    妊娠中の母親の喫煙・受動喫煙, 出生後の乳幼児の受動喫煙は, いずれも乳幼児突然死症候群の危険因子である。日常的に受動喫煙にさらされている小児は, 気管や気管支粘膜の繊毛運動が障害されて気道の炎症を生じやすく, 気道過敏性も亢進するため, 気管支喘息, 上下気道炎などの呼吸器疾患に罹患する危険性が高くなる。受動喫煙によって小児の呼吸機能が低下するとの報告が多数あり, 全身麻酔時のトラブル発生率も高くなる。受動喫煙は小児の耳管粘膜の腫脹や繊毛運動の低下を起こし, 中耳炎の罹患率を増大させる。小児期の受動喫煙は, 後年肺癌発症の原因となる。
    近年わが国では未成年者の喫煙率が上昇している。喫煙の害は, 呼吸器疾患も含め成人でも小児でも基本的に同質であるが, 喫煙によって身体が受けるダメージは, 成人に比べて小児では著しく大きい。常習的に喫煙している小児に対しては禁煙治療が必要である。
  • 高木 啓吾, 加藤 信秀, 笹本 修一, 秦 美暢
    2005 年56 巻5 号 p. 424-430
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    全世界で禁煙運動が繰り広げられている中, ニコチンパッチ置換療法が効果をあげてきている。禁煙外来における本療法の成績と問題点につき検討した。
    2001年9月~2004年7月までに禁煙外来に受診した93名を対象とした。このうち約2週間の節煙期間を置いた上で, 約2カ月間のニコチンパッチ置換療法を施行したのは59名 (63%) で, 禁煙開始後1カ月目, 3カ月目, 6カ月目, 12カ月目の4点で呼気COガス濃度測定を行い, 禁煙達成率を調べてみた。
    置換療法施行群の禁煙後1カ月, 3カ月, 6カ月, 12カ月の禁煙達成率は, それぞれ65%, 50%, 42%, 37%と徐々に低下し, 禁煙12カ月後の禁煙達成者は, 本療法実施者の約1/3と少なかった。一方, 2週間の節煙後にニコチンパッチ置換療法を施行しなかった34名は結局禁煙できなかったが, 初診時呼気CO濃度20~29 ppm : 9名, 30 ppm以上 : 14名と, 初診時CO濃度がニコチンパッチ施行群に比べて高い例が多かった。
    ニコチンパッチ置換療法による禁煙達成率は, 短期観察では良好であったのに, 長期観察では低率となった。医師による厳重な初期観察をはずれると, 再喫煙する者が多いことは, 喫煙の健康被害についての啓蒙教育がいまだ不十分であることや, 非喫煙家族あるいは友人からの精神的サポート, 医療者側のサポートが欠かせないことが示唆された。
原著
  • 中岸 義典, 守本 祐司, 藤田 真敬, 尾関 雄一, 東 隆一, 田部 哲也, 前原 正明, 菊地 眞
    2005 年56 巻5 号 p. 431-438
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    [背景] 新生児や乳児での長期にわたる挿管により気道狭窄が生じ, その治療は非常に困難である。本研究は, 気道狭窄治療法の新規開発に利用できる気道狭窄モデルを確立することを目的とした。 [方法] ウサギ気管を切開し, 気管内腔をナイロン製のブラシで擦過後, 切開部を縫合し経過観察した。まず, 経時的に狭窄部の病理学的変化の観察を行い, 次に擦過後9日目に喉頭気管を摘出し, 組織学的観察をおこなった。 [結果] 全例で気道狭窄を認め, 擦過後9日目には径で22~82%, 断面積で48~97%の狭窄を認めた。組織学的には著明な炎症像および線維芽細胞・膠原線維の増生による粘膜下組織の肥厚を認め, 炎症反応の程度と狭窄度に相関が認められた。縫合部には狭窄所見を認めなかった。 [結論] 本方法により, ウサギ気管に狭窄を誘導することができた。本方法は, 簡便かつ確実で, 特に発症早期の狭窄に対する予防・治療の検討に有用である。
短報
  • 平野 滋, 高北 晋一, 山下 勝, 北村 守正
    2005 年56 巻5 号 p. 439-444
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル 認証あり
    ゴアテックスは組織親和性に優れ, 近年, 甲状軟骨形成術I型の窓枠固定材料として普及している。材質的に柔らかく細工や調節がしやすいのも利点のひとつであるが, その材質ゆえに術後ゆるみやすい欠点もある。われわれは, 反回神経麻痺, 声帯萎縮症例に対し, ゴアテックスの充填方法を工夫し確実な内方移動ができるように試みた。まず甲状軟骨板の前方のみに小さな窓枠を設け, そこから喉頭ファイバーのモニター下にゴアテックスを後方に向かって挿入した。十分な内方移動がえられたところでゴアテックスを軟骨に固定した。これによりゴアテックスは軟骨の内側にゆるむことなく充填することができ, 術後の音声機能も改善した。皮膚切開や甲状軟骨の剥離も最小限であり, 本法は低侵襲で簡便, 確実な方法と考えられた。
feedback
Top