日本気管食道科学会会報
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57 巻, 4 号
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総説
  • 伊藤 裕之
    2006 年57 巻4 号 p. 335-344
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    1980年以前の延髄梗塞報告例(非訓練群)の中で,嚥下障害の予後が推定できた男性39例,女性16例の55例のうち,55例が経口摂取可能になった。16~71歳で,平均年齢は50.7±12.4歳であった。発症から経口摂取が可能になるまでの日数は1~150日で,平均30.5±25.5日,中央値は28日であった。1984年から2005年の間に当科にて機能訓練により経口摂取が可能になった延髄病変に伴う嚥下障害症例(機能訓練予後良好群)は男性6例,女性2例の8例で,年齢分布は42~77歳,平均50.7歳であった。発症から機能訓練開始までの日数は24~569日,平均187.1±212.1日,中央値は73.5日であった。経口摂取が可能になった日が確認できた症例6例の機能訓練開始から改善までの平均日数は24.1±8.3日,中央値は23.5日であった。機能訓練予後良好群の発症から機能訓練開始までの期間は,非訓練群よりも有意に長かったことから機能訓練を行った延髄梗塞による嚥下障害症例が,経口摂取が可能になったのは,原因疾患の自然回復によるものではなく機能訓練によるものであることが示唆された。
原著
  • 梶原 薫子, 宮丸 悟, 熊井 良彦, 後藤 英功, 湯本 英二
    2006 年57 巻4 号 p. 345-350
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    発声時の声門閉鎖不全に対する治療法として現在声帯内脂肪注入術が広く行われるようになったが,主に声帯麻痺に伴う声門閉鎖不全を対象とした報告であり,声帯麻痺を伴わない声帯萎縮に対する報告はみられない。今回われわれは2001年から2004年までに,声帯麻痺を伴わない声帯萎縮例7例に対して脂肪注入術を施行したので報告する。全例,術後空気力学的検査の改善を認め,自覚的にも音声の改善を認めた。ただし,術前の空気力学的検査結果が正常範囲だった2例では,検査上の改善は認めるものの,自覚的な満足度を得られなかった。声帯内脂肪注入術は,声帯麻痺を伴わない声帯萎縮例に対して有効な術式であると思われた。
  • 松村 優子, 唐帆 健浩, 田部 哲也, 北原 哲
    2006 年57 巻4 号 p. 351-362
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    一回嚥下量の変化が嚥下動態に及ぼす影響を,透視画像と嚥下圧波形の時間的関係に着目してマノフルオログラフィを用いて検討した。健常成人10名を対象に唾液嚥下,5mlおよび10ml造影剤嚥下における透視画像と舌根部·下咽頭部·食道入口部の3部位における嚥下圧波形を同期して記録し,画像から(1)舌根·咽頭後壁(BT·PPW)接触時,(2)同接触終了時,(3)喉頭閉鎖獲得時,(4)同閉鎖終了時,(5)舌骨運動開始時,(6)同挙上後退時,(7)同挙上前進時,(8)同下降開始時,(9)食道入口部開大終了時を,圧波形成分から(1)舌根部T波出現時,(2)同ピーク時,(3)同終了時,(4)下咽頭e波出現時,(5)同ピーク時,(6)下咽頭c波ピーク時,(7)同終了時,(8)食道入口部(PES)E波出現時,(9)同ピーク時,(10)PES弛緩開始時,(11)PES弛緩終了時,(12)PES C波ピーク時を,食道入口部開大開始時を基準時(0.0s)として算出した。さらに互いに関連があると考えた検討項目のタイミング差について比較検討した。結果:T波終了時からBT·PPW接触終了時,E波出現時から舌骨運動開始時,およびE波ピーク時から舌骨挙上後退時では差が極めて小さかった。食道入口部開大開始時からPES弛緩開始時でも差は小さく,唾液嚥下および5ml嚥下では負の値を示した。PES弛緩終了時から食道入口部開大終了時では一回嚥下量の増加により差が拡大した。結論:T波終了時とBT·PPW接触終了時,E波開始時と舌骨運動開始時,およびE波ピーク時と舌骨挙上後退時は互いに嚥下運動における同事象の出現時を示しており,また,食道入口部では,透視画像で示される開大と嚥下圧波形によって示される弛緩の時間的関係に,一回嚥下量の変化が影響を与えることが示唆された。
  • 梅野 博仁, 千々和 秀記, 坂本 菊男, 中島 格, 森 一功, 末吉 晋, 藤田 博正, 井上 要二郎, 清川 兼輔
    2006 年57 巻4 号 p. 363-370
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    1960年から2003年までに当科で根治治療を行った下咽頭扁平上皮癌一次症例392例を1960年から1970年まで(前期)の37症例,1971年から1988年まで(中期)の122症例,1989年から2003年まで(後期)の233症例に分類して治療成績を比較した。死因特異的5年生存率は中期の38%から後期では67%に改善した。早期癌に対し,前·中期では下咽頭部分切除術を施行する症例が多かったが,後期では直達喉頭鏡下の原発巣CO2レーザー切除,またはレーザー切除後の放射線治療症例が増え,レーザー症例の死因特異的5年生存率は86%と劇的に向上した。他方,進行癌では咽喉食摘後に遊離空腸再建を行うことで,充分な安全域を含めた切除が可能となり,術後照射も追加することで,中期から後期にかけて原発巣死と頸部リンパ節死の割合が減少した。しかし,遠隔転移死の頻度に変化はなかった。また,咽喉食摘後の再建に遊離空腸を使用することで,一期的に安全で確実な再建が可能となった。下咽頭癌治療成績の向上には頭頸部外科,放射線科,外科,形成外科などからなるチーム医療が不可欠であることが再確認された。
症例報告
  • 小川 真, 山本 佳史, 鎌倉 武史, 猪原 秀典, 渡邊 雄介, 久保 武
    2006 年57 巻4 号 p. 371-377
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    両側声帯外転障害に対して,声帯組織減量および声門開大を目的に甲状披裂筋切除術変法を施行し,良好な声門拡大が得られた症例を経験した。
    症例は68歳女性で,主訴は嗄声であった。初診時症状として,吸気時喘鳴,呼吸困難感,軽度の無力性嗄声が認められたが,誤嚥は認められなかった。喉頭所見においては,発声時の声帯内転,息こらえ時の声門上部の閉鎖は正常であったが,吸気時の声帯外転障害が認められた。治療として,局所麻酔下の気管切開術施行後に,全身麻酔を導入した。喉頭顕微鏡下に両声帯上面の粘膜を切開し,甲状披裂筋内側部を鉗除した。その後,左側のみ切開部辺縁粘膜のトリミングを行い,両切開部を縫合した。術後,両声帯にはraw surfaceの部分は認められず,創部の治癒は良好であった。気管切開孔の閉鎖後,術後約3週間で退院となった。術後の喉頭所見上,吸気時に菱形の声門が形成され,吸気性喘鳴が消失した。また,発声および嚥下の障害は認められなかった。
  • 木村 美和子, 横山 美貴, 二藤 隆春, 菅澤 正, 田山 二朗
    2006 年57 巻4 号 p. 378-384
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    Klippel-Trenaunay症候群(以下KTSと略)は先天的に静脈系の血管奇形を持ち,皮膚の血管腫,ポートワイン母斑,静脈瘤,動静脈奇形,四肢骨と軟部組織の片側肥大を主たる徴候とする原因不明で非常に稀な難治性疾患である。今回われわれは咽喉頭に広範囲に血管腫を認め,その増大により気道閉塞を生じ,意識消失をきたしたKTSの1症例を経験したので報告する。
    本症例は上咽頭から下咽頭にかけて巨大な血管腫があり,その増大によって気道閉塞を生じ,意識消失したため救急外来へ受診した。受診時の胸部X線で右上肺野を中心に浸潤影を認め,肺野の浸潤影は低換気·気道閉塞に伴うnegative pressure pulmonary edemaと考えられた。入院後ステロイドを開始し,徐々に咽喉頭の血管腫は縮小した。気道閉塞を解消するため血管腫の縮小を図るべくレーザー治療,外科的切除,気管切開術などを検討したが,危険性が極めて高いと判断し,ステロイド内服継続しつつ,外来で経過観察する方針とし退院した。現在,自覚症状の増悪や血管腫の増大傾向はなく外来観察中である。
    われわれの渉猟しえた範囲内ではKTSの症例で気道閉塞を生ずるほど高度な咽喉頭血管腫を認めた例はなく,今後も厳重な経過観察が必要と考えられた。
  • 大久保 啓介, 塩谷 彰浩, 齋藤 康一郎, 茂呂 和久, 荒木 幸仁, 池田 麻子, 福田 宏之, 小川 郁
    2006 年57 巻4 号 p. 385-392
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    外科的排膿が必要な深頸部膿瘍に縦隔膿瘍を併発した症例に,頸部経路による深頸部·縦隔膿瘍排膿術を先行させ良好な経過を辿った2症例を呈示した。56歳男性。深頸部膿瘍に対して膿瘍切開排膿術施行するも,縦隔膿瘍を併発した。頸部経路による縦隔膿瘍ドレナージを施行し経過良好であった。70歳女性。咽頭後隙から縦隔まで連続する膿瘍腔を認め,頸部経路による排膿術を施行し,経過良好であった。膿瘍が比較的限局しており,ガス像がなく,壊死組織が少ないなど,症例を限定すれば,頸部経路による頸部·縦隔膿瘍排膿術を先行させる治療は非常に有用と考えられた。
  • 東川 雅彦, 山本 有実子, 峰晴 昭仁
    2006 年57 巻4 号 p. 393-397
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/25
    ジャーナル 認証あり
    声帯固定があったにもかかわらず,嗄声の自覚が全くなかった甲状腺癌症例を経験した。症例は66歳の女性,上部消化管内視鏡検査の際に,偶然梨状窩の膨隆所見を指摘された。CTで甲状腺に石灰化を伴う腫瘤を認め,腫瘤は甲状軟骨翼の後方から喉頭内に侵入しているのが確認された。穿刺細胞診で甲状腺癌と診断された。
    喉頭に浸潤する程度の甲状腺癌でありながら嗄声をきたさなかった要因として,腫瘤の進展形式が披裂軟骨を内転させる方向であったこと,反回神経麻痺をきたした時点で声帯位置は正中であったこと,の二点が考えられる。さらに腫瘤の喉頭内への進展が続くにつれ披裂軟骨の内転はより強固になり,声帯の緊張も保たれ,良好な音声が保たれていたと予想した。
用語解説
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