日本気管食道科学会会報
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57 巻, 6 号
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原著
  • 岡本 伊作, 中村 一博, 吉田 知之, 堀口 利之, 清水 重敬, 竹之内 剛, 鈴木 衞
    2006 年57 巻6 号 p. 471-475
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
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    喉頭肉芽腫は声帯後部,特に披裂軟骨声帯突起部に発生することが多い。原因として挿管性や接触性などがあげられるが,原因が不明のことも少なくない。今回われわれは,当科で治療した非特異的喉頭肉芽腫の臨床像と治療過程について検討した。
     2002年7月から2005年11月までに当科を受診し臨床的に喉頭肉芽腫と診断された19症例を対象とした。男性16例,女性3例で平均年齢は53.1歳であった。原因は挿管性が5例,非挿管性が14例であった。
     2001年Horiguchiらの報告以来,喉頭肉芽腫に対する当科の治療方針は保存的療法としている。
     今回の検討では経過観察のみが7症例,ステロイド・トラニラスト内服,ステロイド吸入,音声治療などの保存的療法が7症例行われていた。外科的療法では悪性腫瘍診断の目的で喉頭微細手術下切除術を施行した症例が5例あり,病理組織検査の結果では全例が肉芽腫であった。
     全19症例の中で現在まで経過を確認し得た16例の内訳は,肉芽腫が消失したものが12例,残存が4例であった。喉頭肉芽腫と診断された中で悪性腫瘍が含まれている可能性もあるため適宜生検目的での切除は行うべきであるが,悪性腫瘍が除外された場合は積極的な外科的切除は行わず経過観察すべきと考えている。
  • 大上 研二, 濱野 巨秀, 竹尾 輝久, 関根 基樹, 和田 涼子, 飯田 政弘
    2006 年57 巻6 号 p. 476-481
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    進行下咽頭癌や声門下癌の根治手術時に,傍気管リンパ節の郭清とともに甲状腺,副甲状腺の全摘あるいは亜全摘をおこなうことがある。術後性副甲状腺機能低下症に対して,腸管におけるカルシウム吸収促進を期待して,活性型ビタミンD製剤を投与し,血清カルシウム濃度の調整がおこなわれる。カルシウム製剤の投与は血中,尿中カルシウム濃度の大幅な上昇をきたすことがあり,腎機能に対する悪影響が懸念される。われわれは副甲状腺機能低下症例に活性型ビタミンD3製剤であるファレカルシトリオール(フルスタン®)を投与し,その効果を検討した。対象は癌術後の副甲状腺機能低下症13症例である。ビタミンD3製剤をアルファカルシドールからファレカルシトリオールに変更し,投与前,投与中の血清,尿中カルシウムなどを指標に,併用するカルシウム製剤とファレカルシトリオールの投与量を調整した。13例中1例は副甲状腺機能が回復したため中止し,残り12例全例でカルシウム製剤を中止できた。これらの症例の血清カルシウム値は正常で,テタニー症状もない。ファレカルシトリオールの長時間作用と強力な小腸カルシウム吸収促進作用は,術後性副甲状腺機能低下症のカルシウム濃度の調整に有効にはたらき,過剰なカルシウム負荷を防ぐことができ,重篤な有害事象もみられなかった。
  • 岩江 信法, 米澤 宏一郎, 原 聡, 橋本 大, 長谷川 稔文
    2006 年57 巻6 号 p. 482-488
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺癌の摘出手術において癌浸潤部の気管壁を円窓状に合併切除した場合,開窓範囲が3気管輪程度までで一側の側壁が残存していれば,一般的には気管皮膚瘻を形成して手術を終了し,創部の安定を待ってから瘻孔周囲皮膚の新鮮化と縫合,あるいは局所皮弁を用いての二期的な瘻孔閉鎖手術が行われることが多い。われわれは3気管輪までの開窓に対し,二期的な手術操作なしで気管皮膚瘻が自然閉鎖するよう,摘出後の気管の処理と気管皮膚瘻形成に工夫を行っている。
     工夫点は,摘出時に舌骨下筋群を両側茎で保存すること,保存した筋群を気管開窓部周囲に縫合すること,気管皮膚瘻が気管前壁に位置するように気管側壁合併切除時は遊離気管軟骨弁を用いて開窓部を側壁から前壁に移動させること,気管粘膜と皮膚を直接縫合しないこと,等である。その手技と術後経過につき報告する。
  • 服部 寛一, 米倉 新, 服部 親矢, 鈴木 賢二, 西村 忠郎
    2006 年57 巻6 号 p. 489-496
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
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    いびきを音波として捉え,音響分析することにより,睡眠時の呼吸障害の程度や原因などの客観的な評価が可能ではないかと考えられる。今回われわれは,自宅でのビデオ撮影を行い,同時に記憶装置付きパルスオキシメーターによる簡易モニターを行った小児9例の年齢,性別,アデノイド増殖,口蓋扁桃肥大とパルスオキシメーターによる簡易モニターの結果と家庭用ビデオカメラのいびきの音の音響分析の波形パターンとの関係について検討を行った。
     検討結果からパルスオキシメーターの結果が重症であるほど,いびき音を音響分析したサウンドスペクトログラム上の雑音成分が増加する波形パターンを示す可能性があると考えられた。しかし,症例数が少ないため統計学的に有意差は認められなかった。相関関係の検討にて音響分析の結果と3%ODI,4%ODI,SpO2<90%との間に高い相関関係を認め,有意な相関を認めたことより,今後,症例数を増やすことで統計学的にも有意差が認められ,家庭用ビデオカメラのいびきの音の音響分析の結果から重症度が推定できる可能性があると考えられた。
症例報告
  • 大橋 正嗣, 加藤 孝邦, 太田 史一, 部坂 弘彦, 森山 寛
    2006 年57 巻6 号 p. 497-501
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
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    唾液腺腫瘍において筋上皮腫は1%以下と言われており比較的まれな疾患とされている。今回われわれは仮声帯粘膜下より発生した筋上皮腫の1例を経験した。喉頭原発の筋上皮腫症例は海外を含め現在まで報告されておらず極めてまれな例と考えられた。症例は37歳女性。嗄声にて来院,右仮声帯の腫脹を認め生検を施行し筋上皮腫と診断した。本症の治療は原則として腫瘍の切除・摘出とされている。喉頭截開術は一般に声門下狭窄や悪性腫瘍などの疾患に執られる術式であるが,本症例では腫瘍径が大きいため経口的切除は困難と考え喉頭截開下に硬性内視鏡を併用し腫瘍摘出術を行った。術後の音声機能は良好であり,現在22カ月経過しているが再発は認めていない。
  • 木村 美和子, 千原 康裕, 二藤 隆春, 田山 二朗
    2006 年57 巻6 号 p. 502-507
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    ムンプスの合併症として,呼吸困難や咽喉頭浮腫は報告が少ない。今回われわれは咽喉頭浮腫を合併したムンプスの2症例を経験したので報告した。
     症例は26歳男性と36歳女性。初診時より顎下部耳下部の腫脹,呼吸困難を認め当院救急外来受診,喉頭ファイバースコープにて咽喉頭に浮腫を呈しており入院となった。頸部CTでは,顎下腺,耳下腺とその周囲にびまん性の腫脹を認め,咽喉頭の浮腫状腫脹が著明であった。血液検査でWBC・CRP正常範囲内,血清アミラーゼ高値を認めた。ステロイド投与により呼吸困難は改善し退院した。その後の検査でムンプスウィルスIgM陽性を確認した。
     2症例ともステロイド投与で咽喉頭浮腫は軽減し,気管切開を回避することができた。咽喉頭浮腫の原因は,顎下腺とその周囲軟部組織の炎症性浮腫により,二次的に咽喉頭から流出するリンパ管がうっ滞して循環障害を起し,咽喉頭粘膜にうっ血性の浮腫が生じたためと推察した。
     咽喉頭浮腫を合併したムンプスの成人例を2症例報告した。耳鼻咽喉科の臨床現場では頸部腫脹と咽喉頭浮腫を合併した症例にしばしば遭遇するが,ムンプスウィルス感染の可能性も鑑別診断の1つにあげる必要があると考えられる。
  • 岩崎 洋, 大杉 治司, 竹村 雅至, 李 栄柱, 岸田 哲, 福原 研一朗, 西澤 聡, 形部 憲, 吉田 佳世
    2006 年57 巻6 号 p. 508-515
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    成因の異なる良性食道気道瘻3例を経験した。症例1: 63歳,男性。食道癌に対し,60Gy照射した1年後に咳嗽と胸痛が出現した。内視鏡で食道と左主気管支間に瘻孔を認めたが,ステントにて瘻孔を遮断できず,右開胸下に瘻孔辺縁の食道壁によるパッチ閉鎖および食道癌根治術を行った。瘻孔部に癌遺残はなく,放射線傷害による食道気管支瘻と診断した。症例2: 56歳,男性。胆嚢摘出術後に左肺炎を繰り返した。胸部X線で左下肺野の肺炎像を,食道造影で中部食道の憩室から左下気管支へ造影剤の流入を認めた。左開胸下に憩室と左主気管支間に索状物,また左肺下葉の器質化を認めた。Braimbridge I型の先天性食道気管支瘻と診断し,憩室切除と左肺下葉切除を行った。症例3: 31歳,男性。交通事故での胸部外傷後,摂食時に咳嗽が出現した。内視鏡で膜様部欠損による食道気管瘻を認めた。外傷性食道気管瘻と診断し,右開胸下に瘻孔辺縁の食道壁によるパッチ閉鎖を行い,食道壁はGambee縫合で閉鎖した。良性食道気道瘻では食道や気道の狭窄を伴うことが少なく,ステントによる瘻孔遮断は無効なことが多い。手術による瘻孔閉鎖が有効である。
  • 森 照茂, 箕山 学, 柿木 裕史, 与那嶺 裕, 岩永 迪孝, 田辺 正博
    2006 年57 巻6 号 p. 516-520
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開後の致命的な合併症の一つに気管腕頭動脈瘻がある。一次止血が適切に行われなければ,ほとんどの症例で大量出血あるいは窒息といった転帰を取る。今回,偶然にもカフ付カニューレで一次止血ができ,その後根治的止血を行い救命し得た症例を経験したので報告する。本例では挿入していたカニューレのカフ圧を追加することで一次止血を成し得た。一次止血時のカフ圧は120mmHgを超えていた。しかし,このような合併症を回避するには出血の兆候を見逃さないことと気道の感染をコントロールしつつ,気管内肉芽を予防するためにもカニューレなしの状態で管理することが望ましいと思われる。
  • 大石 直樹, 山下 拓, 新田 清一, 南 修司郎, 田島 敦志
    2006 年57 巻6 号 p. 521-525
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル 認証あり
    頸部に形成された瘻孔が難治化する例にしばしば遭遇する。これには感染が重篤化したことが原因である場合や,先天性疾患あるいは腫瘍性病変に感染を合併したことが原因である場合がある。今回われわれは,前頸部に形成された皮下膿瘍が瘻孔化・難治化し,CT,MRIにて上縦隔腫瘍が原因で頸部難治性瘻孔を呈したと考えられる症例を経験した。画像上の鑑別診断として,第4鰓溝由来の先天性側頸瘻(嚢胞)や異所性胸腺嚢胞,上縦隔奇形腫の頸部進展例が考えられた。摘出術を施行した結果,奇形腫の前頸部進展例であった。まれな疾患であるが,前頸部の難治性瘻孔に遭遇したときには念頭に置くべき疾患の一つであると考えられた。難治性頸部瘻孔の鑑別診断,治療方針および瘻孔形成の成因を中心に考察した。
用語解説
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