日本気管食道科学会会報
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58 巻, 3 号
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原著
  • 上田 勉, 白根 誠, 宮原 伸之
    2007 年 58 巻 3 号 p. 301-309
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    1995年から2003年の間に,当科で一次治療を施行した喉頭扁平上皮癌98例を対象に,臨床統計および治療内容別の治療成績について検討した。性別は男性87例,女性11例であり,男女比は8:1であった。年齢は38歳から92歳までで,平均年齢は全体で66.7歳であった。
    病期分類は,stageI 49例(50.0%),stageII 22例(22.4%),stageIII 9例(9.2%),およびstageIV 18例(18.4%)であった。
    発生部位別分類は,声門癌62例(63.3%),声門上癌35例(35.7%),および声門下癌1例(1.0%)であった。
    病期別の3年生存率,5年生存率ではstage Iが100%,95.1%,stage IIが100%,100%,stage IIIが77.8%,72.9%,stage IVが68.8%,60.6%であり,全体では,93.1%,88.1%であった。
    T分類別の5年累積喉頭温存率では,T1が93.4%,T2が92.3%,T3が54.5%,T4が33.9%であり,全体では83.4%であった。
    stageIII,IV例において,CDDP,5-FUによる化学放射線同時併用療法を施行した11例中10例がCRであり,喉頭温存可能であった(CR期間は36~107カ月,平均60.9カ月)。進行喉頭癌において,化学放射線同時併用療法はもっとも有効な治療法の一つと考える。
  • —甲状軟骨形成術4型の有用性—
    中村 一博, 一色 信彦, 讃岐 徹治, 三上 慎司
    2007 年 58 巻 3 号 p. 310-319
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    Gender Identity Disorder (GID)は性同一性障害といわれ,生物学的性別と心理社会的性別が解離している病態である。
    今回われわれはmale to femaleのGID (MTF/GID)症例に対し,話声位(SFF)の基本周波数を上昇させる目的でPitch Elevation Surgeryを施行した。その成績について報告する。
    症例は1999~2006年に当院を受診し手術を施行したMTF/GIDの32例である。32例に対し甲状軟骨形成術4型(4型)を施行した。そのうち24例には喉頭隆起切除術を併せて施行した。
    32例全例のSFFは上昇した。術前の平均SFFの基本周波数は133.8 Hz,術後は平均237.8 Hzであった。局所麻酔にて手術を施行しているため,全例ともに術中に患者の納得のいく基本周波数に調節することができ満足が得られた。
    4型はMTF/GID症例におけるPitch Elevation Surgeryとして有用であると思われた。
  • 葉梨 智子
    2007 年 58 巻 3 号 p. 320-326
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    目的:食道癌浸潤に起因する気道狭窄に対するSelf-Expandable Metallic Stent (SEMS)による拡張療法の,緩和治療としての有用性を検討した。対象:食道癌に対して積極的治療を行った治療例13例,ステントによる緩和治療のみの未治療1例である。11例が呼吸苦を訴え,2例は挿管していた。3例は食道へのSEMS留置前に気道への予防的留置を行った。全例でSelf-Expandable Nitinol Stentを使用した。結果:全例の留置に成功し,呼吸苦(11例)も改善した。合併症は3例(疼痛1,ingrowth 1,dislocation 1)みられたが,対症的治療でQOLは維持された。留置後平均生存期間は76 ± 100日で,1カ月以内に5例が死亡した(出血2,癌性リンパ管症2,悪液質1)が,気管狭窄の解除は呼吸状態の改善に効果があった。呼吸状態が維持されたことにより,QOLが比較的良い状態で維持され,12例で亡くなる直前まで経口摂取が可能であった。5例(38%)が一時退院可能であった。結語:食道癌末期の気道狭窄に対するSEMS留置による拡張術は,少ない侵襲で高い治療効果がえられ,緩和治療として有効である。ただし,圧迫壊死による出血など重篤な状態をきたす可能性もあり,慎重な適応決定と,十分なInformed Consentが必要である。
  • 田口 享秀, 佃 守, 三上 康和, 松田 秀樹, 堀内 長一, トート ガーボル, 石戸谷 淳一
    2007 年 58 巻 3 号 p. 327-334
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    目的:切除可能な下咽頭扁平上皮癌進行例に対する化学療法同時併用放射線治療の効果と有害事象および喉頭温存の可能性について検討を行った。対象と方法: 1998年10月から2004年7月の期間内に対象症例40例が治療を受けた。化学療法としては,一つはシスプラチン,5-FU,メソトレキセート,ロイコボリンの組み合わせ(CF-MTX-LV療法)であり,もう一つは高齢者や合併症のある症例にカルボプラチンとUFTの組み合わせ(CBDCA-UFT療法)を施行した。放射線治療としては,1日1回1.8~2.0 Gy,週5日で総線量70 Gyを目標とした。結果:CF-MTX-LV療法群の5年疾患特異的生存率は73.3%であり,喉頭を温存しての5年疾患特異的生存率は56.4%であった。CBDCA-UFT療法群の3年疾患特異的生存率は30.5%であり,喉頭を温存しての3年疾患特異的生存率は15.2%であった。主な有害事象としては,好中球減少,頸部皮膚炎,粘膜炎,感染および吐気・嘔吐であった。結語:CF-MTX-LV療法群では有害事象が強く発現し,管理には十分な注意が必要と考えられたが,喉頭温存の目的で切除可能な進行下咽頭扁平上皮癌症例に対して有用な治療法と考えられた。
症例報告
  • 望月 幸子, 望月 高行, 米田 律子, 廣瀬 肇, 西山 耕一郎, 佃 守
    2007 年 58 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    声門後部癒着は初診時声門下まで観察することが困難であり,両側声帯麻痺と診断されることもある。症例は63歳女性で,気管挿管により声門下肉芽を生じ抜管困難となったため気管切開術を施行したがこのときには声帯運動障害は認めなかった。約1カ月後,声門後部癒着による両側声帯運動障害を認め,声門下からの観察で,声門後部の癒着によると診断された。そこで全麻下にCO2レーザーを用いて声門後部の癒着を切離し,肉芽を切除した。術後はTチューブを声門下に固定し約2週間後に抜去したところ,両側声帯の運動性は改善しその後再狭窄は認めていない。
  • 山本 一道, 魚住 真樹
    2007 年 58 巻 3 号 p. 340-344
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    外傷性気管完全断裂術後に生じた声門下狭窄に対し,外科的手術を施行した症例を経験したので報告する。症例は19歳,女性。交通事故にて輪状軟骨直下に気管完全断裂を認めた。両側反回神経麻痺を認め,声帯は傍正中位固定。粘膜は輪状軟骨から遊離し,輪状軟骨弓部および後壁の骨折を認めた。低位気管切開後,輪状軟骨と気管の一次吻合施行。術後の吻合部感染により声門下完全狭窄を認めた。レーザーおよびTチューブ留置を施行するも再狭窄を繰り返していた。受傷10カ月後,再手術施行。喉頭截開術,声帯直下から第4気管軟骨輪の狭窄部切除,披裂軟骨間の瘢痕組織を鋭的に開大後,鎖骨骨片を移植,Tチューブ留置,喉頭気管吻合を施行。術5カ月後にTチューブ抜去。直後より,発声,呼吸とも可能となった。術15カ月後の現在はレティナを閉鎖している。声の質は粗ぞうであるが,発声,呼吸ともに日常生活に支障なし。運動負荷時にはレティナを開放している。声門下狭窄に対しては,保存的療法が行われることが多いが,適切な術式を選択すれば,手術療法は非常に有効であると考えられる。
  • 佐藤 公則
    2007 年 58 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    ビデオエンドスコープ(電子内視鏡)は内視鏡の先端に超小型半導体撮像素子カメラ(CCD: Charge Coupled Device)を装着し,細径でありながら高精細画像が得られる。咽頭反射が強い症例に対し経鼻挿入による経鼻内視鏡による食道異物摘出術を外来で行った。
    使用機種は送気・送水・鉗子チャンネル付き(処置用)と付かない(観察用)ビデオスコープである。先端径は4.1 mmと5.3 mmである。
    本法の利点は1)モニター上に高精細画像が得られ的確な診断と微細な処置が行える。2)先端径が細いため患者に与える苦痛が少ない。3)鎮静や全身麻酔を行わず,耳鼻咽喉科外来の診察椅子の上で,仰臥位で処置が行える。4)経鼻内視鏡により咽頭反射が強い患者でも処置が行える。5)明瞭な画像を観察しながら内視鏡を明視下に挿入できるため,安全な処置が行える。本法の欠点はどの程度の大きさの,どのような形状の食道異物まで摘出できるかという限界があり,異物把持鉗子の性能にも影響される。
    経鼻ビデオエンドスコピーによる食道異物摘出術は,外来で行える食道異物摘出術の選択肢の一つであり,外来手術としての食道異物摘出術の適応が拡大される可能性があった。
  • 小津 龍一朗, 浅井 昌大, 秋山 清治郎, 山崎 竜一, 原田 勇彦
    2007 年 58 巻 3 号 p. 351-354
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    高度の頸椎変形により気管切開に苦慮した1例を報告した。症例は73歳男性。既往歴に平成5年より進行性の頸部脊椎後弯症があり,下顎と胸骨が接するほどの弯曲を認めていた。階段からの転倒にて両下肢の麻痺が出現し入院となった。その後自発呼吸の減弱を認め,経鼻挿管にて人工呼吸管理となった。人工呼吸器の離脱が不能となったため,当科に気管切開の依頼があり,全身麻酔下に頸部側方からのアプローチで気管切開を行った。本症例の気道確保に対する種々のアプローチについて考察した。
用語解説
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