片側喉頭麻痺の手術治療にはいくつかの選択肢があるが,大きく分けると喉頭枠組み手術と声帯注入術に分けられる。全身麻酔下に施行する声帯注入術と喉頭枠組み手術では術中の音声モニタリングが不可能である。一方,局所麻酔下に施行する喉頭枠組み手術では,術中の音声モニタリングにより,細かな調節性に優れる。故に当クリニックでは伝統的に局麻下の喉頭枠組み手術を施行してきた。
今回われわれは,一色クリニック・京都ボイスサージセンターにおいて片側喉頭麻痺に対し喉頭枠組み手術を施行した症例について検討した。症例は1994年から2006年までに当クリニックにおいて片側喉頭麻痺に対して喉頭枠組み手術を施行した110例である。男性66例,女性44例,平均年齢は52.9歳であった。麻痺側は左が68.8%,右が31.2%であった。麻痺の原因疾患は甲状腺腫術,食道癌手術,肺癌手術,縦隔手術,特発性,脳腫瘍などであった。術前術後の音声の評価には最長発声持続時間(MPT)とAlternating Current/Direct Current Ratio (AC/DC比)を用いた。術式の選択は声門間隙の大きいものには披裂軟骨内転術(Arytenoid Adduction:AA)を,声門間隙の小さいものには甲状軟骨形成術1型(1型)を選択し,声帯の緊張が足りない場合にさらに甲状軟骨形成術4型(4型)を追加した。術式の追加は術中に音声モニタリングにて判断した。
術式のうちわけは1型単独:45例,1型+4型:13例,AA単独:6例,AA+1型:39例,AA+1型+4型:7例であった。110例の平均MPTは術前5.9秒,術後13.5秒であった。AC/DC比は2004年6月以降の42症例で測定されており,術前平均は24.4%,術後平均は46.2%であった。
片側喉頭麻痺の術式の中で,局麻下喉頭枠組み手術の治療効果は確実であり有用である。
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