日本気管食道科学会会報
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59 巻, 5 号
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特集:気管食道領域の診断機器の進歩
  • 金子 昌弘, 土田 敬明
    2008 年 59 巻 5 号 p. 439-444
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
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    呼吸器は気管から呼吸細気管支に至る管腔臓器の部分と,肺胞を中心にした実質臓器の部分からなっている。
    気管から肺門部までの気道の診断は,ほとんどが電子気管支鏡による肉眼的な観察であるが,自家蛍光(AFI),狭帯域観察(NBI)や,超音波(EBUS)による診断も一部では行われている。将来的には拡大観察や,光コヒーレント断層(OCT)での観察などにより,内視鏡的に病理学的な診断が行えるようになることが期待されている。
    肺門より末梢の気道の診断に以前は気管支造影が用いられていたが,被検者の負担も多く近年は行われていない。代わって高分解能CT画像からの気管支の3次元再構成や極細径気管支鏡の開発が行われており,今後の普及が期待されている。
    末梢肺野病変の画像診断には高分解能CTやFDG-PETが用いられ,確定診断には経気管支鏡的生検が行われることが多い。生検器具の誘導に一般にはX線透視が行われているが,最近ではCTあるいは超音波ガイド下での生検も行われ,診断率の向上に役立っている。将来的には画像診断と内視鏡の誘導技術の更なる融合がはかられ,微小な異常部位から的確に標本の採取が可能なシステムの構築が望まれている。
  • 首藤 潔彦, 松原 久裕
    2008 年 59 巻 5 号 p. 445-451
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
    ジャーナル 認証あり
    癌の存在診断や質的診断より始まった消化器癌の画像診断は診断機器・解析ソフトウェアの改良により昨今急速な進歩が見られ,現在では従来のTNM Stage以外にも癌の生物学的悪性度すなわち血流・代謝・細胞活性などを評価する診断技術が生み出されている。本章では食道癌扁平上皮癌に関する診断の現状として従来よりの定型的診断法について述べるとともに,今後の展望として新しい診断機器や手法を用いた診断法について概略した。新たな診断機器・技術としては,MRI拡散強調画像 (DWI),Perfusion CT,flat panel detector (FPD) による透視造影などがある。DWIでは癌診断以外にも,転移リンパ節診断においてFDG-PETに劣らない能力を秘めており,Perfusion CTでは分子生物学的手法でしか評価できなかった腫瘍内血流が画像で評価可能となり得る。また今まで主に限定された熟練術者によって可能であった表在型食道癌の描出や形態評価が可能となりつつある。これらの診断技術を再検証し修正しつつ活用していくことにより,新たな診断法が確立できるものと期待される。
  • 井上 晴洋, 横山 顕礼, 南 ひとみ, 加賀 まこと, 工藤 恵子, 佐藤 嘉高, 菅谷 聡, 工藤 進英
    2008 年 59 巻 5 号 p. 452-458
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
    ジャーナル 認証あり
    近年,高解像度の “NBI拡大” 内視鏡の登場により,とくに扁平上皮領域では微小な腫瘍性病変の発見も容易になってきた。NBI通常観察 (非拡大) でbrown spot (あるいはbrownish area) を同定して,その後に同部のNBI拡大内視鏡をおこなうことで病変の性状診断をおこなうことができる。扁平上皮領域における通常の拡大内視鏡観察 (約100倍) においては,IPCLパターン分類 (IPCL:扁平上皮乳頭内血管) が指標となる。IPCLの変化は,組織の構造異型を反映していると考えられる。
    今後の将来展望として,超・拡大内視鏡 (endocytoscopy) (500倍) (未発売) があり,こちらでは細胞や核を生体内で直接観察することができる。これにより細胞異型をも捉えることができる。ECA (endocytoscopic atypia) 分類として,パパニコロウ分類に従い5段階評価をおこなっている。
    このような診断機器の進歩により,組織の内視鏡的異型度診断が現実のものとなりつつある。ここではIPCLパターン分類,ECA分類を中心に概説したい。
  • 河村 修, 草野 元康
    2008 年 59 巻 5 号 p. 459-466
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
    ジャーナル 認証あり
    ワイヤレス式pHモニタリング法,インピーダンス・モニタリング法の登場により,GERDの病態に対する理解は大きく変わろうとしている。近年,Bravo pHモニタリング・システムを用いた報告が増えつつあり,その正常値も確立されようとしている。これらの報告により,従来のカテーテル法には限界があることがはっきりと示されれば,Bravoシステムは,pHモニタリングの新しいスタンダードとなる可能性がある。一方,インピーダンス法の登場によりnon-acidic refluxとgas refluxが捉えられるようになり,GERはもはや酸逆流のみでなく非酸逆流を含めた概念となった。GERDの食道および食道外症状はpHモニタリングでは捉えられないweakly acidic refluxやgas refluxに関連している可能性がある。pH・インピーダンス・モニタリングは,すべてのタイプの逆流を高い感度で捉える唯一の測定法である。
  • 岡村 光英, 小山 孝一, 小澤 望美, 林 伊吹
    2008 年 59 巻 5 号 p. 467-476
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
    ジャーナル 認証あり
    FDG-PETは悪性腫瘍が正常組織より糖代謝が高いことに基づいて腫瘍の代謝を評価する検査法であり,従来の検査法であるCTやMRIなど腫瘍のサイズや性状に基づく形態診断のみでは判断困難な病変において,viabilityを評価することができ,有用性が認められている。しかしPETのみでは解剖学的位置情報が得られず,CTやMRIと対比して診断していた。最近普及してきたPETとCTを同時に撮影する一体型のPET/CT装置ではPETの代謝画像とCTの形態画像が同時に得られるため,FDGの集積部位の解剖学的位置が正確に診断できるようになった。気道・食道領域として本稿で述べる喉頭癌・下咽頭癌および食道癌においてもPET/CTは臨床的に有用性が認められ,広く利用されている。喉頭,下咽頭,食道いずれにおいても扁平上皮癌が最も頻度が高く,FDGは強く集積するため,FDG-PETの有用な領域であり,原発巣の検出,リンパ節転移の診断に加え,全身を撮像することから遠隔転移診断,重複癌の診断に優れている。PET/CTは異常集積部位をCTで同定できるため診断能が向上しており,手術,放射線治療,化学療法の治療方針決定に重要な役割を担っている。治療効果判定,再発診断でもFDG-PET/CTは有用である。また,PETによる予後の予測や,新しい利用法としてPET/CTに基づくIntensity-modulated radiotherapy (IMRT) への治療計画など治療への応用が始まっている。なお,検出限界の病変や偽陽性の疾患もあるため,注意が必要である。
  • 栗原 泰之, 八木橋 国博, 萩野 りょうこ, 松岡 伸, 栗原 宜子, 中島 康雄, 大重 雅寛, 宮澤 輝臣
    2008 年 59 巻 5 号 p. 477-485
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
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    比較的頻度の高い気管,中枢気管支を侵す疾患の画像診断について,画像を中心に説明した。イメージングモダリティとしては,高分解能CT,MRI,再構成画像 (multiplanar reconstruction:MPR),3Dボリュームレンダリング,仮想気管支鏡イメージ等の多数の最新の画像を扱い,各疾患の特徴を示した。また最近の話題として,仮想気管支鏡ナビゲーションと三次元気道解析ソフトについて簡単に解説し紹介した。
  • 松木 充, 稲田 悠紀, 金澤 秀次, 中井 豪, 鳴海 善文, 平松 昌子, 谷川 允彦
    2008 年 59 巻 5 号 p. 486-491
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
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    食道癌のリンパ節転移は,局所の深達度が比較的浅い場合でも高率に発生し,広範に広がりやすい特徴を有するため,頸胸腹2 領域あるいは3領域リンパ節郭清が標準的手技になっている。そのため,症例によっては過度のリンパ節郭清がしばしば問題となり,さらに表在癌に対する内視鏡手術の導入によってリンパ節転移に対する診断の重要性がますます増してきた。一般的には,CT,MRIを用いたリンパ節のサイズ評価が主流であるが,その診断能の限界をしばしば痛感する。そこで,われわれはCT,MRIを用いたセンチネルリンパ節ナビゲーション,MRI用リンパ節特異性造影剤USPIO (ultra-small superparamagnetic iron oxide) について検討した。センチネルリンパ節ナビゲーションの問題点としてセンチネルリンパ節を跳び越えた遠隔へのskip metastasisがあげられる。またUSPIOを用いたリンパ節診断では,リンパ節転移に対する正診率はかなり高いが,MRIの空間分解能の低さと心臓,大動脈の拍動によるモーションアーチファクトによってリンパ節の検出能の低さが問題であり,臨床活用するにはさらなる検討が必要である。
原著
  • 長谷川 稔文, 岩江 信法, 米澤 宏一郎, 小松 弘和
    2008 年 59 巻 5 号 p. 492-496
    発行日: 2008/10/10
    公開日: 2008/10/25
    ジャーナル 認証あり
    1994年2月から2006年10月までに兵庫県立がんセンターで治療した甲状腺未分化癌10例を検討した。男性5例,女性5例,年齢は47歳から84歳,中央値65.5歳であった。予後は,長期生存1例,原病死8例,他病死1例であった。原病死の内訳は,原発巣死4例,遠隔転移死4例であった。死亡した9例は,治療開始後1年以内に死亡していた。
    手術は6例に施行した。6例全例で術後放射線療法を行い,2例では化学療法を行った。手術は,肉眼的全摘除手術3例,腫瘍減量手術3例であった。長期生存例は1例のみで,術前は扁平上皮癌と診断し,導入化学療法,咽喉食摘を含む拡大切除,術後照射を施行した症例であった。手術例6例のうち3例に気道狭窄による窒息が認められた。手術を行わなかった4例では化学療法と放射線療法を行ったが,3例に遠隔転移死が認められた。
    生存期間における在宅期間の割合は,手術例では高率で,手術非施行例では低率であった。手術非施行例に比較し,腫瘍減量手術例の在宅期間の割合は高率でQOLが向上する可能性はあったが,生存期間の延長はなく,局所の制御は不良で,腫瘍減量手術の有効性は認められなかった。
症例
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