日本気管食道科学会会報
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59 巻, 6 号
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原著
  • 正来 隆, 堀口 利之, 牧野 寛之, 岡本 牧人
    2008 年 59 巻 6 号 p. 519-523
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
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    1995年1月から2007年12月までに手術を行ったポリープ様声帯145例(男性:56例,女性:89例)を検討した。最年少は23歳,最年長は87歳であった。144例(99.3%)が喫煙者であった。
    術前後で音声機能評価を行った38例(男性16例,女性22例)についてGRBAS評価,最長発声持続検査(MPT)と発声機能検査(永島医科器械製PS77-E)により検討した。発声時呼気流率(男性,女性)と気流阻止法による呼気圧(男性)は術前と比べて術後は有意に低下した。
    14例(9.7%)で再発を認めたが,再発例はすべて喫煙を再開していた。
  • 大久保 啓介, 齋藤 康一郎, 新鍋 晶浩, 塩谷 彰浩
    2008 年 59 巻 6 号 p. 524-533
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    当院において平成16年5月から平成19年4月までの3年間に一側性声帯麻痺13例,声帯萎縮1例に対してリン酸カルシウム骨ペースト(商品名BIOPEX®-R3mlセット)を用いた声帯内注入術を施行した。基本的に全身麻酔下で直達喉頭鏡下に注入術を行い,術翌日より発声・摂食を開始した。術後は全例において良好な声門閉鎖が得られ,音声も有響性で患者の満足が得られた。内視鏡での観察では,すべての症例で注入による声帯の内方移動や,発声時声門閉鎖不全の改善が観察された。3D-CT上,注入されたBIOPEX®はほとんどの症例において声帯レベルで一塊となっており,患側声帯の内方移動に寄与していた。さらに全例において呼吸困難などの合併症はみられず,安全に施行することができた。当院では現在3泊4日での入院で,術翌日から発声,摂食を開始している。硬化性物質を声帯外側に注入し,声帯を内方移動させる本術式は,「内腔より行う甲状軟骨形成術I 型」として有用と考えている。
  • 山本 聡, 川原 克信, 柴田 亮輔, 白日 高歩
    2008 年 59 巻 6 号 p. 534-538
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    【目的】食道癌症例に対する食道切除および3領域リンパ節郭清術後症例の早期気管チューブ抜去における気道管理を検討した。【症例と方法】2000年から2005年までの83例の食道癌切除および3領域リンパ節郭清症例を抽出した。術後気道管理のプロトコールは,1)原則として手術直後に手術室で気管チューブを抜去する。2)臨床症状や胸部レントゲン写真で異常がみられれば気管支鏡を用いる。3)これにより状況の改善みられなければミニ気管切開や気管切開を用いる。【結果】食道癌切除症例の術前呼吸機能による術後の気管支鏡施行回数やミニ気管切開施行例数に差はみられなかった。しかしながら反回神経麻痺がみられた症例群では有意にミニ気管切開施行例が多かった。【結論】食道癌症例に対する食道切除および3領域リンパ節郭清術後における反回神経麻痺群ではミニ気管切開が頻用され有用であった。
  • 本多 通孝, 三浦 昭順, 加藤 剛, 宮本 昌武, 出江 洋介
    2008 年 59 巻 6 号 p. 539-544
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    遠隔臓器転移を有する食道癌に対してFAP療法(5-FU+doxorubicin+CDDP)による初回治療を2002年から2007年に36例施行し,安全性,有効性についてretrospectiveに検討した。対象は男性33例,女性3例,年齢中央値は64歳(47~78歳),全例扁平上皮癌,転移臓器は肝23例,肺8例,骨5例,胃3例,副腎2例(重複あり)であった。平均治療回数は2.72回(1~8回),全体の奏効率(総合効果)は47.2%,部位別では食道原発巣45.7%,リンパ節32.3%,肝47.8%,肺37.5%であった。50%生存期間は335日(50~1593日)であり,1年生存率は45.1%であった。血液毒性は好中球減少が多く,Grade 3を7例,Grade 4を2例に認めた。その他の有害事象は倦怠感26例(72.2%),消化器症状(食欲不振,口内炎)21例(58.3%)が主であった。FAP療法は食道原発巣,肝転移巣に対する有効性が高く,切除不能症例に対して期待の持てる治療である。
症例
  • 山本 一宏, 金 泰秀, 田邉 牧人
    2008 年 59 巻 6 号 p. 545-550
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    分葉状毛細血管腫は毛細血管腫の一亜型であり,喉頭での発生は稀である。2002年1月から2007年12月までの6年間で,西神戸医療センター耳鼻咽喉科において喉頭発生の分葉状毛細血管腫症例は6例あり,性別は男性3例,女性3例で,平均年齢は58歳であった。腫瘍の占拠部位は2例が声帯で,4例が声帯突起であった。6例中2例(声帯発生1例と声帯突起発生1例)で腫瘍の増大が認められ,声帯突起発生例では進行性の気道狭窄症状があった。喉頭肉芽腫症が疑われた声帯突起発生例全例にプロトンポンプ阻害剤が投与されたが,腫瘍の縮小は認められなかった。5例は局所麻酔下でビデオ内視鏡下に摘出可能であったが,1例では全身麻酔下での摘出となった。病理組織診断で分葉状毛細血管腫と診断された。経過観察中,全症例において再発は認めなかった。喉頭に発生する分葉状毛細血管腫は肉芽腫症との鑑別が必要で,外科的切除がこの腫瘍に対する有効な治療法である。
  • 木村 百合香, 加藤 智史, 高橋 正時, 岸本 誠司
    2008 年 59 巻 6 号 p. 551-555
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与と血管再生治療後に生じた喉頭浮腫治療後,nasogastric tube症候群による両側声帯麻痺を発症した1例を報告した。症例は76歳男性,主訴は吸気時呼吸困難であり,喉頭内視鏡検査にて著明な喉頭浮腫を認めたため同日緊急気管切開術を施行した。3カ月前より高血圧に対しARBであるカンデサルタンシレキセチル(ブロプレス®)を使用し,また閉塞性動脈硬化症に対し末梢血幹細胞移植による血管再生治療後7日目であった。喉頭浮腫の改善後,両側声帯正中固定が明らかとなった。多系統萎縮症等は否定的であり,経鼻胃管を挿入中であったことからnasogastric tube症候群による両側声帯麻痺と診断した。発症後10カ月現在も両声帯は正中位固定のままカニューレ抜去困難状態が続いている。
    アンギオテンシン変換酵素阻害剤とARBの重要な副作用に血管性浮腫があり,時に重篤な気道狭窄をきたすことがある一方,再生医療のさきがけとして血管再生治療が臨床導入されているが,移植された幹細胞から放出されるサイトカインにより血管性浮腫をきたす可能性も指摘されており,両者が本症例の喉頭浮腫に関与したものと考えた。また,経鼻胃管の留置による重篤な合併症であるnasogastric tube症候群にも留意が必要である。
  • 日高 浩史, 西川 仁, 石田 英一, 小澤 大樹, 郭 冠宏
    2008 年 59 巻 6 号 p. 556-562
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭食道異物は日常よく遭遇するが,穿通して腔外異物となる例は稀である。今回,頸部外切開による摘出術を必要とした2例の魚骨異物を経験したので報告する。症例1は82歳女性,CTで下咽頭頸部食道に異物を疑う陰影を確認したが,軟性内視鏡では異物を同定できず,頸部外切開で咽頭収縮筋から外側に貫通した魚骨を摘出した。症例2は62歳女性,3次元画像構築(3D-CT)で頸部食道左外側から甲状腺に刺入する陰影を認めた。甲状腺の腺腫様腫大を伴っていたために甲状腺左葉切除を行い,異物とともに摘出した。
  • 本吉 和美, 土師 知行, 本多 啓吾, 佐藤 進一
    2008 年 59 巻 6 号 p. 563-568
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    先天性梨状窩瘻は急性化膿性甲状腺炎として,幼児期以降に発症することが多い。今回,われわれは生下時より頸部嚢胞性腫瘤を形成し,哺乳により増大,気道の圧迫をきたしたまれな先天性梨状窩瘻の1例を経験したので報告する。
    症例は日齢5の女児で,主訴は左頸部腫瘤,呼吸困難であった。在胎40週4日で自然分娩にて出生し体重は3164gであった。出生時より左前側頸部には約5cm大,弾性軟の頸部腫瘤を認めた。日齢1より哺乳を開始すると徐々に頸部腫瘤増大し,喘鳴とともに呼吸状態も悪化した。CT,MRIでは単房性嚢胞の所見であり,気道は腫瘤により圧排され狭小化していた。頸部腫瘤の内容液を穿刺・吸引することにより腫瘤による気管圧排が解除され呼吸状態が改善したが哺乳の再開に伴い,再び頸部腫瘤の増大と呼吸困難を生じた。下咽頭あるいは食道と交通する先天性嚢胞を疑い,日齢26に腫瘤摘出術を施行した。下咽頭収縮筋を貫き左下咽頭梨状窩に交通する2mm程度の瘻管を同定し,嚢胞とともに摘出した。
    哺乳開始により腫瘤増大をきたす頸部嚢胞性病変を認めた場合は,先天性梨状窩瘻も念頭に置き,診断・治療を進める必要があると考えた。
  • 高山 明美, 高山 賢哉, 菊池 清和, 佐藤 英幸, 相馬 亮介, 赤坂 圭一, 池上 岳, 一和多 俊男, 長尾 光修
    2008 年 59 巻 6 号 p. 569-573
    発行日: 2008/12/10
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳男性。肺扁平上皮癌経過中に閉塞性肺炎と膿胸を併発し,その後ショックを伴う血胸を呈した。胸部造影CT・肺動脈造影を施行し,出血部位は肺動脈瘤と考えられた。緊急に同部に対し血管内コイル塞栓術を施行し有効であった。
用語解説
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