【目的】近年,咽喉頭異常感の誘因を上部食道括約部(upper esophageal sphincter:以下UES)圧の上昇とする報告が散見される。一方,中部食道へ酸を注入することでUES圧が上昇するとの報告がある。これらを結びつけることにより,胃酸の逆流がUES圧を上昇させ咽喉頭異常感(globus sensation:以下globus)を引き起こすという仮説が成り立つ。この仮説を臨床実験にて検証するために以下の実験を行った。
【方法】20例の健常ボランティアに,4チャンネルpHセンサーと,嚥下運動の影響を受けないスリープ型圧センサーを挿入しUES圧を持続的に測定した。中部食道より胃酸と同じ0.1Nの塩酸を1分間に約20mlの速度で注入し,1)胸やけを訴えるまでの時間,2)咽頭のglobusを訴えるまでの時間,3)UES圧の変化を測定した。1),2)の両方を訴えた時点で塩酸の注入を終了した。1),2)の訴えの有無にかかわらず塩酸の注入量が100mlとなった時点で実験を終了とした。コントロール群には蒸留水を用い,同様に測定した。
【結果】1)酸注入試験により,20例中13例でUES圧が上昇した。13例ともglobusを自覚した。2)13例中10例で胸やけがglobusに先行した。3)13例とも上部2本の電極にはpHの低下は見られなかった。4)対照群でglobusを訴えた例はなかった。
【総括】食道内酸逆流により球症状が出現することが示唆された。ほとんどの例で胸やけの発現がglobusより先行したことから,globusの誘因としてLPRDを疑う場合,胸やけの有無を問診することがスクリーニングとして重要であると思われた。pHの低下が下部電極のみにしか起こらなかったことから逆流によるglobusの発症にはいわゆる「反射説」といわれている迷走神経反射が関与していると考えられた。
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