日本気管食道科学会会報
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60 巻, 3 号
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原著
  • 中村 一博, 吉田 知之, 塚原 清彰, 長谷川 剛, 清水 雅明, 近藤 貴仁, 鈴木 衞
    2009 年60 巻3 号 p. 231-239
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    内転型痙攣性発声障害(ADSD)の治療においては,ボツリヌス毒素の甲状披裂筋内注入療法(BT療法)が世界的に第1選択である。しかしわが国では,諸事情によりすべての施設でBT療法を行えない環境にある。そのため日本では手術に関する報告が多いと考えられる。現在本邦で施行されている術式には主に甲状披裂筋切除術(TA切除術)と甲状軟骨形成術2型(TP2型)がある。しかし,症例によってどちらの手術が良い適応であるか,いまだ議論を残すところである。
    今回われわれはADSDに対し当科にて手術を施行した症例の術式選択と手術成績について検討した。2001年から2008年に当科においてADSDと診断した症例を対象とした。診断確定の後,治療方法に関して患者にBT療法と手術,各々の利点と欠点を説明し,術式を決定した。この時点でBT療法を選択した症例は専門施設へ紹介となった。手術を選択した症例は10例で男性1例,女性9例,平均年齢は32.4歳であった。術式の内訳はTA切除術4例,TP2型6例であった。音声の評価はモーラ法を用い,spasmodic ratio(%)を算出し,術前と術後のものを比較した。TA切除術の術前平均は74.6%,術後は9.4%であった。TP2型の術前平均は65.1%,術後は4.7%であった。両方の術式ともに治療効果は良く,患者の満足が得られた。
    ADSDの手術治療においてTA切除術とTP2型は,ほぼ同等の治療成績であった。術式の選択の際は,各々の利点と欠点をよく考慮するべきであると考えられた。
  • 堀口 章子, 下出 祐造, 山田 奏子, 友田 幸一
    2009 年60 巻3 号 p. 240-246
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    当科では1998年から2008年の10年間で喉頭摘出後の音声再建としてindwelling typeで長期使用可能なボイスプロテーゼであるProvox®2を32例に使用しており,音声獲得は良好である。その挿入方法は,Provox®2が考案されたオランダのThe Netherlands Cancer Institute,Hilgersらの原法により,全身麻酔下に喉頭摘出と同時に1期的に挿入する方法と,全身麻酔下に喉頭鏡をかけて2期的に後方挿入するのが一般的であった。しかし近年は国内でいろいろな2期的挿入方法が工夫されており,当科では30例が局所麻酔下に2期的挿入が行われている。その背景としては,Provox®2が考案されたオランダを代表とする欧州での保険制度の違いもあげられるが,手術後にできるだけいろいろな発声方法を喉頭摘出患者に試してもらい,選択の幅を広げるという目的もある。挿入方法の工夫としては,耳鼻科用軟性ファイバースコープの光をガイドライトとして用い,ライトの傍らで尿道バルーンを膨らませて食道粘膜にテンションをかけて尖刃刀を用いた切開をしやすくした点である。気管孔から食道粘膜(空腸粘膜)を切開し一旦ファイバーを気管孔側へ貫通させ,交通を確認したうえで形成したシャントにボイスプロテーゼを前方挿入する。現在このような方法でシャント形成を行った症例のほとんどは大きなトラブルはなかったが,3例に術後数年を経過してシャント拡大がみられ,アテロコラーゲンを注入した。また,シャント形成した翌日2例に食道粘膜の自然閉鎖がみられたため再切開を行い,シャントが落ち着くまで尿道バルーンを挿入し安定化を図った。今後症例を重ね,よりよく簡便なシャント形成手技を工夫する必要があると考えられる。
  • 佐藤 克郎, 山本 裕, 富田 雅彦, 松山 洋, 高橋 姿
    2009 年60 巻3 号 p. 247-253
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    当科でEjnell法による声門開大術を施行した11症例につき,臨床的に検討した。病態は全例が両側声帯麻痺で,原因疾患は甲状腺手術後が55%と最も多かった。年齢は50歳代と60歳代が大部分で82%を占め,性別は女性が64%と多かった。発症から手術までの期間は3年以内が多く55%であり,中央値は49カ月であった。当科の術式は,直達喉頭鏡のモニター下に頸部術者と内視鏡術者が連携し,2-0ナイロン糸を声帯の前方と後方の2カ所にかけて牽引,セラミック製リガメントプルアウトプレートを用いて固定する方法を標準とした。無関位発声時呼気流率は術前平均140ml/秒から術後初回検査では平均580ml/秒と声門の開大がみられ,平均290日の経過観察後414ml/秒と低下した。その結果,82%の症例で気管切開孔が閉鎖可能であった。Woodman手術,cordotomy施行後の1例においても,本手術により気管カニューレ抜去が可能であった。気管切開を行わずに本手術を施行する術式の適応と,音声機能の長期経過観察が今後の課題と考えられた。
  • 船戸 宣利, 渡嘉敷 亮二, 鈴木 衞
    2009 年60 巻3 号 p. 254-261
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    【目的】近年,咽喉頭異常感の誘因を上部食道括約部(upper esophageal sphincter:以下UES)圧の上昇とする報告が散見される。一方,中部食道へ酸を注入することでUES圧が上昇するとの報告がある。これらを結びつけることにより,胃酸の逆流がUES圧を上昇させ咽喉頭異常感(globus sensation:以下globus)を引き起こすという仮説が成り立つ。この仮説を臨床実験にて検証するために以下の実験を行った。
    【方法】20例の健常ボランティアに,4チャンネルpHセンサーと,嚥下運動の影響を受けないスリープ型圧センサーを挿入しUES圧を持続的に測定した。中部食道より胃酸と同じ0.1Nの塩酸を1分間に約20mlの速度で注入し,1)胸やけを訴えるまでの時間,2)咽頭のglobusを訴えるまでの時間,3)UES圧の変化を測定した。1),2)の両方を訴えた時点で塩酸の注入を終了した。1),2)の訴えの有無にかかわらず塩酸の注入量が100mlとなった時点で実験を終了とした。コントロール群には蒸留水を用い,同様に測定した。
    【結果】1)酸注入試験により,20例中13例でUES圧が上昇した。13例ともglobusを自覚した。2)13例中10例で胸やけがglobusに先行した。3)13例とも上部2本の電極にはpHの低下は見られなかった。4)対照群でglobusを訴えた例はなかった。
    【総括】食道内酸逆流により球症状が出現することが示唆された。ほとんどの例で胸やけの発現がglobusより先行したことから,globusの誘因としてLPRDを疑う場合,胸やけの有無を問診することがスクリーニングとして重要であると思われた。pHの低下が下部電極のみにしか起こらなかったことから逆流によるglobusの発症にはいわゆる「反射説」といわれている迷走神経反射が関与していると考えられた。
  • 本多 通孝, 三浦 昭順, 加藤 剛, 宮本 昌武, 出江 洋介
    2009 年60 巻3 号 p. 262-267
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    食道癌扁平上皮癌において,FP療法(5-FU+Cisplatin)無効例,もしくは有効再増悪例に対するsecond-lineの化学療法は確立されていない。当科では2005年1月から2008年4月までの期間にDocetaxel 60mg/m2・Nedaplatin 80mg/m2の併用療法をsecond-lineとして46例,64病変に施行,その有効性・安全性について検討した。対象は前治療としてFP療法もしくはFAP療法が施行された症例であり,術後再発,化学放射線療法(CRT)後の再燃,切除およびCRT不能,内視鏡治療後再発がそれぞれ12,18,15,1例であった。平均2.4回施行し,総合効果は13.0%(CR 1例,PR 5例,SD 26例,PD 14例),本治療開始日からの50%生存期間は190日,1年生存率は33.9%であった.Grade 3以上の有害事象は31例(67.4%)に出現した。特に血液毒性が多く,白血球減少,好中球減少,血小板減少をそれぞれ29例(63.0%),22例(47.8%),3例(6.5%)に認めた。また,1例(2.2%)がDocetaxelとの関連性を完全には否定できない重篤な間質性肺炎を発症した。白血球減少,間質性肺炎に注意を要するが,食道癌に対するsecond-lineとしての本療法は一定の効果を認め,有望であると考えられた。
  • 西村 光平, 藤田 博正, 田中 寿明, 田中 優一, 的野 吾, 村田 一貴, 梅野 博仁, 白水 和雄
    2009 年60 巻3 号 p. 268-275
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    【背景】食道癌術後のQOLを損なう原因として胃食道逆流症(GERD)や咽喉頭逆流症(LPRD)がある。食道癌術後のGERDに関する報告は多いが, LPRDに関する検討は少ない。
    【対象と方法】逆流性咽喉頭炎の内視鏡的重症度を(1)咽喉頭の発赤・腫脹の程度と範囲,(2)喉頭の肉芽腫あるいは瘢痕性狭窄の有無によりグレード0~IVに分類した。食道切除・頸部食道胃吻合術後の54人(CEG群)と食道切除・胸腔内食道胃または食道空腸胃吻合術後の32人(TEG群)を対象とし,逆流性咽喉頭炎の重症度と臨床症状ならびに逆流性食道炎との関連を検討した。
    【結果】逆流性食道炎はTEG群で重症例が多かったが,逆流性咽喉頭炎の程度はCEG群, TEG群の2群間で差がなかった。また,咽喉頭症状およびFスケールと逆流性咽喉頭炎の重症度は両群ともに相関しなかったが,逆流性咽喉頭炎と逆流性食道炎の重症度は相関していた(CEG群:p <0.001,TEG群:p =0.004)。
    【結語】新しい逆流性咽喉頭炎の内視鏡分類を提案した。食道癌術後の患者において逆流性咽喉頭炎と逆流性食道炎の間に相関性が認められたが,臨床症状には関連性がなかった。食道癌術後患者は愁訴がなくても内視鏡検査において逆流性咽喉頭炎を認める場合が少なくない。
  • 三輪 正人, 狩野 信和, 岩崎 洋子, 中島 規幸, 山口 晋太郎, 廣瀬 壮, 阿部 実恵子, 三輪 真由美, 渡辺 建介, 高山 賢哉 ...
    2009 年60 巻3 号 p. 276-280
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル 認証あり
    胃酸による食道外の粘膜上皮障害の機序をより明らかにするため,摘出モルモット気管上皮の初代培養細胞を作成し,上皮膜抵抗を測定することで酸による電気的バリアの変化を検索した。塩酸を頂膜側より投与しpHを徐々に変化させると,pH 3より上皮膜抵抗は低下し,初代培養気管粘膜上皮細胞の電気的バリアのdown regulationが有意に認められた。培養液中にプロトンポンプインヒビターであるランソプラゾールを投与していた群では,pHを変化させても,上皮膜抵抗の有意な変動はみられなかった。この細胞の上皮膜抵抗が,どの因子から構成されているかの手がかりを得るため,代表的なイオンチャネルであるクロライドイオンおよびナトリウムイオンチャネルのブロッカーを頂膜側より順次投与し,上皮膜抵抗を測定した。それぞれ,上皮膜抵抗の有意な上昇効果をきたしたが,これらの効果はランソプラゾール投与群,非投与群との間では,有意な差を認めなかった。また,その後,酸を投与したところ,上皮膜抵抗は減少した。これらの結果から,酸暴露により,気道上皮の電気的バリアの破綻が惹起されることが示され,この反応は一部上皮の頂膜側のイオンチャネルを介していることが示唆された。また,プロトンポンプインヒビター投与は,酸暴露時の電気的バリアの障害を部分的に防止する効果を持つ可能性が証明された。
症例
  • 山口 聡子, 齋藤 康一郎, 林 裕次郎, 石黒 隆一郎, 里 悌子, 川浦 光弘
    2009 年60 巻3 号 p. 281-287
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,気道狭窄をきたした巨大な喉頭顆粒細胞腫の1例を経験した。症例は26歳アフリカ系黒人女性で,進行性の呼吸苦と嗄声を主訴に当院を受診した。初診時,声門は披裂部から突出する腫瘤で覆われており,緊急気管切開での気道確保を要した。喉頭微細手術での腫瘤摘出を試みたが,腫瘤は声門下に達しており,位置と大きさから,喉頭微細手術での摘出は不可能であった。喉頭微細手術での生検で,腫瘤は,顆粒細胞腫と診断され,喉頭截開術により摘出された。腫瘍は声帯の後交連周囲に存在したため,喉頭截開術により,良視野を得ることができた。
    顆粒細胞腫は,そのほとんどが良性であるが,まれに悪性も存在し,病理組織所見のみからでは,予後予測は困難であり,術後も注意深い経過観察が必要である。
  • 平野 滋, 楯谷 一郎, 岸本 曜, 伊藤 壽一
    2009 年60 巻3 号 p. 288-292
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2009/06/25
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    再発性喉頭乳頭腫に対しKTPレーザーを用いた光凝固治療が奏効したので報告する。KTPレーザーはヘモグロビンに吸収されやすく,低出力で照射すると周囲の組織損傷を最小限に,血管性病変を光凝固することができ,また軟性内視鏡のチャンネルを使うことで表面麻酔下の外来日帰り手術が可能である。この原理を用い,乳頭腫の栄養血管を凝固することで腫瘍の制御を試みた。症例は60歳男性で,過去3回ラリンゴマイクロサージャリーを受けたが今回再発した。病変は右声帯膜様部,両側声帯後方,喉頭蓋に認め高度嗄声を呈していた。表面麻酔下,軟性内視鏡を用いてKTPレーザーによる腫瘍血管の光凝固をした。3カ月後,ほとんどの病変は消失し,音声も著明な改善をえた。本法は喉頭乳頭腫に対する低侵襲手術として有用であると思われた。
用語解説
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