日本気管食道科学会会報
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60 巻, 4 号
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原著
  • 中村 一博, 吉田 知之, 塚原 清彰, 山口 太郎, 岡本 伊作, 鈴木 衞
    2009 年60 巻4 号 p. 309-313
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状軟骨形成術4型(4型)は声帯の緊張を高め,話声位(SFF)のピッチを上昇させる術式である。片側声帯麻痺症例に対し披裂軟骨内転術や甲状軟骨形成術1型に併施されることが多いが,ピッチ上昇を目的に単独で施行されることもある。今回われわれは,女性ホルモン異常によりSFFの低下をきたした2症例に4型を施行し良好な結果が得られたので報告する。
    症例1·72歳女性・接客業:数年前から女性ホルモン低下をきたし,4年前からホルモン補充療法(HRT)を受けていた。更年期症状は良くなったが,SFFは徐々に低下し相手に伝わらず日常生活に支障をきたし,SFFの上昇目的に紹介され受診した。初診時のSFF 186.1 Hz,最低音157.8 Hzであった。
    症例2·50歳女性・介護職:2年前からSFFが徐々に低下した。それにつれて仕事に不都合が生じるようになった。同時期より更年期障害の診断にてHRTを開始した。更年期症状は改善したが,声は良くならず,SFFの上昇を希望し受診した。初診時のSFF 178.3 Hz,最低音130.8 Hzであった。
    両症例ともに局所麻酔下に4型を施行した。術中より解析ソフトを用いSFFを測定し,患者の満足するピッチに調節した。術後のSFFは症例1:323.7 Hzに,症例2:251.1 Hzに上昇した。女性ホルモン異常による低音化音声障害には4型は有用な術式であった。
  • 稲垣 康治, 齋藤 康一郎, 大久保 啓介, 小川 郁, 塩谷 彰浩
    2009 年60 巻4 号 p. 314-322
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    当施設では2003年から一側性声帯麻痺に対し,リン酸カルシウム骨ペースト(商品名BIOPEX®-R3mLキット,以下BIOPEX®)を用いた声帯内注入術を施行してきた。2008年9月までに全身麻酔下,直達喉頭鏡下に注入術を行った症例は48例であった。声帯内注入物質としてのBIOPEX®の有用性と安全性,術後の音声・嚥下機能改善や安定性については,当施設および関連施設より過去に報告されている。直達喉頭鏡下に声帯内注入術を行う場合,注入部位が手術の成否に関与する重要な要素のひとつであり,特に硬化性物質を注入する本術式においては,的確な部位に注入する確実な手術手技の習得が不可欠である。しかし注入部位の正確性を容易かつ客観的に評価する方法はこれまで文献的に報告されていない。当施設では2006年10月より本術式に目盛付き注入針と内視鏡を導入し,客観的な注入部位の術中モニタリングを可能にする工夫を行ってきた。2008年12月までに18例に施行し,声帯内注入術に熟練していない耳鼻咽喉科医でも安心して,安全・確実な施術が容易に施行可能であった。
  • 平野 滋, 楯谷 一郎, 岸本 曜, 伊藤 壽一
    2009 年60 巻4 号 p. 323-330
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    KTPレーザーは声帯の手術において有用であり,特に血管性病変の光凝固に威力を発揮する。今回KTPレーザーの後継機器として,同じ波長を有するグリーンレーザーの有用性,安全性を検討した。対象は声帯ポリープ6例,ラインケ浮腫3例,微小血管病変1例,血管腫1例,喉頭癌2例で,これらに対しグリーンレーザーを用いたラリンゴマイクロサージャリーを施行した。声帯ポリープの1例は光凝固のみ,他の5例とラインケ浮腫では周囲血管の光凝固ののちマイクロフラップ手術を行った。微小血管病変,血管腫は光凝固のみで治療を完了した。喉頭癌の1例では周囲血管の光凝固,マイクロフラップ手術を,他の1例ではレーザー切除(cordectomy)が施行された。全例,レーザー手術は簡便に施行でき,術中の出血のコントロールは極めて良好であった。声帯ポリープ群で術後音声機能を検討した結果,音響分析,空気力学的検査において改善を認め,術後瘢痕形成をきたした症例は認められなかった。喉頭癌のレーザー切除では,切開能に問題があり手術時間がかかったものの,術中の出血のコントロールは良好であった。グリーンレーザーは声帯の手術に有用かつ安全であり,KTPレーザーの後継機器としても十分使用可能なことが明らかとなった。
  • 飯田 実, 部坂 弘彦, 森 文, 太田 史一, 大橋 正嗣, 小森 敦史, 露無 松里, 森山 寛
    2009 年60 巻4 号 p. 331-335
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    声帯嚢胞に対する手術法の多くは全身麻酔下に喉頭微細手術にて行う方法であり,全摘出を目的とした方法と,広く開窓する方法がある。局所麻酔下に日帰り外来手術で行う方法の報告はなく,これが初めての報告である。
    今回われわれは過去11年間に行った局所麻酔下の外来日帰り手術,名付けて「内視鏡下声帯嚢胞開窓術」40症例につき検討を行った。音声機能において,振幅の変動率(APQ)・規格化雑音エネルギー(NNE)・平均呼気流量(MFR)では有意差をもって改善し,最長持続発声時間(MPT)・基本周期の変動率(PPQ)では改善傾向を示していた。
    この方法は利点として,術中に音声を聴きながらできること,ストロボスコピー下に粘膜波動を確認できること,全身麻酔・喉頭展開不可能症例に対応できることなどがある。一方問題点としては,咽頭反射が強い症例では不可能であること,再発時の全摘出手術が難しくなることなどがあげられる。
    本治療法は利点も多く,声帯嚢胞に対する治療のひとつの選択肢となりうると考える。
症例
  • 大西 将美, 村井 道典, 出原 啓一, 大橋 敏充
    2009 年60 巻4 号 p. 336-343
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭原発の軟骨肉腫は非常に稀な腫瘍である。今回,われわれは嗄声を自覚してから確定診断を得るまでに14年を要した64歳男性の披裂軟骨原発の軟骨肉腫症例を経験したので報告した。今回,別件で撮影した頸部単純X-pで異常石灰化を指摘され当科受診となった。初診時,喉頭内視鏡で左披裂外側粘膜下に巨大腫瘤と声帯の固定を認め,喉頭で呼吸狭窄音が聴取された。CT検査では輪状軟骨左側から正中へ増殖する巨大な内部の不均一な石灰化を伴う腫瘤性病変を認めた。MRI検査ではT1強調画像で周囲が低信号,T2強調画像で周囲が高信号のモザイクパターンを示す腫瘍性病変を認めた。軟骨腫瘍を疑い喉頭截開術を用いた粘膜下腫瘍摘出術を行った。病理組織結果は軟骨肉腫grade Iの診断であった。追加治療は行わず,現在4年経過し再発を認めていない。
  • 吉崎 智一, 辻 亮, 室野 重之
    2009 年60 巻4 号 p. 344-347
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    再発性喉頭乳頭腫は比較的まれな疾患であるが,しばしば再発を繰り返し,治療に難渋する疾患である。近年抗ウイルス薬シドフォビルによる喉頭乳頭腫治療に関する報告が散見されるようになった。しかし,日本では未承認薬であるためその報告例はない。
    われわれの施設では従来から上咽頭癌に対する基礎および臨床研究で本薬剤を使用してきた経験もあり,再発性喉頭乳頭腫に対して3回にわたりシドフォビル注入を試行した。その結果,2回目の注入で腫瘍は消失した。特に有害事象は観察されなかった。1年3カ月経過したが現在も無再発で経過観察中である。
  • 太田 正穂, 中村 努, 林 和彦, 成宮 孝祐, 佐藤 拓也, 山本 雅一, 井手 博子
    2009 年60 巻4 号 p. 348-352
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は71歳男性。食道癌に対して右開胸開腹食道切除胃管再建術が施行されている。術後定期的に行っていた内視鏡による経過観察により,術後20年目に下咽頭癌が指摘された。下咽頭後壁に1cm大の0-IIc様の病変をみとめ,上皮内癌と思われた。画像上リンパ節転移はみとめられなかった。内視鏡下にアルゴンプラズマ焼灼術を施行し,再発なく経過観察中である。食道切除術後は重複癌発見のためには長期の経過観察が必要と考えられた。
  • 東川 雅彦, 峰晴 昭仁, 田中 朝子, 辻 雄一郎
    2009 年60 巻4 号 p. 353-357
    発行日: 2009/08/10
    公開日: 2009/08/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の男性。食道癌の術後,両側反回神経麻痺をきたし気管切開術を施行した。声帯運動は1年経過しても回復しなかったため,声門開大術(Ejnell法)を施したのちに気管孔閉鎖をおこなった。声門開大術後より,咳をしたときに低い摩擦音様の雑音が聴取されていた。気管ファイバースコピーで,気管が左右から圧排され,咳の際には接している像が確認された。呼吸困難はなかったため経過観察としていた。気管孔閉鎖約7カ月後,感冒様症状を訴え受診,胸部X線で気管の狭窄を認めた。ステント,Tチューブ留置あるいはCPAP療法などを勧めるも,本人は希望されず,肺炎を併発し1カ月後に永眠された。
用語解説
特別寄稿
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