日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
60 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集:気管食道領域における漢方医学
  • 花輪 壽彦
    2009 年60 巻5 号 p. 373-378
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    漢方の考え方や治療の特徴について概説した。漢方医学は,“証”に随って治療を行う“方証相対”である。癌の補助療法などにも使われるが,漢方薬のアレルギーによる副作用にも注意が必要である。これからの医学は,現代医学と漢方医学の併用療法になり,いわゆる統合医療が模索されている。
  • 木下 優子, 矢久保 修嗣
    2009 年60 巻5 号 p. 379-383
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    漢方治療ががん治療のQOL改善に効果があり,症状緩和においても有効である。院内マニュアルに収載されるなど使いやすいものとしては,1)全身倦怠感の改善に十全大補湯,2)食欲不振に補中益気湯,3)胃の症状(食欲不振や嘔気嘔吐など)に茯苓飲と六君子湯(胃の入り口でつかえてうまく入っていかない場合:茯苓飲,胃もたれ感が強い・胃の中に物がたまって出て行かない場合:六君子湯),4)化学療法・放射線療法の副作用軽減に開始前(できれば2週間以上)より十全大補湯,胸椎に放射線治療を行っているときの食道の不快感には加味逍遥散,化学療法中の下痢に半夏瀉心湯や啓脾湯(カンプトテシンの下痢:半夏瀉心湯,それ以外の場合:啓脾湯),化学療法時の痺れ:牛車腎気丸,5)イレウスやモルヒネによる便秘に大建中湯,6)口内炎に立効散,7)吃逆に呉茱萸湯または芍薬甘草湯,いずれも無効な場合は柿蒂(してい)の使用を検討する,8)悪夢を見るときに桂枝加竜骨牡蛎湯,9)ビスホスホネート製剤(ゾメタ)の副作用による痛み・発熱に麻黄湯,10)下血などの消化管出血に田七人参(粉末)などがあり,緩和ケアの現場で有効であると考えられる。
  • 佐藤 弘
    2009 年60 巻5 号 p. 384-392
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    現在薬価収載されている医療用漢方製剤の中で,しばりを含めて効能効果を有する製剤を中心に解説した。感染症,炎症性疾患では,病初期には葛根湯あるいは葛根湯加川〓辛夷を中心に,やや遷延した状態(亜急性期)は,小柴胡湯あるいは同湯に桔梗石膏を加味した小柴胡湯加桔梗石膏を中心に選択する。慢性化した病態では,柴胡を含む処方群,胃腸虚弱者では,人参,人参黄耆,膠飴が配合された処方を考慮する。アレルギー性鼻炎には小青竜湯,めまい,特にたちくらみには苓桂朮甘湯,咽喉異常感症には半夏厚朴湯を中心に処方を考慮する。その他加齢に伴う病態には腎虚として八味地黄丸を,更年期,月経異常を伴う例には,〓血として駆〓血剤である桂枝茯苓丸,当帰芍薬散を中心に治療を考えるとよい。処方選択に際しては,腹部所見が参考になる場合も多い。特に柴胡剤では胸脇苦満が,駆〓血剤では下腹部の抵抗圧痛が,八味地黄丸では,臍下不仁,小腹拘急,臍下正中芯が目標とされる。生薬および処方レベルでの副作用発現にも注意しながら経過を観察することが重要である。
  • 巽 浩一郎
    2009 年60 巻5 号 p. 393-400
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    本論文では漢方医学的と同時に西洋医学的観点から,気道系領域疾患の治療として,西洋薬とともにどのように漢方薬を使用するかを考察した。漢方治療では一般的に患者の体力,病態,病気の進展に合わせて薬方を決定することが重要である。喀痰がからまるという患者の病態が去痰薬,気管支拡張薬,吸入ステロイド薬,抗菌薬では十分に改善しない場合,例えば半夏厚朴湯という漢方薬は喀痰がほとんどなく,咽頭部の閉塞感を訴える場合に効果が期待できる。
    咳嗽反射,嚥下反射の低下は誤嚥性肺炎の誘因になりうる。そのような場合,半夏厚朴湯の投与は咳嗽反射,嚥下反射を改善することにより,誤嚥性肺炎を予防しうる。
    遷延性あるいは慢性咳嗽は鎮咳薬,抗菌薬,去痰薬,気管支拡張薬,吸入ステロイド薬などの西洋薬を使用しても,十分に改善しない場合がある。麦門冬湯,五虎湯,麻杏甘石湯,越婢加半夏湯などの漢方薬は,そのような場合に有用である可能性がある。西洋医学の薬と漢方薬の併用は,新たな効果を発揮しうると期待する。
  • 大島 忠之, 三輪 洋人
    2009 年60 巻5 号 p. 401-408
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    胃食道逆流症(GERD)は欧米に多いと言われてきたが,食生活など生活習慣の欧米化,肥満の増加,酸分泌能の増加,Helicobacter pylori感染率の低下などから,わが国でも確実に増加傾向にある。GERDでは,胃から食道への逆流を防ぐ機構あるいは排出する機構が食道運動異常,下部食道括約筋の機械的あるいは機能的異常,食道クリアランス,胃内容の排出遅延などによって障害され,著しく生活の質(QOL)が損なわれている。わが国には非びらん性胃食道逆流症(NERD)や軽症の逆流性食道炎が圧倒的に多く,これら軽症のGERDが重症GERDに進行することは多くない。したがって自ずと治療目標は,自覚症状である胸やけ,呑酸などの症状改善や,これに伴う日常QOLの向上となる。最も有用な治療は胃酸分泌抑制であるが,この薬の効果が少ないときには治療に難渋することも多い。実際,食道粘膜傷害と症状が相関せず,NERDにおける,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果は50%程度と言われている。近年,GERD治療における漢方薬のエビデンスが得られつつある。六君子湯は,酸分泌を抑制することなく,食道クリアランス,あるいは胃排出能や胃適応性弛緩作用を介してGERD患者,特にNERD患者で症状を改善する可能性が考えられる。
  • 鈴木 順造, 長澤 克俊
    2009 年60 巻5 号 p. 409-416
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    小児の上・下気道感染症ならびに気管支喘息に対する漢方療法を述べた。漢方療法とはいえ,医の東西を問わず患児を丁寧に観察・診察して,適切な治療を行うことに変わりはない。そのためには,まず患児の疾患が内科的なものであることを診断する必要がある。そして,この際,重度な緊急疾患や細菌感染症が疑われる場合は,漢方療法での対処は困難であることが多いので,西洋医学療法を第一に選択し,漢方療法は補助的なものとする。その上で,漢方療法の対象となる疾患が,いずれの病位にあるのかを証とともに決定し,方剤を選択する。そして,患児の服薬コンプライアンスをよく観察し,悪ければ他の方剤への変更を考慮することが大切である。小児の呼吸器疾患に対して,漢方療法的なアプローチをすることにより,個々の患児に応じたオーダーメイドの医療が可能になると思われる。
  • 伊藤 隆
    2009 年60 巻5 号 p. 417-423
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    喘息に対する漢方治療は現代もなお重要な役割がある。その適応は副作用あるいは臨床効果がみられないなどの理由により吸入ステロイド薬による効果を期待し難い場合である。またメンタルヘルスと易感染性の問題のある症例もよい適応である。こうした患者に対する漢方薬の処方選択に関するエビデンスの蓄積は未だ充分ではなく,伝統医学的な診断方法がなお有用である。原則として発作時には麻黄剤を,発作の予防のためには柴胡剤をそれぞれ処方する。発作時に用いる麻黄剤としては麻杏甘石湯が基本であり,発汗のある時期に用い,脱水の時期には現代医学的対応が必要である。柴胡剤には,抗アレルギー作用,抗炎症作用だけでなく,精神面に対する作用がある。喘息発作の誘因あるいは合併症としてのうつ状態,不安に対しては柴胡剤あるいは半夏厚朴湯などを併用していく。体重減少あるいは呼吸機能障害を認める場合には補剤を検討する。麦門冬湯に関して,後輩医師が最新の薬理学的研究成果に対する理解が浅いために,伝統医学的な立場からは誤った使い方をした事例をあげ,西洋医学と東洋医学の調和した学習が必要なことを述べた。
原著
  • 永井 浩巳, 西山 耕一郎, 木村 祐, 田畑 泰彦, 岡本 牧人
    2009 年60 巻5 号 p. 424-432
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    声帯内自家筋膜移植術の長期経過は,自家筋膜が再吸収されるのにもかかわらず良好である。これは,この移植により筋膜を細胞と足場として移植部に提供でき,このことが生体内の調節因子を活性化し,喉頭の再形成がされると推測している。今回われわれは,自家筋膜と,成長因子のひとつであるb-FGFをともに移植し,移植筋膜の残存の向上と喉頭組織の変化を検討した。ラットを用いて実験し,筋膜とb-FGFを浸透させたゼラチンハイドロゲルシートを喉頭内に移植した。移植後12週間で,b-FGF投与群は,移植筋膜の残存と脂肪組織の大きさが非投与群に比べて有意に大きかった(p < 0.05)。この結果から,脂肪組織の増大は,b-FGFによる脂肪新生が考えられ,移植筋膜の残存は,移植筋膜が組織の再建に関与していると思われた。われわれは,この移植術が一側性反回神経麻痺の治療として有益である可能性を示唆した。
症例
  • 水田 啓介, 山田 南星, 安藤 健一, 久世 文也, 加藤 久和, 青木 光広, 伊藤 八次, 長尾 成敏
    2009 年60 巻5 号 p. 433-439
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭全摘術後の気管孔周囲再発は喉頭癌の治療で最も重篤な再発であり,治療戦略や予後について,Sessonらの腫瘍進展の分類が重要である。われわれは4例の気管孔周囲再発例に対して手術治療を行ったが,Sessonらの分類では3例がType I,1例がType IIIであった。
    Type Iの3例に対しては頸部操作で,Type IIIの1例に対しては縦隔内操作を加えた。Type Iの症例は,1例は術後予後良好(術後4年5カ月)で,遠隔転移のため2例の予後は不良であったが,1例は局所制御良好であった。Type IIIの1例は縦隔内で気管と食道を腫瘍と合併切除し,予後良好であった。気管孔周囲再発に対する手術は確実な切除を行い,合併症を予防し安全に手術を行うために,術前画像と内視鏡検査により進展範囲を十分に検討する必要があると考えられた。
  • 増田 聖子, 蓑田 涼生, 松吉 秀武, 湯本 英二
    2009 年60 巻5 号 p. 440-445
    発行日: 2009/10/10
    公開日: 2009/10/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺原発扁平上皮癌は稀な疾患であり,その予後は非常に悪いことが知られている。今回2年以上再発なく経過良好であった甲状腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は68歳男性。前頸部腫瘤を自覚したため近医を受診した。腫瘤は数日で急激に増大し,軽度の呼吸困難感が出現した。CTにて甲状腺右葉に腫瘍を認め,細胞診で低分化型扁平上皮癌の診断を得た。当科紹介となり,発症から17日目に甲状腺全摘,右根治的頸部郭清術,上縦隔郭清術,気管環状切除および端々吻合による再建を行った。気管切除は9気管輪に及んだが,縫合不全や誤嚥などの合併症は見られなかった。その後化学療法,放射線照射を行い,術後2年4カ月再発なく経過良好である。発症早期に徹底した根治手術を行えたことが,予後良好であった一因と考えられた。また気管端々吻合による合併症予防を考慮した術後管理が重要であると考えられた。
用語解説
エラータ
feedback
Top