日本気管食道科学会会報
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62 巻, 1 号
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原著
  • 中村 一博, 塚原 清彰, 吉田 知之, 稲垣 太郎, 清水 雅明, 豊村 文将, 勝部 泰彰, 鈴木 衞
    2011 年62 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    披裂軟骨内転術 (AA) の術後合併症は,急性期の喉頭浮腫による呼吸苦が一般的によく知られている。そのほか準急性期,晩期にも,血腫,感染,気管穿孔,食道穿孔などがある。今回われわれは,当科において施行したAAの術後合併症について検討した。
    症例は2001年9月から2010年1月までにAAを施行した28例である。合併症は重複しており,28例中5例 (17.9%) に合併症があった。内訳は,呼吸苦が3例 (10.7%),術後出血が2例 (7.1%),食道穿孔が2例 (7.1%),感染・膿瘍が3例 (10.7%) であった。その結果として気管切開術を3例 (10.7%) に,ゴアテックス抜去を2例 (7.1%) に要した。
    急性期の出血・血腫による喉頭浮腫には迅速な止血術と気管切開術が必要であった。準急性期に食道穿孔が発見された際には予防的気管切開術と迅速な瘻孔閉鎖術が必要であった。食道穿孔の予防には梨状窩粘膜の扱いをより慎重に愛護的に行う必要があると考えられた。晩期の感染・膿瘍では異物であるゴアテックスを残しておくことは難しく抜去が必要と考えられた。
  • 二村 吉継, 東川 雅彦, 岡村 光英, 中井 健, 櫟原 健吾, 林 伊吹
    2011 年62 巻1 号 p. 11-16
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    FDG-PETは頭頸部領域における悪性腫瘍の治療方針決定や再発診断に有用である。一方で,筋肉の運動においても糖代謝が亢進することがある。喉頭に病変を認めない症例においてもFDGの生理的集積を認める場合があり,一側声帯麻痺症例では健側喉頭にFDGの集積を認めることが知られている。今回,喉頭ファイバースコピーにて喉頭に病変のないことを確認し得た一側声帯麻痺症例28例について喉頭集積の程度と陽性率を定量的に検討した。撮像は1例を除いた27例でFDG投与1時間後 (早期),2時間後 (後期) の2回撮像を行った。発声機会は問診時以外にはなかった。28例中25例でいずれかの撮像で健側に強い集積を認めた。健側の集積を認めなかった3症例はいずれも声帯麻痺の原因は悪性腫瘍ではなかった。また,早期像,後期像とも健側声帯の集積は麻痺側の集積に対し統計学的に有意に強かった (p<0.01) 。また,後期像は早期像に対し集積が強く統計学的に有意であった (p<0.01) 。一側声帯麻痺症例の健側喉頭では代償運動により糖代謝が活発化しているためであると推察した。FDG-PETによる片側性喉頭集積は悪性腫瘍以外に一側声帯麻痺の可能性を考える必要がある。
  • 蠣崎 文彦, 津布久 崇, 松村 道哉, 古田 康
    2011 年62 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    2007年7月から2010年3月までに当科を受診した喉頭帯状疱疹6例について臨床的検討を行った。確定診断のため初診時と2~3週後にウイルス血清検査を行い,全例において抗VZV IgG抗体価の有意上昇を認めた。すべての症例において咽頭痛,嚥下時痛などの疼痛を認めた。混合性喉頭麻痺を4例に,顔面神経麻痺を2例に認めた。1例では神経症状を認めなかった。混合性喉頭麻痺を認めたが,疱疹を認めず,ウイルス血清検査で無疱疹性帯状疱疹 (zoster sine herpete) と確定診断された例が2例認められた。全例帯状疱疹を疑った時点で,抗ウイルス薬とステロイドの投与を行った。5例は3カ月以内に疱疹と神経症状が治癒したが,1例において声帯不全麻痺が残存した。疼痛を伴う混合性喉頭麻痺症例では帯状疱疹を考慮し,早急に抗ウイルス薬とステロイドの投与を考慮することが勧められる。また,確定診断には計2回のウイルス抗体価測定が必要と考えられた。
症例
  • 栗田 卓, 梅野 博仁, 千年 俊一, 濱川 幸世, 中島 格
    2011 年62 巻1 号 p. 24-29
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    喉頭形成術は覚醒下で患者の音声を確認しながら行う手術であるが,最近では全身麻酔下に行っている施設がある。今回われわれは他施設で全身麻酔下に行われた甲状軟骨形成術IV型術後に呼吸困難,嚥下障害,発声障害を訴え受診した性同一性障害症例を経験した。
    初診時,両側声帯外転障害による気道の狭小化を認めた。右声帯はほぼ正中位固定しており,左声帯は外転障害を認めた。呼吸困難の改善のために甲状軟骨形成術IV型時に甲状軟骨と輪状軟骨を近接させたナイロン糸を切断したが,近接を解除できず,気管開窓術を行った。甲状軟骨IV型術後1年後には声帯の可動性がわずかに改善し,呼吸困難・嚥下障害・音声障害の改善がみられた。本症例の病態は甲状軟骨と輪状軟骨の過度の近接により声帯の過伸展による過度の声門閉鎖と喉頭挙上障害が生じたことである。声帯の可動性が改善した理由は,長期間の声帯の過伸展により声帯長が緩み,声帯緊張が経時的に減弱したためと推察された。
  • 細川 誠二, 岡村 純, 瀧澤 義徳, 峯田 周幸
    2011 年62 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    アミロイドーシスとくに喉頭原発のものは,まれな疾患である。今回われわれは,喉頭アミロイドーシスの2症例を経験したので報告する。症例1は67歳の女性。主訴は嗄声であった。喉頭内視鏡検査にて,声門上に表面平滑な腫瘤を認め,喉頭微細手術を施行したところ,アミロイドーシスの診断に至った。限局性アミロイドーシスであったが,11年後再増大のためにYAGレーザーによる切除術を行った。約22年以上経過した現在でも増大等を認めていない。症例2は71歳の女性。16年前に他院にて喉頭微細手術を施行され,喉頭アミロイドーシスと診断されていた。再増大が疑われたため,当院を紹介された。嗄声を認めるも,患者とのインフォームドコンセントにより経過観察のみしている。近年YAGレーザーなどによる切除術にとどめ,過剰な手術侵襲を加えてまで全病変を摘出する必要はないという報告が多い。しかしながら,今後腫瘤切除術の必要性も生じる可能性があるため,長期間にわたる定期的経過観察が必要である。
  • 駒林 優樹, 片山 昭公, 岸部 幹, 國部 勇, 片田 彰博, 林 達哉, 原渕 保明
    2011 年62 巻1 号 p. 36-42
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,緊急気管切開を要した血管浮腫の1例を経験したので報告する。症例は,62歳男性である。頸部,舌の腫脹を主訴に当科を受診した。舌および喉頭に高度な浮腫を認めた。血管浮腫の診断で緊急気管切開を施行したが,術中に呼吸苦の増悪を認め,呼吸停止した。呼吸停止直後輪状甲状膜切開を行い,気道を確保した。アンギオテンシン変換酵素阻害薬,アンギオテンシンII受容体拮抗薬を内服しており血管浮腫の原因薬として疑い休薬し,その後浮腫の再発を認めていない。アンギオテンシン変換酵素阻害薬の副作用として血管浮腫が知られており,稀ではあるが重篤な経過をたどることがあり注意を要する。
  • 佐藤 拓也, 中村 努, 太田 正穂, 白井 雄史, 山本 雅一
    2011 年62 巻1 号 p. 43-47
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は39歳男性。上腹部痛を主訴に近医で上部消化管内視鏡検査を施行したところ切歯より19~23 cmに粘膜下腫瘍を認め当科紹介となった。EUS検査で粘膜下層内に断面12×20 mmの低エコー域を認めた。Dynamic MRI検査にて頸胸境界部食道に隣接する楕円形の腫瘤が認められ,内部はT1, T2ともに高信号,造影にて増強効果は認められなかった。以上より内容物が粘稠の食道嚢腫 (前腸嚢胞) と診断し,頸部より摘出可能と考え手術を施行した。左頸部斜切開でアプローチし食道筋層を切開し嚢腫を周囲より剥離。一部嚢腫壁を損傷し内容物の流出を認めたが食道粘膜を損傷することなく摘出することができた。嚢腫壁の病理組織像では繊毛円柱上皮が認められ,気管支腺・食道腺・軟骨は認められなかった。食道嚢腫は比較的まれとされており若干の文献的考察を加え報告する。
用語解説
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