【目的】食道癌の気管浸潤は,呼吸障害からしばしば致死的合併症へと発展するが,化学放射線治療が奏効し,症状が改善する例が多い。一方で破壊性浸潤のために気管食道瘻を発生する危険性も秘めている。本例に対するステント治療の適応と成績を示し,その役割を検討した。
【対象】1992~2010年に食道癌による気管狭窄を示した28例 (食道気管瘻7例を含む) で,年齢50~88歳,ステントはDumon型12例,dynamic型3例,膜付ultraflex型10例,留置なし3例であった。
【結果】1.気管への腫瘍浸潤は膜様部主体で,仰臥位での呼吸困難感が強かった。2.ステント留置後の中間生存月数は4カ月であり長期予後は期待できなかったが,その間気道症状はよくコントロールされていた。3.狭窄症状がありながらも仰臥位可能な3例では,化学放射線治療が奏効しステント留置は不要であった。4.化学放射線治療後にステントを抜去した例はなかった。
【結論】食道癌では,化学放射線療法が奏効して早期に気道狭窄が解除されるので,気管ステントの絶対適応は,放射線治療の際に仰臥位で呼吸困難が増強するような高度換気障害例や気管食道瘻例に限定してよいと判断された。またステント種選択に関しては,気管分岐部ではシリコンYステントが合理的であったが,気管狭窄例ではシリコン,金属の両者間で成績に差がなく,留置操作が簡単な金属ステントが第1選択と思われた。
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