日本気管食道科学会会報
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62 巻, 6 号
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原著
  • 中村 一博, 塚原 清彰, 渡邊 雄介, 許斐 氏元, 駒澤 大吾, 吉田 知之, 鈴木 衞
    2011 年62 巻6 号 p. 511-516
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
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    男性の話声位は幼少期では高いが,第二次性徴の男性ホルモン増加により低くなる。しかし,なかには思春期を過ぎても高いままの話声位が持続することがある。それを変声障害という。通常は音声治療が奏効し話声位は低下する。音声治療により低下しない症例では手術の適応となる。今回われわれは音声治療に抵抗した変声障害に手術を施行し,良好な結果を得たため,報告する。
    症例は変声障害の37歳,35歳,38歳の男性である。話声位は174.6 Hz,170.2 Hz,180.0 Hzであった。3例ともにKayser-Gutzmann法による音声治療を施行したが,話声位は低下しなかったため,甲状軟骨形成術3型が選択された。術後の話声位は,106.9 Hz, 115.4 Hz,87.5 Hzに低下した。
    音声治療で改善が得られない変声障害に対し,甲状軟骨形成術3型は有用であった。
  • 杉浦 むつみ, 大前 由紀雄, 木村 百合香, 加藤 智史, 山本 容子
    2011 年62 巻6 号 p. 517-524
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    舌根と咽頭後壁の接触と咽頭残留の関連性について検討を行った。咽喉頭異常感を主訴に受診した高齢者279例 (平均76.8歳) を対象にX線造影検査を実施し,咽頭残留の程度により咽頭残留を以下の3タイプに分類した。Aタイプ:造影剤が咽頭壁全体に残存する (86例,30.8%),Bタイプ:造影剤が舌喉頭蓋谷や梨状陥凹に残存する (90例,32.3%),Cタイプ:造影剤が残存しない (103例,36.9%) 。
    また咽頭期の嚥下運動時に,側面X線造影像をコマ送り画像で確認し,舌根-咽頭後壁の接触を以下の3群に分類した。
    (1)正常型 (181例,64.9%),(2)接触不全型 (88例,31.5%),(3)非接触型 (10例,3.6%) 。非接触型の症例は咽頭残留がAタイプの症例のみに認められた。接触不全型の症例はAタイプで50例 (58%),Bタイプで30例 (33%),Cタイプで8例 (7.8%) に認められ,舌根と咽頭後壁の接触が低下した症例で,咽頭残留がより残存する可能性が示唆された。舌根-咽頭後壁の接触障害は咽頭残留の低下に影響する一嚥下動態異常である可能性が考えられた。X線造影検査を用いた舌根-咽頭後壁の接触の評価は,咽頭残留の評価に有用な検査方法であると考えられた。
症例
  • 石永 一, 大津 和弥, 中村 哲, 宮村 朋孝, 湯田 厚司, 竹内 万彦
    2011 年62 巻6 号 p. 525-528
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    重度誤嚥で苦しむ2症例に対し,鹿野らにより修正された声門閉鎖術を行った。甲状軟骨ならびに輪状軟骨を鉗除した後に正中にて喉頭内腔に侵入し視野を展開した。その後,上下声帯粘膜弁ならびに胸骨舌骨筋弁を用いて声門閉鎖を行った。この術式はこの2症例に対し成功し,かつ術後経過も良好であった。
    結論として,成人の嚥下性肺炎の治療としては,本術式は効果的でリスクも少ないと思われた。
  • 西田 直哉, 本吉 和美, 森 敏裕
    2011 年62 巻6 号 p. 529-532
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,気道狭窄をきたし緊急手術を要した小児挿管性喉頭肉芽腫の1例を経験したので報告する。症例は11歳男児。嗄声,鼾,睡眠時無呼吸,喘鳴を主訴に当科を受診した。喉頭内視鏡検査にて左右声帯突起部に肉芽腫病変を認め,声門レベルで高度の気道狭窄を認めた。挿管の既往より,挿管性喉頭肉芽腫症と診断し,早急に気道狭窄の解除が必要と考えられたため即日入院の上,全身麻酔下にて喉頭直達鏡下に両側の肉芽腫を摘出した。挿管歴のある場合,とくにICUでの長期挿管歴のある場合は,その晩期合併症として喉頭肉芽腫に留意する必要がある。
  • 井上 真規, 小河原 昇, 田辺 輝彦, 大石 公直, 佃 守
    2011 年62 巻6 号 p. 533-537
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    昭和60年以降に当科で診断された若年型喉頭乳頭腫4例において臨床症状・喉頭所見・治療内容・治療経過・分娩方法・出生順位で検討を行った。全例に嗄声を認め腫瘤は喉頭に多発していた。LMS·CO2レーザー治療施行後も全例で喉頭に再発がみられたが数回のLMS·CO2レーザー治療で2例は治癒した。1例は転居のため経過は不明で1例は経過観察中である。本疾患の病因はHPV (human papilloma virus) の経産道感染といわれ,発症の危険因子として経膣分娩や第1子などがあげられる。当科での4例では全例経膣分娩で2例が第2子,他は第1子,第3子であった。若年性喉頭乳頭腫は多発性で再発を繰り返し治療に難渋することが多いが,再発を繰り返した症例において,短期集中のLMS·CO2レーザー治療が有効であると思われた。
  • 山本 圭介, 伊藤 裕之, 望月 隆一
    2011 年62 巻6 号 p. 538-544
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    降下性壊死性縦隔炎の治療後に頸部の瘢痕拘縮を生じ,後遺症として嚥下障害となった症例のリハビリテーションを経験した。56歳,男性,元鳶職。歯原性の降下性壊死性縦隔炎に罹患し救命治療を行ったが,後に嚥下障害を生じた。神奈川リハビリテーション病院耳鼻咽喉科にてリハビリテーションを行った。入院時には,前頸部瘢痕拘縮により安静時から高かった舌骨,喉頭の運動が,理学療法にて頸部の緊張がとれ,また造影剤の咽頭流入と喉頭の挙上および食道入口部開大のタイミングが合うことにより,気管皮膚瘻を閉じられるほどに嚥下機能が改善し,退院した。
    その後,頸部伸展障害の治療のために,他院にて下顎と喉頭の間で瘢痕形成術を受け,術後に頸部瘢痕はなくなったが,下顎骨から喉頭を中心に行われたことにより喉頭が下降し,前頸部が術後性に硬くなり,頸部筋群が過緊張になって再度嚥下機能が低下した。再度理学療法にて頸部の緊張をとることで嚥下機能は改善した。今回の経験から理学療法は咽頭期嚥下に対する有効な治療法の一つであることがわかった。
    また,瘢痕の切除が喉頭下であったなら喉頭の低下は起こらず,嚥下障害も起きなかった可能性があると考える。
  • 松田 雄大, 増田 正次, 唐帆 健浩, 甲能 直幸
    2011 年62 巻6 号 p. 545-550
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    アミロイドーシスは線維構造をもつ特異な蛋白であるアミロイド線維を主とするアミロイド物質が,全身諸臓器の細胞外に沈着することによって機能障害をきたす一連の疾患群である。アミロイドーシスは臓器障害の広がりにより全身性と限局性に大別される。今回,咽頭に限局したアミロイドーシスの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
    症例は51歳,女性。左耳閉感を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診。左滲出性中耳炎を伴う,上咽頭腫瘍性病変を認め当科紹介となった。初診時,上咽頭から中咽頭後壁,舌根部に隆起する表面平滑な腫瘤性病変を認めた。MRIを施行したところT1強調像で等信号,T2強調像で低信号の腫瘍性病変を認めた。そこで上咽頭から生検し,AAアミロイドーシスの診断を得た。内科にて全身性アミロイドーシス,全身性疾患の精査を行ったが異常を認めず,咽頭に限局したアミロイドーシスと考えられた。AAアミロイドーシスは慢性炎症性疾患に続発する全身性アミロイドーシスをきたすことが多い。限局性から全身性への移行は2.1%と考えられており,全身性アミロイドーシスは予後不良なため,今後も慎重な経過観察が必要と考える。
  • 大上 研二, 杉本 良介, 酒井 昭博, 戎本 浩史, 濱野 巨秀, 飯田 政弘, 西山 耕一郎
    2011 年62 巻6 号 p. 551-555
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    気管切開術中の電気メス使用による気管熱傷および気管狭窄症例を経験した。63歳男性の中咽頭癌患者に対して気管切開を全身麻酔下に施行した。高酸素濃度下での気管切開中,電気メス使用により気管挿管チューブが発火した。気管と皮膚にII度からIII度の熱傷を生じ,その後気管狭窄をきたした。気道熱傷後7カ月で瘢痕切除と先端ドーム型のTチューブで修復した。気管切開中高濃度酸素条件下では電気メスは使用すべきではない。気管切開中のサージカルファイアの危険性について外科医の注意を喚起した。
  • 岸野 毅日人, 星川 広史, 森 望
    2011 年62 巻6 号 p. 556-561
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/25
    ジャーナル 認証あり
    Acute respiratory distress syndrome (ARDS) は高サイトカイン血症に伴う活性化好中球による血管内皮障害と,それに引き続く肺胞上皮細胞障害による肺水腫が病態の中心であり,その死亡率は30%以上とされている。われわれは化学療法後の好中球減少期に肺炎に罹患し,G-CSF製剤投与後,白血球数の上昇とともに呼吸状態が悪化しARDSとなった症例を経験したので報告する。
    症例は70歳男性。中咽頭癌cT4aN2cM1 (stage IV C) に対し,ドセタキセル83 mg (60 mg/m2) による化学療法を施行した。Day8に好中球数が61/μlとなりDay8からDay10までレノグラスチム100 μgを投与し,Day11に好中球数は8275/μlまで回復した。Day10よりCRP値の上昇を伴う呼吸困難が出現し,肺炎として治療を開始したが,Day13にはさらに呼吸機能が悪化し,肺炎による呼吸機能低下,播種性血管内凝固症候群として加療を行った。しかし,Day14にはさらに酸素化が不十分となり人工呼吸管理となった。ARDSの診断にてDay14よりDay21までシベレスタットナトリウム200 mgを投与し,またコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムを200 mgから漸減しながら投与した。その後徐々に呼吸機能は改善した。
    G-CSF投与後の白血球回復期と肺炎罹患が重複した場合,ARDSなどの肺障害に対する注意が必要であると思われた。
用語解説
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