日本気管食道科学会会報
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63 巻, 6 号
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原著
  • 清野 由輩, 中山 明仁, 林 政一, 岡本 牧人
    2012 年 63 巻 6 号 p. 423-429
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
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    目的:喉頭亜全摘出術 (supracricoid laryngectomy with cricohyoidoepiglottopexy : SCL-CHEP) 後の新声門の形態を,3次元画像を構築して解析した。
    対象と方法:喉頭亜全摘出術を施行した中で,multidetector-row CTを施行した17症例。1.25 mmスライスで撮影し,3次元画像構築ソフトを用いて輪状軟骨,披裂軟骨,術後喉頭内腔粘膜を描出した。
    結果:1)軟骨の描出;輪状軟骨,披裂軟骨は全例で良好に描出でき,筋突起や声帯突起などが同定できた。披裂軟骨の片側残存例も両側残存例も運動は良好で,脱臼所見はなかった。2)気道の描出;2種類に分けられ,発声時に気道が正中に一つの正中型と,披裂軟骨より外側に気道がみられる外側型があり,正中型の方がVHIは低かった。
    考察:新声門の形態は直接的に音声機能に関与する。従来では観察できなかった3次元的な形態の把握は,効率的な発声のために必要な要素を明らかにした。この検討を元に,より良い音声機能のために手術手技を改善することが必要である。
  • 三谷 浩樹, 川端 一嘉
    2012 年 63 巻 6 号 p. 430-435
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    頭頸部癌において近年,化学療法併用放射線治療が機能・形態温存を目指す治療戦略として広く行われるようになり,それにともない救済手術症例も散見されてきた。本稿ではCRT後救済手術合併症の現状を同時期の単独RT,非RT症例と比較した。2005年4月から2009年7月までに喉頭全摘・咽喉頭全摘食道摘出術が行われた下咽頭癌189例,喉頭癌82例,頸部食道癌28例の計299症例をCRT群26例,単独RT群31例,非RT群242例の3群に分け,合併症を重篤 (再建臓器壊死・動脈破裂等),中等度 (大瘻孔等),軽度 (小瘻孔等) に3分類し合併症発生頻度を検討した。結果,合併症率はCRT群:重篤19.2%,中等度11.5%,軽度19.2%,非合併症例53.8%,単独RT群:重篤6.5%,中等度6.5%,軽度16.1%,非合併症例74.2%,非RT群:重篤3.3%,中等度3.3%,軽度9.1%,非合併症例85.6%であった。合併症の有無を比較するとCRT群/非RT群の両者間で発生頻度に有意差 (p=0.0003) を認めた。CRT後残存,再発症例に対し救済手術を選択した場合,一定の合併症発生リスクを負うことは避けられないことから,個々の症例ごとに危険性の説明と同意を得ながら治療戦略を検討することが重要と考えられた。
  • 花井 信広, 小澤 泰次郎, 平川 仁, 鈴木 秀典, 小出 悠介, 福田 裕次郎, 長谷川 泰久
    2012 年 63 巻 6 号 p. 436-442
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル 認証あり
    ハーモニックFOCUS® (以下,HF) を用いた頭頸部癌手術は手術時間の短縮,出血量の減少,手術侵襲の低減に貢献する。咽頭・喉頭・頸部食道摘出術 (以下,咽喉食摘術),頸部郭清術の手技におけるHF使用の工夫と要点につき具体的に解説した。
    原発切除 (咽喉食摘術) における要点は特に,1)前頸筋の切離から気管周囲郭清,2)甲状腺峡部の離断からベリー靭帯の処理,に至る一連の操作である。筆者がHFを用いた手術においては手術時間が大幅に短縮し,頸部郭清術における比較でも出血量,所要時間ともに減少した。
    今回示した咽喉食摘術,頸部郭清術は術中のさまざまな処理においてHFを有効活用できる。コスト面の問題がすべて解決されているとは言えないが,HFの使用が十分割に合う手術であると考えている。HFを用いた頭頸部手術は新時代の手術であり,侵襲を低減することから一種の低侵襲手術であるとも言える。
  • 石井 裕貴, 増山 敬祐
    2012 年 63 巻 6 号 p. 443-450
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
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    下咽頭癌は以前からmulticentric zoneからの重複癌の発生頻度が高く,中でも下咽頭癌—食道癌重複症例が多い。今回2003年1月から2011年10月まで当科で治療した下咽頭癌重複症例89症例を対象に予後評価を含めた臨床的検討を行った。重複癌症例は47例 (52.8%) で男性46例,女性1例,年齢は53歳から93歳であった。同時例は24例,異時例は23例とほぼ同数であり,重複部位別に食道癌が23例 (48.9%) と最も多く,同時例,異時例がそれぞれ16例,7例であった。47症例のうち治療適応のあった症例は38例 (80.8%) であり,重複癌の有無で5年疾患特異的生存率を調べたところ,重複癌あり症例で45.1%,重複癌なし症例で54.7%であり,重複癌の有無では予後に有意差を認めなかった。しかし,同時性症例と異時性症例での5年疾患特異的生存率はそれぞれ,16.1%,68.5%と同時性重複癌症例の予後は異時性重複癌症例のそれと比べて非常に悪い結果であった。下咽頭癌食道癌同時重複症例16症例について16例中10例が進行下咽頭癌であり,治療可能下咽頭癌食道癌同時重複症例の5年疾患特異的生存率は11.6%であった。食道癌既往のある症例の頭頸部スクリーニングが早期下咽頭癌の発見につながり,予後の改善が期待できる。
  • 花田 有紀子, 小川 真, 細川 清人, 識名 崇, 猪原 秀典, 長井 美樹, 上塚 学, 坂田 義治, 笹井 久徳, 宮原 裕
    2012 年 63 巻 6 号 p. 451-459
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
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    気管切開術は耳鼻咽喉科医師にとってありふれた手術であるが,術後のカニューレ抜去および転帰についての報告は少ない。今回われわれは,急性期病院において入院中に気管切開術が行われた症例のカニューレ抜去の実態および転帰と原疾患との関連性についてretrospectiveに検討した。対象は214症例 (男性155例,女性69例) で,原疾患別に群に分けて,群別にカニューレ抜去率および転帰について比較した。全症例においてカニューレ抜去を達成できた症例の割合は12週で最高値31.8%に達して横ばいとなっていた。一方,上気道狭窄を気管切開術の適応条件としている頭頸部疾患症例においては50%が抜去される一方で,長期人工呼吸管理を適応条件としている循環器系疾患,呼吸器系疾患,消化器系疾患を有する症例の24週における抜去率はそれぞれ31.8%,27.7%,23.1%であった。また,脳神経疾患症例では慢性期病院に転院し以降の転帰が不明となる症例が多く認められた。以上より,急性期総合病院における気管切開症例のカニューレ抜去および転帰は,症例の原疾患および気管切開術の適応条件に依存することが示唆された。
症例
  • 谷山 岳司, 杉山 智宣, 荒木 真美佳, 福喜多 晃平, 山田 弘之
    2012 年 63 巻 6 号 p. 460-465
    発行日: 2012/12/10
    公開日: 2012/12/25
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    甲状腺乳頭癌において,腫瘍が喉頭外筋へ浸潤し,喉頭外において反回神経末梢端が同定できず,喉頭内での再建を余儀なくされた症例を経験した。症例は86歳女性で,前頸部腫脹と嗄声,咳嗽などの呼吸器症状を主訴として当科を受診した。初診時に甲状腺左葉を占拠する腫瘍を認め,左声帯麻痺を伴っていた。細胞診にてクラスV,乳頭癌疑いであり,甲状腺左葉摘出術,D1郭清を施行した。術中,腫瘍の浸潤により反回神経の末梢端を喉頭外で確保できず,甲状軟骨を一部鉗除して喉頭内で反回神経の末梢端を同定し,頸神経ワナを用いて中枢端と間置移植した。術後時間経過とともに声帯の緊張も増し音声状態も改善傾向にある。喉頭外で反回神経末梢端を確保できない場合でも,喉頭内操作にて神経末梢端を同定し,神経再建を試みることは,喉頭枠組み手術などの二期的な音声改善手術同様有効な手法であると考えられた。
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