喉頭全摘後の代用音声は,食道発声,人工喉頭,気管食道瘻発声などがある。喉頭全摘後の音響分析による音声機能評価はほとんどされていない。ボイスボタンを装着し,音声を獲得できた症例について多方面から音声機能評価を行ったので報告する。
1999~2008年に喉頭全摘術後にボイスボタンを挿入し,2011年3月にボイスボタン発声が可能であった10例を対象とした。全例とも男性で,平均年齢は69.1歳,ボイスボタンの平均使用期間は6年3カ月であった。自覚的音声機能評価法としてはVHI-10を使用した。MPTと発話明瞭度の測定に加え,音響分析としてPPQ, APQを測定し,音読時のサウンドスペクトログラムと平均ピッチの経時的変化を調べた。
発話明瞭度が良い症例ではMPTが長い傾向にあり,APQ, PPQといった他覚的音声機能検査も良好な結果を認め,より自然なイントネーションでの発話ができていた。ボイスボタンによる発声が可能となった患者は発話明瞭度に個人差はあるものの理解可能なレベルにあり,日常生活でボイスボタンによる発声を使用していた。特別な訓練を必要としないボイスボタンによる発声は音声獲得率も高く,喉頭全摘後の患者のQOLの観点から有用であると考えられた。
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